配達人 ~ 735i E38 ~ Transporter ~
27,2012 23:55
104年前 ピケット工場でT型フォードの第1号車が製造された今日（9月27日）
僕は TakashiとCinema bar Casablancaにいた
「少し遠いけど 荷物を届けてもらおう」
ブラックジャックで負けた僕は 男らしくTakashiの要求を受け入れた
週末 僕はBMW 735i E38を駆って
ススキの穂波が銀色に揺れる道を 西に向かった
助手席には W400mm D200mm H100mmの段ボールが一つ
重さはほとんど感じない・・・
「これなら オレの車より郵便局に頼んだ方が 速いし安全じゃないか？
片道150kmもかけて 手渡しするほど大切なものなのか？・・・」
相当な重量物か とても繊細な荷物を想像していた僕は
Amazonの宅配ボックスのような段ボールを 振りながら言った
「おい！ 大切に扱えよ！
お前は 昔から第一印象だけで 物事を判断しすぎだ！
食器棚の奥で 埃をかぶって全く使われていない 存在感すらない食器が
数百万円することもあるんだぞ
昔遊んだ ソフビ人形だって 今持っていればお宝だ！
この箱の中身がどんなに貴重なものか 届け先で見せてもらえ！！」
Takashiの言い分に納得はできなかったが こちらはゲームに敗れた身だ・・・
こうなれば、ドライブを楽しむことにしよう
735i E38の暗証番号を解除した後（気分的に・・・） アクセルを踏み込むと
水冷V8 32バルブ 3497ccのエンジンが 静かに熱く廻る
スムーズなクルージングカーとしてジェントルな雰囲気を醸し出しつつも
ドライバーの意志に感応して 瞬時に獰猛なネコ科の猛獣に変貌する
トラップがしけられていることなど あるはずもないのに
僕は しきりにバックミラーと 時計を意識した
「約束（依頼）は必ず守る・・・」
僕は完全に フランク・マーティン（Jason Statham）になった
5時間後 735i E38は 太平洋を一望できる丘に建てられた 白亜の建物に到着した
「病院か・・・」
どうやら指定された住所の最後に書いてあった 333という数字は病室番号らしい・・・
その部屋は 完全にモノトーンの世界だった
長い間 陽にあたらないことで手に入れた 透き通るほどに白い肌に
純白のワンピースを着た女性が
窓の外を流れ行く 雲を眺めていた
部屋の中で唯一白以外の存在を主張している カノジョの腰まで伸びた艶やかな黒髪が
ふわりとたなびいたとき カノジョは僕の気配を感じて振り向いた
「Hiroクン？・・・」
「！！」
モノトーンの住人は 大学時代に付き合っていたカノジョだった
大学卒業と共に 僕はカノジョと結婚することを心に誓っていた
しかし カノジョは4年の初夏 突然姿を消した
誰一人 カノジョの消息を知る者はいなかった・・・
とめどなく襲う淋しさから逃れるために 僕はカノジョを忘れるしかなかった・・・
その彼女が 今 目の前に立っている
僕は めまいを感じながらも Takashiの荷物をカノジョに手渡した
カノジョが開けた箱の中には ビニール袋が一つ・・・
カノジョがそれを取り出そうとした時 ビニール袋は簡単に破れた
部屋中が BALM MINTで一杯になった（シーブリーズの香り）
「これは 貴方の香りね・・・」
カノジョは何かを吹っ切ったかのように話し始めた
「私・・・突然難病指定を受けたの
貴方と離れたくなかった・・・
でも貴方が・・・
いつも悲しい目で私を見ることを想像したら 私・・・耐えられなくなったの
だから 貴方の前から消えた・・・
でも 私は間違っていた
私は暖かい太陽を無くしてしまったの
私は 一生ここから出られない そう思った・・・
そんなある日 偶然 Takashiくんの妹さんが 私の担当看護師になったの・・・
私は彼女を通じてTakashi君に これまでのことを話した・・・
すると彼は言ったの ”今年の名月には お月様からプレゼントが届くよ”と
そして 貴方が来た・・・」
Takashiの手配した届け物は どうやら段ボールではなかったようだ
僕はカノジョを きつく抱きしめた
「やっぱり Hiroクンはシーブリーズの香りがする」
カノジョの頬が暖かくなっていくのを感じた・・・
