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かがみの狐城 ~ ニッサン シルビアCSP311 1965 ~

 23,2023 21:49
僕が この街に来たのは2度目だ
一回目は 母親の胎内と言う条件付きだが・・・
しかし
僕には 今見ている景色が
どこか懐かしく 自分の目で見た世界のように思えた

いや・・・ 思っただけではない

この道を曲がると 大きな鳥居が・・・ あった!
このトンネルを抜けると 右手に小さな滝が・・・ 見えた!
ストリートビューで チェックしてきたように
鮮明な記憶との一致

そんな記憶の一つだった 
小さなロッジ風の喫茶店に到着した

白樺林の中の建つ
真っ赤な屋根と オレンジ色に塗られた壁の木造建物は
ノルウェイのトロンハイムから転送されてきたようで
ここが 長野の山奥であることも忘れてしまう

2台分の駐車場には車は止まっていない
その一つに シルビアを止めると
オレンジ色の壁についた 真っ白な扉に向かった

Geeeeeeeeeeeeeeeと 
時の叫び声の様な唸り声を開けた扉とともに ふわりと優しい風が身体にまとわりついた

どこかで 出逢ったことのある 懐かしい香り・・・
どこだったか・・・
脳細胞が 記憶を手繰り始めたとき

Dosun!!

店の中から青年が飛び出してきた!
不意をつかれて しりもちをついた僕の手元に 

Karakara・・・
外国のコインが転がってきた 

1935年 リバティコイン

「君なんて! アメリカでも どこにでも行ってしまえ!」

青年は 叫びながら 走り去った

Geeeeeeeeeeeeeee!

再び 扉が開き
和装に 三つ編みを束ねたマガレイトの女性が出てきた

僕は 青年が落としたコインを 彼女に手渡した
深々と頭を下げると 
彼を追うように 白樺林に消えた

「Kenichi-san」 

微かに聞こえた女性の声が どこか 映画じみていた

改めて 店に入っると
香りの記憶が蘇った
母がいつも飲んでいたコーヒーの香りだった

都心部は 
40℃近くまで気温が上がっているらしい
しかし 冷房もない 
10席ほどの こじんまりした店の気温計は24℃を指していた
天然のエアコンに守られた空間が
ずっと ここにいたい そんな気持ちにさせた

店には もうひとり 僕と同じ歳ほどの青年がいた

「こんにちは」
人見知りの僕から声をかける

「やぁ」
人見知り連合軍に所属する者たちは 同類を瞬時に察知できるのだ
ちなみに 
先ほどすれ違った 青年は きっと僕らとは違う・・・
僕ら連合は
挨拶はする しかしそれ以上は踏み込まない 話さない

かがみの狐城のメンバーたちが 
自分の話をしなかった理由が よくわかる 僕も・・・ 
いっぱい つらい思いをしてきた



「君は どこに行くんだい?」

えっ・・・

どうやら 僕は見誤っていたようだ 
彼はこちら側ではなかった

「墓参りです」
「そうか・・・ それじゃここに来たのも偶然かい?」
ぐいっと乗り出してくる・・・

「はい・・・ ただ・・・ この建物・・・ どこかで見た気がして・・・」
青年の勢いに呼応して 今日の僕は饒舌になった

「実はね  僕も 今日ここに来る予定はなかったんだけど
 なんとなく ハンドルに呼ばれた気がしたんだ」

不思議なことを言う

!!
気付くと テーブルの上に アイスコーヒーが置かれていた
マスターの姿は ない・・・
アイスコーヒーの横には たっぷりのシロップと牛乳が置かれていた

Gokuri

おいしかった・・・
シロップにミルクも 全部入れ切った 
マスターには申し訳なかったが 子供の頃から 僕はコーヒー牛乳派なのだ
ふと見ると
目の前の彼のグラスも ほぼミルクに見えた

「さて・・・」

彼が立ち上がる

「君に 僕の車を紹介しよう」
輝く瞳が 
同意を確認する前に 僕を店の外に引きずり出していた

もう少し ゆっくり コーヒー飲みたかったのに・・・

!!
そういえば・・・
駐車場には 僕のシルビアしか 停まってなかったはずだけど・・・

青年は 僕の車の前で 止まった

ニッサン シルビアCSP311 1965

「こいつだ! 1965年式 初代シルビア! 1.6リッター直4OHVエンジン!」

えっ・・・

「ちょっと これは僕のですよ フェアレディから流用されたエンジンに5連メーターです」
lこの車の情報なら 負けない

「な・・・ 何言ってるんだ!
 こいつは 僕の嫁さんのお父さんから譲り受けた 大切な車だ!
 お前! 泥棒だったのか!」

「そんなことないです!!」
僕は ポケットから シルビアの鍵を取り出した

「ほら! 鍵です!」
青年は 僕の手から 鍵を むしり取ると 呆然と立ち尽くしてしまった

「君の名前は?」

「KenZoです」

「そうか Kenzoというのか・・・」

青年は 僕に車の鍵を返すと 気を付けて行けよ と言って 店に戻った

24歳になった今年
母が死んで シルビアは 僕が相続した
父は 僕が生まれる前に亡くなっていた

母から聞いた話では
このシルビアは 僕のおじいちゃんの愛車で 父と母が結婚した時に 
プレゼントされたらしい

そのとき母は 
革製のキーホルダーを作ったのだった 今 僕の手元にあるキーホルダーがそれだ

500円玉くらいの丸い皮が付いたキーホルダー

キーを回すと
シルビアは いつものように一発始動した
さて 行こうか
母を父の眠るお墓に収めるため 麓の寺院に向かう

しかし 今日はよく話したなぁ・・・
そう思ったとき ふと思い出した
人見知り連合軍は 会話をしない しかし。。。 身内だけは対象外

♪Deep Purple - Soldier of Fortune♪



1965年式シルビアを 喫茶店の窓から 見守る青年は狐の面をかぶっていた
ポケットから 
皮のキーホルダーを取り出すと 丸い皮のポケットを開けた
中から出てきたのは
1935年 リバティコイン
妻の お父さんの誕生年のコインは 私たちのお守りだった

「元気でやれよ!」
青年の横には いつの間にか 女性が座っていた

「あなたが名付けたあの子は 大丈夫よ Kenji-san」

白樺林の中の建つ
真っ赤な屋根と オレンジ色に塗られた壁の木造建物は
深い霧に 覆われた




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