イチロー農園 ~ Crossfire ~ 怒りの葡萄 ~
28,2013 23:53
Crossfireを降りると 目の前には たわわに実った石垣いちご
「ここだな・・・」
僕の叔父は この地でイチゴを生産していた
しかし 僕が中学生の頃
叔父は交通事故を起こして 歩行者をはねてしまった
子供の飛び出しをとっさによけた車は 反対側の石垣に激突した
運が悪いことに 石垣と車の間には イチゴだけでなく 歩行者がいた
救急車が到着したとき
叔父も歩行者も イチゴのような真っ赤な血を流していた・・・
小さな村で起こった事故は 退屈な村人にとって格好の話題となった
成長した流言によって 死神と定義付けられた叔父は
押し流されるように この地を去ることになった
”怒りの葡萄のトム・ジョード(Henry Fonda)が感じた 社会による弱者への鞭と同じだ
・・・怒りのイチゴだ・・・”
当時の叔父は そう語った
それから25年 僕は一ヶ月前に息を引き取った叔父の遺言で この地にやってきた
「休みですよ!」
石垣イチゴのハウスから イチゴに負けないくらい
真っ赤な頬をした女性が声をかけてきた
健康的なカノジョの笑顔と 甘いイチゴの香りが僕のハートを包み込む
どうやら カノジョは 僕を『イチゴ摘み体験』の希望者だと思ったらしい
「それは残念だな・・・ここのイチゴおいしいって聞いたから 東京から来たんだけど・・・」
僕は カノジョに言葉わせて 残念な顔を装った
すると カノジョは言った
「東京から・・・ んー それじゃ どうぞ!! あー お金なんていいから!!」
お金なんてって・・・
カノジョの気風の良さに圧倒されながら 僕はイチゴを一つ頬張った
Kyuuuuuuuuun!
ほんのりした甘さに パンチの効いた酸味
遠い昔 叔父がくれたイチゴとおなじ味がした
「このイチゴ やっぱりおいしいね! 君の気持ちがたっぷり入っているからかな?」
僕は言った
「お世辞がうまいのね でもお生憎さま ここは叔母の農園なの
私は 単なるお手伝い! ほら あそこが叔母の家!」
石垣の上に ぽつんと立つ真っ赤な屋根の家は 巨大なイチゴのように見えた
!! あの家は・・・
「この石垣イチゴ・・・ そしてあの家も 以前は叔母の彼氏のものだったの・・・
二人はとても仲が良くて 村でも評判だったのよ
ところが 25年前・・・彼は私のおじいちゃんを車ではねてしまった・・・
村の人たちの心無い うわさに押しつぶされて 彼は この地を捨ててしまったの」
カノジョも 一つイチゴを頬張った
「んー 酸っぱい! けどこれが良いのよね!石垣サイコ―!」
陽気な雰囲気とは裏腹に カノジョの瞳は濡れていた
「叔母は 彼のことが忘れられなかったみたい
だから この石垣イチゴ園を手に入れて ずっと世話してきたの
ずっと独身で・・・いつか彼が帰ってくるんじゃないかって
でも 叔母は一週間前に亡くなったの・・・」
遅かった・・・
僕の摘んだ イチゴがしょっぱく感じた
僕は お土産のイチゴを一箱買って カノジョに御礼を言った

Crossfireの V6エンジンが高らかに吠える
Gurururururur!
