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箱根八里 ~ XV ~ Stand by Me ~

 09,2013 00:24
今日で猛暑連続7日間 
テレビニュースでは  
昔の日本は こんなにじゃなかったと 
恰幅の良いコメンテーターが解説している
とめどなく噴き出す汗を拭うハンカチは 既に水分量120%
もはや ハンカチとしての機能は喪失していた

このままモニターを見続けると 
僕の身体も 呼び水の如く 汗が噴き出してきそうだ
窓を全開にして カーテレビを切った
アクセルを強く踏み込み
深緑の香りとセミの鳴き声を 切り裂くように
スバルXVは スピードを上げる
右手をバリバリ焦がす太陽光は 相変わらずだが
標高874mを超えた この場所の風は 気持ちがいい

大自然の香りを すーういと体に取り込みながら 僕は思った
「確かに 今年は暑い・・・ 
 しかし こんな暑い夏が確かにあった・・・」



中学1年の夏
ラジオ体操に参加していた僕に
同じ団地仲間の幼馴染たちが話しかけてきた
 「貧弱なお前には無理だから誘わなかったけど
  先週 名古屋まで自転車で行ってきたんだ 
  すごいだろう  hahahaha・・・」

普段は 彼らなど相手にしないのだが
前日テレビで見た 川口浩探検隊に触発された僕は
 「俺は 明日から京都まで 自転車で行く予定だった」
と啖呵を切った

360kmが どの程度の距離かさえ理解できてない僕だったが
彼らに負けたくないという一心で 
お年玉貯金の総額8万円と寝袋 そして着替えを一組持って
翌日 早朝家を出発した 
愛車の真っ白なママチャリで・・・

こうして 僕の生まれて初めての大冒険は
勢いで始まった
早朝5時 街が動き始める前の空気は 
酸素量も多く ペダルがどんどん廻る
リュックに積んだウォークマンから流れる ミュージックが
僕の背中を 力強く後押しする
Queen - It's A Beautiful Day



 「この調子なら 明日には京都に到着できるな」
無邪気な僕は なんの根拠もなくそう思った

昼には横浜を超え カラスが家路につくころ 小田原を通過した 
凍らせてきた ゲータレードもいつの間にか無くなっていた
少しだけ 脚が重く感じたとき
目の前の 大きな看板が目に入った

 「この先 箱根街道 ガソリンスタンドなし」

人里を離れた実感が 僕の筋肉を硬直させた 
今日は ここまでか・・・そんな弱音が僕の心の中で膨らみ始める
それでも ”天下の険”箱根の山を 超えずに
今日を終わることはできない 
そう自分に言い聞かせ 闇夜がすぐ近くに迫っているのを感じつつも 
僕は 終わりの見えない上り坂に挑んだ

30分もしないうちに それが無謀なことだと理解した
ヘッドランプの明かりは ペダルを漕ぐ力が弱まるにつれ 段々光量が落ちる 
このままでは 闇の亡者に取り込まれてしまう
僕は必死にペダルを漕ごうとするが 
身体のあちこちが悲鳴を上げて 言うことを聞かない・・・ 
 「もうだめだ・・・」
と思った瞬間 僕は暗黒世界に呑み込まれた
個としての存在を見失いかけたとき 
目の前に小さな白い点が現れた
そしてこの白い点は
徐々に 大きくなり いつしか僕の視界全てを真っ白に変えた
世界の終わりか・・・
僕の意識は 潰えた・・・
 
!!
柑橘系でありながら ほんのり甘いブラッドオレンジのような香りに 
ゆっくりと目を開ける
西欧風のアンティークが並ぶ部屋の ベッドに横たわっていた
真っ赤なリボンを頭に付けた
同年らしい女の子が 僕の頭に冷たいタオルをおいていた
 「ここは・・・」
僕が そう呟くと
女の子は慌てて 部屋を出ていく
数分後 ジーンズに真っ白なHanesのTシャツを着た ポニーテールの女性が現れた
 「よっ! 元気になったか!」
容姿に似合わぬ男勝りのフレーズに 僕は一目ぼれした

 「ここは・・・」
 「あんな山奥の道端で倒れてたら トラックに轢かれるか キツネに憑かれちまうよ
  Nanaが 助けてあげようっていうもんだから ここに運んできたのさ
  とりあえず ポケットの生徒手帳を見て ご両親には連絡しておいよ
  だから ゆっくり寝てな!」
そう言う彼女に 僕は言った
 「でも 僕は京都まで自転車で行かなきゃいけないんだ・・・
  そうしないと 皆にバカにされる・・・」

彼女は 僕の頭に拳をのせると グリグリと頭に押し付けた
 「偉くロマンのある目標だが それはママチャリで やることじゃないよ
  君がやろうとしているのは 男らしいことじゃない 単なる無謀!
  赤ん坊と一緒さ! そんなことで ご両親に心配をかけるな!」

いつもなら生意気に反抗する僕も 素直に頷いた
 「素直で良し! 今の君にはココが限界!
  あと10年たって ホントの男になったら もう一度目指すといい 
  その時は Nanaが ナビになってやるってよ」
彼女の後ろから そっと僕を見つめていた女の子の顔が 
完熟イチゴのように真っ赤になった

翌日 両親が 車で僕を迎えに来た
いきなり父親が僕を 殴った!
しかし僕は泣かなかった 
 「いいパンチをもらったな! それがご両親の心だ!理解しろよ!」
最後まで 男勝りの彼女だった

僕の スタンドバイミーのような冒険は こうしてあっけなく幕を引いた
後から分ったことだが 幼馴染たちの話は作り話だった
後楽園球場の 巨人対中日戦の観戦に自転車で行っただけだった・・・

あの暑い夏から10年
僕は ママチャリを スバルXVに変えて 帰ってきた
彼女が まだそこにいるという確証はなかったが 
この暑さが もう一度 彼女との出会いを作ってくれる
そんな気がした

XV

Benjamin Earl King の歌声が ひと段落したとき
深緑の向こうに 遠い記憶に眠っていた
インターナショナルオレンジの屋根がぼんやりと見えてきた
そして 家の前に・・・
ブラウンのポニーテール ヘインズのTシャツにカルバンクラインのジーンズを着た
女性がいた

XVのエンジン音に ふり向いた女性は あの時のカノジョだった
全く年を取っていない・・・ 
僕の思い出の女性 そのものだった
 「キツネに騙されたのか・・・」

僕は XVを止めてカノジョに声をかけた
 「京都に行くには ここが近道ですか?」

よく見ると カノジョの髪は真っ赤なリボンで束ねられていた
そして カノジョの後ろには 
綺麗に磨かれた 真っ白なママチャリがあった

 「はい! 最高のナビが助手席にいればね!」
僕とカノジョの 冒険がスタートした








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