FC2ブログ

EVEの林檎 ~Solio ~ マネキン ~

 13,2012 23:59
春日通り沿いに 深緑の藤棚が見えてくると 
僕はSolioを右折させて 公園横の坂道に停車させた

Solio

本日の出番を終わらせた太陽は 地平線に下がってはいるが
まだメインキャストとしての威厳を保つように 
西の空はオレンジ色に輝いている

僕は セミたちの合唱と コオロギたちの弦楽に囲まれた
藤棚横のベンチに腰掛けた

 「君と会えない日 僕は死んでいるのと同じだ・・・
  君と話ができない日 自分のハートに押しつぶされる
  君と瞳を交わし 話ができた日 
  僕は本当の思いを伝えられない自分自身を 消したくなる・・・
  こんな調子だから 今日も進展なしだよ!」

僕は 眼の前に立つEVEに 片思いのカノジョへの思いをつぶやいた
EVEは 公園のヴィーナス 
両手に1つずつ林檎を持ちながら 僕を見つめる
優しいブロンズの眼差しは 僕の思いを見透かしている
それが僕には心地よかった
心を探りあう会話に疲れた僕は EVEとの直感的な会話に癒された
もちろん僕の一方的な語りだから 純粋には会話ではないのだが・・・

 「お前が カノジョだったら良かったのに・・・」
”人付き合いが苦手な自分は人間失格!”と宣言するような 言葉を吐露した時

 「私も あなたのそばにいたいわ・・・」
ブロンズの口元から ブリーズヴォイスが響いた
 「あなたが聴かせてくれる面白いお話・・・ 私は いつも楽しみにしていました 
  私は貴方のドライブ話を聞いて 心だけは 束縛されたこの地から旅立つことができた
  あなたは 常に私を支えてくれていた だからこれからも ずっと一緒にいたいの」



ノンアルコールだからといって こんな時間に3本も空けたのがいけなかった
自然に囲まれたやさしい雰囲気が 僕を酩酊させたのか 
いや もしかすると アルコール入りだったか・・・

 「驚いてしまわれたのね・・・でもこれは現実よ 
  貴方の強い思いが 私を呪縛から解き放ってくれたの 
  今日から 私はあなたと一緒に この公園を飛び出すことができるわ」

そう言うとEVEは 台座の上から 軽やかにジャンプした
細く しなやかな右足が地面に着地するまでの数秒間で
青銅一色だったEVEは フレッシュピンクの素肌に
フォレストグリーンのワンピースをまとった淑女に変身した
 「君は エミー(Kim Cattrall)みたいだ・・・」
 「アメリカの プリンスデパートのエミーなら 私の友人よ・・・」 
僕は ジョナサン(Andrew McCarthy)になった気分で 
ウィンクするEVEをSolioに乗せた

EVEは 街に咲くネオンの花を不思議そうに見つめ 夜の街に溢れ返る人波に驚いた
世界がこんなにも多様で 賑やか そして美しいなんて・・・
EVEは大きな瞳を輝かせながら 涙をこぼしていた
そして運転席の僕にむかって 「ありがとう」と呟いき 僕に林檎を一つ分けてくれた

その時 僕のケータイがなった・・・♪♪
 (Starship Nothing's Gonna Stop Us Now)


・・・・・・目を開けると 
僕は エンジンの止まったSolioの運転席にいた 
一人だった
車を降りて当たりを見廻すと そこは夕刻 車を止めた場所のままだった 
どうやら夢を見ていたようだ・・・
僕は EVEのところに向かった

EVEは いつもの台座の上に居た

その時 僕のケータイが鳴った
カノジョからだった
 「実家から 林檎が届いたの・・・林檎好き?」
 「もちろん 大好物さ・・・!!」
いつもなら カノジョの前で硬直する僕が
今日は 何の意識もなしに 純粋な気持を返すことができた

 「それじゃ かわりに 今度ドライブに連れて行ってね! 夜のドライブは最高なんでしょ!」
カノジョから 思わぬ要求に 僕はEVEを見上げた

 「!!・・・もちろん! 了解! 」

昨日より 少しだけ口元が上がって見える EVEの左手には
いつも握られていた青銅の林檎がなくなっていた

スポンサーサイト



Latest Posts -

01 2020/02 03
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29