パンズ・ラビリンス ~ フィアット アバルト124スパイダー 2017 ~
30,2023 22:57
「カエル・・・」
助手席からカノジョが ふわりと投げたWordが車内を彷徨う
相変わらず
君は あの映画のことが忘れられないらしい
次に くるフレーズは・・・
「ペイルマン」 「ペイルマン」
カノジョと僕の声が シンクロすると
はじめて 妖精を見たオフェリア（ Ivana Baquero）の様な瞳で カノジョは僕を見た
「どうして わかったの？」
ペイルマンの 手のひらの瞳を思わせるように
僕は カノジョに 右手を差し出した
「僕には 君との未来が見えるのさ」
「それじゃ 私たち どこで結婚式を挙げるの？」
学生時代から
10年間の付き合い ようやくプロポーズを終えて
カノジョの関心は 結婚式に向いていた
「大自然に囲まれた教会の屋外チャペル
満天の星空と 君の大好きな 三日月の下で 二人きり」
二人とも すでに両親は 夜空の星になっていた
僕らにとって 星空が家族
「ふーん そうなの・・・」
微妙な感想を残して
助手席から外を眺めるカノジョ 再び自分の世界に入ってしまった
カノジョのシルエットが 少しづつ 透明になる
それは遠い昔・・・ 助手席に染み付いたカノジョの記憶だった
ゴールデンウィーク
渋滞の続く道を ゆっくり動くアバルト124スパイダー
マフラー音を楽しんでいると 再び白日夢が見えてくる
次に現れたのは 半年前の 僕の記憶・・・
モノトーンの視界に 消毒液のにおいが充満する部屋で
カノジョがベットに横たわっている・・・
「お医者様は ３回の手術で 元気になれるって・・・言ったよね」
カノジョは すがるように 言った
「あぁ・・・」
自慢だった清流のような黒髪を手放し 手術に立ち向かった カノジョに
癌が ほかの臓器にも 転移したという新たな事実を 告げることは できなかった
「手術中に見た夢の中で テーブルの上に葡萄があったの・・・
でも 私・・・ 食べなかったよ」
君は オフェリアと違って 完璧に試練を 乗り超えた・・・
それなのに・・・
！！
ようやく アバルト124スパイダーは 渋滞を抜た
ここから先は 観光地にはなってない 山村へのルート
窓を開けると 気持ちいい 風を感じた
ふと・・・ ステアリングをにぎる 両手を見つめた僕は
再び 思い出の中に落ちた
「あなたは 運転を始めると
ハンドルを鍵盤に見立てて カツカツ やり始めるの そして・・・
呼吸に合わせて 口ずさむの・・・
周りの人には気がつかないほどに静かに・・・ 知っていた？」
夜空に浮かぶ月よりもに 蒼白な顔の カノジョが言った
そんな 癖があったなんて 全く気が付かなかった・・・
「はじめは 気ざわりだったのに
それが カッチーニのアヴェ・マリアだって 知った時から
私の周りには 妖精たちが 見えるようになったの ・・・
お願い・・・ 車じゃないけど 口ずさんで・・・」
一月前・・・
カノジョは 僕の口ずさむアヴェ・マリアを聴きながら 永遠の眠りについた
♪ Charlotte Church - Ave Maria ♪
5月4日・・・
みどりの日を 結婚式の日にすることを 僕とMidori（カノジョ）は決めていた
カノジョの思い出とともに
深緑の教会に到着したとき あたりは すでに真っ暗だった
もちろん それは想定内・・・
エンジンを止めて 運転席上部の ルーフロックを解除すると
妖精たちが
運転席と助手席のガラスを下げた
車を降りた 僕とカノジョ・・・は ルーフトップを シートの後ろに折りたたむ
最初で 最後の共同作業を終えると
僕は 左右の薬指に 結婚指輪をはめた
そして・・・
アバルト124スパイダーと共に カノジョの待つ世界に向かうべく エンジンを始動しようとした
ここから アクセル全開にすれば 僕も星屑の一つになれる・・・
！！
エンジンが かからない・・・
そのとき！
助手席に感じていた カノジョの記憶が
輝く妖精となって 僕の右手から指輪を奪うと 三日月に向かって飛び立った
あぁ・・・
パンよ！ファウヌス神よ・・・ 僕には まだ・・・ 試練が足りないのか・・・
それならば 早く 試練を与えてくれ・・・
Midori・・・ いつの日か 必ず 君の所へ行くよ・・・
