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灯りをください ~ Fit ~ メリー・ポピンズ ~

 02,2012 23:59
”Rasseeeeraa Rasseeeeraa”

車載TVのニュースと 少しだけ開けたウィンドウの隙間から
ハネトの掛け声が サラウンド効果のように 威勢よく聞こえてくる・・・

Fit

 「ねぶたはね 私のふるさとのお祭りなの」
ナチュラルショートの髪から 柑橘系の香りが漂わせながら センセイが言った・・・
センセイといっても・・・

高校受験を前にした中学3年の夏休み
三平方の定理に振り回される僕を救うために やってきた 
大学生の家庭教師だった

センセイの指導で 僕の学力は 確実に向上した
しかし その代償として 僕の心はセンセイに奪われた
僕は センセイの笑顔を見たいがために勉強に励んだ

 「”Rasseeeeraa”という掛け声は
  蝋燭ちょうだい 灯りをちょうだい という意味なの」
北東の空を眺めながら センセイはため息をついて言った
 「やっぱり 帰るべきだったかな・・・」
センセイの目に 涙が溜まっているのを 僕は見逃さなかった
 「具合でも悪いの・・・」

心配になった僕が顔を覗きこむと センセイは直ぐに元の笑顔に戻った
そして僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でていった
 「子供は 大人の心配をしない! でも・・・ありがとう」
夏休みも終わりに近づいたころ 僕はセンセイに告白した
 「テストの成績が学年トップだったら 付き合ってください」と・・・
センセイは きょとんとしながらも 僕の告白をしっかり受け止めてくれた 気がした
やさしい手で僕の頬を撫でたセンセイは 僕の額にキスをした
 「おまじないよ・・・」

学力テストの結果は見るまでもなく快勝だった 
僕の偏差値はぐんと伸びた 
しかし そんなことはどうでも良かった
ただセンセイが 僕の部屋の扉を開けてくれる瞬間が待ち遠しかった

しかし センセイは 来なかった 
正確に言うと僕は二度とセンセイに逢うことはなかった

夏休み最終日 センセイから手紙が届いた
封書の中には 1枚の手紙と 甘いリンゴの香りが詰まっていた

 「学年トップおめでとう! 君の実力は私が一番よく知ってるから 安心してたよ
  挨拶なしに 君のもとから姿を消したこと・・・ ごめんなさい・・・

  私には 青森でリンゴを作っているフィアンセがいます 
  
  私は 大学に通いながら このまま都会で自分を磨くか 
  ふるさとで愛情あふれる家庭を築くか ずっと悩んできました
  そんなとき 君に出会った 
  
  そして私は 恋する気持ちが 何事にも代えがたい力の源であることを知った
  それに気付かせてくれたのは 君だよ 真っ直ぐな思いをありがとう」

僕の瞳に 熱いものが溜まり始めた
 
 「君・・・いえRyuJiの想いに答えられなくてごめんね 
  でもRyujiにはもっとふさわしい女性がきっと現れる・・・
  その日まで もっともっと 男を磨くのよ! さよなら」
手紙の最後に 茜色のキスマークがついていた・・・

彼女の去り際は メリー・ポピンズの魔法のようだった


あれから10年 社会人になった僕は ショートボブのカノジョを連れて 青森に来ている
今日は 8月2日・・・

”Rasseeeeraa Rasseeeeraa”

静かなFit 
アイドリング中でも車内に ハネトの鼓動が伝わってくる

 「Rasseeeeraa・・・」 僕はつぶやいた・・・
 「あなたも 参加したいんでしょ~!」
悪戯っ子のような瞳のカノジョが 僕を子ども扱いするように言った 

カノジョは 僕にとって大切な灯りだ
 「Rasseeeeraa →灯りをちょうだい →君がほしい
  ・・・そういう意味ですよね・・・センセイ」
茜色のねぶたの灯りが 揺らいで見えた 
   





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