白一色の部屋に赤い花が咲いた
僕は TakashiとCinema bar Casablancaにいた
「少し遠いけど 荷物を届けてもらおう」
ブラックジャックで負けた僕は 男らしくTakashiの要求を受け入れた
週末 僕はBMW 735i E38を駆って
ススキの穂波が銀色に揺れる道を 西に向かった
助手席には W400mm D200mm H100mmの段ボールが一つ
重さはほとんど感じない・・・
「これなら オレの車より郵便局に頼んだ方が 速いし安全じゃないか？
片道150kmもかけて 手渡しするほど大切なものなのか？・・・」
相当な重量物か とても繊細な荷物を想像していた僕は
Amazonの宅配ボックスのような段ボールを 振りながら言った
「おい！ 大切に扱えよ！
お前は 昔から第一印象だけで 物事を判断しすぎだ！
食器棚の奥で 埃をかぶって全く使われていない 存在感すらない食器が
数百万円することもあるんだぞ
昔遊んだ ソフビ人形だって 今持っていればお宝だ！
この箱の中身がどんなに貴重なものか 届け先で見せてもらえ！！」
Takashiの言い分に納得はできなかったが こちらはゲームに敗れた身だ・・・
こうなれば、ドライブを楽しむことにしよう
735i E38の暗証番号を解除した後（気分的に・・・） アクセルを踏み込むと
水冷V8 32バルブ 3497ccのエンジンが 静かに熱く廻る
スムーズなクルージングカーとしてジェントルな雰囲気を醸し出しつつも
ドライバーの意志に感応して 瞬時に獰猛なネコ科の猛獣に変貌する
トラップがしけられていることなど あるはずもないのに
僕は しきりにバックミラーと 時計を意識した
「約束（依頼）は必ず守る・・・」
僕は完全に フランク・マーティン（Jason Statham）になった
5時間後 735i E38は 太平洋を一望できる丘に建てられた 白亜の建物に到着した
「病院か・・・」
どうやら指定された住所の最後に書いてあった 333という数字は病室番号らしい・・・
その部屋は 完全にモノトーンの世界だった
長い間 陽にあたらないことで手に入れた 透き通るほどに白い肌に
純白のワンピースを着た女性が
窓の外を流れ行く 雲を眺めていた
部屋の中で唯一白以外の存在を主張している カノジョの腰まで伸びた艶やかな黒髪が
ふわりとたなびいたとき カノジョは僕の気配を感じて振り向いた
「Hiroクン？・・・」
「！！」
モノトーンの住人は 大学時代に付き合っていたカノジョだった
大学卒業と共に 僕はカノジョと結婚することを心に誓っていた
しかし カノジョは4年の初夏 突然姿を消した
誰一人 カノジョの消息を知る者はいなかった・・・
とめどなく襲う淋しさから逃れるために 僕はカノジョを忘れるしかなかった・・・
その彼女が 今 目の前に立っている
僕は めまいを感じながらも Takashiの荷物をカノジョに手渡した
カノジョが開けた箱の中には ビニール袋が一つ・・・
カノジョがそれを取り出そうとした時 ビニール袋は簡単に破れた
部屋中が BALM MINTで一杯になった（シーブリーズの香り）
「これは 貴方の香りね・・・」
カノジョは何かを吹っ切ったかのように話し始めた
「私・・・突然難病指定を受けたの
貴方と離れたくなかった・・・
でも貴方が・・・
いつも悲しい目で私を見ることを想像したら 私・・・耐えられなくなったの
だから 貴方の前から消えた・・・
でも 私は間違っていた
私は暖かい太陽を無くしてしまったの
私は 一生ここから出られない そう思った・・・
そんなある日 偶然 Takashiくんの妹さんが 私の担当看護師になったの・・・
私は彼女を通じてTakashi君に これまでのことを話した・・・
すると彼は言ったの ”今年の名月には お月様からプレゼントが届くよ”と
そして 貴方が来た・・・」
Takashiの手配した届け物は どうやら段ボールではなかったようだ
僕はカノジョを きつく抱きしめた
「やっぱり Hiroクンはシーブリーズの香りがする」
カノジョの頬が暖かくなっていくのを感じた・・・
白一色の部屋に赤い花が咲いた
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