Uターンに近い山道を ドリフト気味に駆け上ると 海が一望できる山頂に到着した
車を降りると 僕は海に向かって叫んだ
「バカヤロー! 」
そして土産に買ったイチゴを一粒 口に放り込んだ
1956年 2月28日 吉田茂が 「バカヤロー」と言って 内閣を解散させた日
僕は 天にいる叔父に向かって叫んだ
そしてもう一度 叔父の手紙を読んだ
~ イチゴ園はまだあるのだろうか あるなら一口頬張りたい
カノジョは元気だろうか 元気ならもう一度 抱きしめたい ~
僕の脳裏に イチゴ園のカノジョの笑顔が浮かんだ・・・
僕は後悔しない もう一度 あの娘に逢いたい・・・
「イチローおじさん! ありがとう! そっちでも仲良くやってね!」
僕は 叔父の手紙にイチゴの包装紙を重ねて 紙飛行機を折った
そして 大空に放つ
海に向かって真っすぐに飛ぶ 紙飛行機の翼には
”イチロー農園”と書かれ印刷文字が輝いていた
「ここだな・・・」
僕の叔父は この地でイチゴを生産していた
しかし 僕が中学生の頃
叔父は交通事故を起こして 歩行者をはねてしまった
子供の飛び出しをとっさによけた車は 反対側の石垣に激突した
運が悪いことに 石垣と車の間には イチゴだけでなく 歩行者がいた
救急車が到着したとき
叔父も歩行者も イチゴのような真っ赤な血を流していた・・・
小さな村で起こった事故は 退屈な村人にとって格好の話題となった
成長した流言によって 死神と定義付けられた叔父は
押し流されるように この地を去ることになった
”怒りの葡萄のトム・ジョード(Henry Fonda)が感じた 社会による弱者への鞭と同じだ
・・・怒りのイチゴだ・・・”
当時の叔父は そう語った
それから25年 僕は一ヶ月前に息を引き取った叔父の遺言で この地にやってきた
「休みですよ!」
石垣イチゴのハウスから イチゴに負けないくらい
真っ赤な頬をした女性が声をかけてきた
健康的なカノジョの笑顔と 甘いイチゴの香りが僕のハートを包み込む
どうやら カノジョは 僕を『イチゴ摘み体験』の希望者だと思ったらしい
「それは残念だな・・・ここのイチゴおいしいって聞いたから 東京から来たんだけど・・・」
僕は カノジョに言葉わせて 残念な顔を装った
すると カノジョは言った
「東京から・・・ んー それじゃ どうぞ!! あー お金なんていいから!!」
お金なんてって・・・
カノジョの気風の良さに圧倒されながら 僕はイチゴを一つ頬張った
Kyuuuuuuuuun!
ほんのりした甘さに パンチの効いた酸味
遠い昔 叔父がくれたイチゴとおなじ味がした
「このイチゴ やっぱりおいしいね! 君の気持ちがたっぷり入っているからかな?」
僕は言った
「お世辞がうまいのね でもお生憎さま ここは叔母の農園なの
私は 単なるお手伝い! ほら あそこが叔母の家!」
石垣の上に ぽつんと立つ真っ赤な屋根の家は 巨大なイチゴのように見えた
!! あの家は・・・
「この石垣イチゴ・・・ そしてあの家も 以前は叔母の彼氏のものだったの・・・
二人はとても仲が良くて 村でも評判だったのよ
ところが 25年前・・・彼は私のおじいちゃんを車ではねてしまった・・・
村の人たちの心無い うわさに押しつぶされて 彼は この地を捨ててしまったの」
カノジョも 一つイチゴを頬張った
「んー 酸っぱい! けどこれが良いのよね!石垣サイコ―!」
陽気な雰囲気とは裏腹に カノジョの瞳は濡れていた
「叔母は 彼のことが忘れられなかったみたい
だから この石垣イチゴ園を手に入れて ずっと世話してきたの
ずっと独身で・・・いつか彼が帰ってくるんじゃないかって
でも 叔母は一週間前に亡くなったの・・・」
遅かった・・・
僕の摘んだ イチゴがしょっぱく感じた
僕は お土産のイチゴを一箱買って カノジョに御礼を言った

Crossfireの V6エンジンが高らかに吠える
Gurururururur!
Uターンに近い山道を ドリフト気味に駆け上ると 海が一望できる山頂に到着した
車を降りると 僕は海に向かって叫んだ
「バカヤロー! 」
そして土産に買ったイチゴを一粒 口に放り込んだ
1956年 2月28日 吉田茂が 「バカヤロー」と言って 内閣を解散させた日
僕は 天にいる叔父に向かって叫んだ
そしてもう一度 叔父の手紙を読んだ
~ イチゴ園はまだあるのだろうか あるなら一口頬張りたい
カノジョは元気だろうか 元気ならもう一度 抱きしめたい ~
僕の脳裏に イチゴ園のカノジョの笑顔が浮かんだ・・・
僕は後悔しない もう一度 あの娘に逢いたい・・・
「イチローおじさん! ありがとう! そっちでも仲良くやってね!」
僕は 叔父の手紙にイチゴの包装紙を重ねて 紙飛行機を折った
そして 大空に放つ
海に向かって真っすぐに飛ぶ 紙飛行機の翼には
”イチロー農園”と書かれ印刷文字が輝いていた
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