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マロニエの幻 ~ De Lorean ~ Back to the Future ~

 28,2012 23:59
 「お父さんは出張よ」
夕食の席 さわやかな笑顔で 母が言った 
6月最後の金曜日は いつも母と僕 そして妹の3人だった
去年も 一昨年も その前の年もずっと・・・

僕の疑問 その1
不動産会社の経理担当に出張なんてあるのか?

妹の疑問 その2
ママは どうして こんなにうれしそうなの?

立体化されたクエスチョンマークに 押しつぶされるように
僕たちは 眠りにつく これもいつものこと・・・

翌朝 母は ロココ調のホワイトドレッサーに向かっていた
つややかな淡いピンクのルージュをつけるまでに 一時間
地球上から7種類の生物が絶滅するのと同じ時間だ

青いサマーニットのワンピースでドレスアップした母は 
最期に 結婚指輪を外して 
 「今日は 少し遅くなるかも・・・夕飯は冷蔵庫に用意してあるわよ!」
そう言って 家を出た

 「間違いないわ! ママ不倫してる!」
今年 中学に入学したばかりの妹が言った 
僕は何も言えなかった 僕も同意だったからだ
昨日まで 世界一仲睦まじいファミリーだと思っていた
それが幻影だとは思いたくなかった
 「Lika 行こう!」
僕は妹と共に 母の後を追った
De Lorean

サブウェイに乗った母を 僕らは1つ隣の車両から見守った
少女のように 上機嫌な母は 
車両の揺れを ワルツのステップで受け流した
そこにいるのは 宿題を忘れた時に 僕を叱る母ではなかった
 「ママ 綺麗ね」
ポツリと妹が言った

マロニエ通りにあるバーバリーの前で 母は歩みを止めた
間違いなく 誰かと待ち合わせをしている・・・
猛烈な不安感の中 ふと目の前に停車している車に目を向けた 
 ”De Lorean DMC-12”
無塗装ステンレスのボディの周りは
すべての喧騒を相殺させるタイムマシーンの風格を漂わせていた

ロレイン(Lea Thompson)とマーティ(Michael J. Fox)の
ロマンスが 僕の脳裏をよぎった・・・


そこに 白いジャケットにソフト帽の男が現れた
彼は 母の肩に手をかけた
そして次の瞬間・・・
僕は妹の目を 手で覆った
人の絶えない マロニエ通りで 母はソフト帽とキスをした

6月29日 46年前 ビートルズが日本に初上陸した日・・・
僕の頭で Ticket To Rideが流れた

 
・・・母さんが ビフ タネン(Thomas Wilson)に連れて行かれた・・・

マリオネットのように見えない糸で操られた僕は 母とソフト帽に引き寄せられた
 「Kenjiiiiiiiiii!」
母が だれかの名を叫んでいる・・・
 「おにいちゃん・・・」
妹が僕を呼んでいる・・・?
しかし 僕の耳には ジョンの歌声が残響していた 
My baby don't care, my baby don't care.

 ”BacheeeeeeeeeeeN”

僕の左拳が ソフト帽の左頬をヒットした
ソフト帽が落ちる
・・・そこにいたのは ・・・父だった
 「父さん・・・?」

 「いいパンチだ よく母さんを守ってくれた」
左頬を 抑えながら 父は言った
 「でも・・・父親の姿は 忘れないでほしいな」
父は笑った

20年前の6月最終土曜日 父はこの場所で母にプロポーズしたらしい
そして 僕が生まれた年から 
二人は 初めて会ったころの気持ちを思い出すために
その日を 独身に戻る日にした だから父は前の日から姿を消す必要があったんだ・・・

 「今日だけは パパとママではなく KenjiとNaNaなんだ」

僕と妹は大きな勘違いをしていた 父と母の純愛を感じた

 「パパ 大好き!」
妹が父さんに抱きついた

マーティの様に 
僕は母さんと父さんの絆を信じることができなかった・・・
さみしい思いに溺れそうな僕を 母がぎゅっと抱きしめてくれた
 「ありがとう Jun!」
母さんの 仄かに甘い香りを感じた時
De Loreanが動き出した
The Power Of Loveが車内から もれ聴こえてくる 
運転席に座す白髪の老人は 確かに僕に向かってVサインをした


右折ウインカーを出したDe Loreanが
完全に曲がる前に Fuwariと消えた




バック・トゥ・ザ・フューチャー 20th アニバーサリーBOX [DVD]




Back To The Future - 1/24 Scale Diecast: Delorean




 

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