アヴェ・マリアを口ずさみ 僕は 三日月に約束した
助手席からカノジョが ふわりと投げたWordが車内を彷徨う
相変わらず
君は あの映画のことが忘れられないらしい
次に くるフレーズは・・・
「ペイルマン」 「ペイルマン」
カノジョと僕の声が シンクロすると
はじめて 妖精を見たオフェリア（ Ivana Baquero）の様な瞳で カノジョは僕を見た
「どうして わかったの？」
ペイルマンの 手のひらの瞳を思わせるように
僕は カノジョに 右手を差し出した
「僕には 君との未来が見えるのさ」
「それじゃ 私たち どこで結婚式を挙げるの？」
学生時代から
10年間の付き合い ようやくプロポーズを終えて
カノジョの関心は 結婚式に向いていた
「大自然に囲まれた教会の屋外チャペル
満天の星空と 君の大好きな 三日月の下で 二人きり」
二人とも すでに両親は 夜空の星になっていた
僕らにとって 星空が家族
「ふーん そうなの・・・」
微妙な感想を残して
助手席から外を眺めるカノジョ 再び自分の世界に入ってしまった
カノジョのシルエットが 少しづつ 透明になる
それは遠い昔・・・ 助手席に染み付いたカノジョの記憶だった
ゴールデンウィーク
渋滞の続く道を ゆっくり動くアバルト124スパイダー
マフラー音を楽しんでいると 再び白日夢が見えてくる
次に現れたのは 半年前の 僕の記憶・・・
モノトーンの視界に 消毒液のにおいが充満する部屋で
カノジョがベットに横たわっている・・・
「お医者様は ３回の手術で 元気になれるって・・・言ったよね」
カノジョは すがるように 言った
「あぁ・・・」
自慢だった清流のような黒髪を手放し 手術に立ち向かった カノジョに
癌が ほかの臓器にも 転移したという新たな事実を 告げることは できなかった
「手術中に見た夢の中で テーブルの上に葡萄があったの・・・
でも 私・・・ 食べなかったよ」
君は オフェリアと違って 完璧に試練を 乗り超えた・・・
それなのに・・・
！！
ようやく アバルト124スパイダーは 渋滞を抜た
ここから先は 観光地にはなってない 山村へのルート
窓を開けると 気持ちいい 風を感じた
ふと・・・ ステアリングをにぎる 両手を見つめた僕は
再び 思い出の中に落ちた
「あなたは 運転を始めると
ハンドルを鍵盤に見立てて カツカツ やり始めるの そして・・・
呼吸に合わせて 口ずさむの・・・
周りの人には気がつかないほどに静かに・・・ 知っていた？」
夜空に浮かぶ月よりもに 蒼白な顔の カノジョが言った
そんな 癖があったなんて 全く気が付かなかった・・・
「はじめは 気ざわりだったのに
それが カッチーニのアヴェ・マリアだって 知った時から
私の周りには 妖精たちが 見えるようになったの ・・・
お願い・・・ 車じゃないけど 口ずさんで・・・」
一月前・・・
カノジョは 僕の口ずさむアヴェ・マリアを聴きながら 永遠の眠りについた
♪ Charlotte Church - Ave Maria ♪
5月4日・・・
みどりの日を 結婚式の日にすることを 僕とMidori（カノジョ）は決めていた
カノジョの思い出とともに
深緑の教会に到着したとき あたりは すでに真っ暗だった
もちろん それは想定内・・・
エンジンを止めて 運転席上部の ルーフロックを解除すると
妖精たちが
運転席と助手席のガラスを下げた
車を降りた 僕とカノジョ・・・は ルーフトップを シートの後ろに折りたたむ
最初で 最後の共同作業を終えると
僕は 左右の薬指に 結婚指輪をはめた
そして・・・
アバルト124スパイダーと共に カノジョの待つ世界に向かうべく エンジンを始動しようとした
ここから アクセル全開にすれば 僕も星屑の一つになれる・・・
！！
エンジンが かからない・・・
そのとき！
助手席に感じていた カノジョの記憶が
輝く妖精となって 僕の右手から指輪を奪うと 三日月に向かって飛び立った
あぁ・・・
パンよ！ファウヌス神よ・・・ 僕には まだ・・・ 試練が足りないのか・・・
それならば 早く 試練を与えてくれ・・・
Midori・・・ いつの日か 必ず 君の所へ行くよ・・・
アヴェ・マリアを口ずさみ 僕は 三日月に約束した
 |
 スポンサーサイト
Latest Posts - |
