ミイラ再生 ~ Nissan ローレル メダリストターボ C33型 1993 ~
19,2023 22:56
コイツ・・・
所有者の叔父さんと同じように 僕を小ばかにしてる
カノジョとの 初デートだと言うのに
何度も エンストを仕掛けてきくるのもその一環だ
そもそも MTを運転する機会なんて ほとんどないのだから
仕方ないじゃないか・・・
誰に言うでもない いい訳をしつつ
目的の駐車場に到着した僕は こっそり タイヤを蹴飛ばした
「お~ 初恋だからって 粋がるなよ!」
そんな僕に にやけたフロントマスクで つぶやく
そんなんじゃない! と 反発してみたものの・・・
「今日から 働いてもらうことになった saoriくんだ
細かいことは お前が教えてやってくれ」
叔父さんの後ろで 頭を下げたカノジョ見たとき
僕のハートは C33系ローレルの心臓
日産の伝説の名機RB20DETエンジンのように 一気にレッドゾーンに跳ね上がった
ショートヘアに 一重瞼
薄くて淡いピンクの唇
モノトーンの服をチョイスするセンス
一つ一つのピースは どれを取っても僕の好みとは
正反対なのに
どこかで 出逢った 大切な人・・・ そんな思いが湧いてきた
エジプトの高僧イムホテップ(Boris Karloff)が
現代に蘇り 3700年前に死別した 王女の生まれ変わりと再会したときも
きっと こんな感覚だったに違いない
小さな港町では すぐに街の情報は口コミで伝わる
次の日から Caféには
海軍基地のあらくれ海兵隊や漁師たちが こぞって カノジョに群がった
そんな男たちを見て 僕の使命は カノジョを守ることだと悟った
普通に考えれば
人生経験も少なく ひ弱な学生が 百戦錬磨の海の男たちの相手になろうはずもない
それでも 何とかしなければならない
そう思った僕は・・・ 結局 卑怯な道を選んだ
「あの人は 不倫して 障害事件を起こして 街を出てきたんだ」
僕の流したゴシップも
すぐに 街の隅々まで広まった
誤算だったのは カノジョの 陰のある性格が相まって
女性も含めて 誰一人カノジョに 声をかけなくなってしまった
あくまで
カノジョを守ることが目的だったが
結果として 僕は カノジョを独占することができた
半年も経つと 僕らは 夕食を一緒に食べるようになった
気をよくした僕は ついに カノジョをデートに誘った
「素敵! ぜひ行きましょう」
その日僕は
はじめてカノジョの 春の日差しのように 気持ちいい笑顔を見た
叔父さんに借りた
ローレルメダリストターボ それもMTで向かったのは
カノジョの希望した 河津桜の並木道
すでに 見ごろを過ぎている 今がいいとカノジョは言った

桜祭りの期間は
2時間も待つことになる 巨大な駐車場に ローレルを止める
気持ちよくさえずる 鶯
誰もいない 若草色の河津桜
真っ青で広い空
これら すべてを 独占した 僕とカノジョと ポンコツ(少々嫌味をこめて)のローレルは
人生 最大の深呼吸をした
帰り道は
カノジョがハンドルを握った
しなやかなハンドリングに
まるでCVTに乗っているようにシフトチェンジは 僕が運転してきた車と同じとは思えなかった
助手席から見たカノジョの横顔は ただ可愛いだけではない
オーラと共に僕の心に焼き付いた
帰り際に 額にそっと口づけをしてくれたカノジョ・・・
最高の 一日だった
それなのに・・・
翌日 カノジョは この街から いなくなった
そして 一週間が過ぎたころ 手紙が届いた
「私は これまで たくさんの人を気付つけてきた
だから 悪いうわさが立った時 私は むしろ償いができると思えた
人から疎まれるぐらいが お似合いなのだ
ただ・・・
噂の原因が 君だと知って 少し驚いた
君が どうして 私の過去を知ったのか わからない
それも報いなのだと 思った
そんな私が・・・
君といると 幸せを感じるようになってしまった・・・
私は 幸せになってはいけない人間なの・・・ だから 行かなければいけない
幸せを ありがとう 」
♪Rick Astley - When I Fall in Love♪
あれから5年
今年も 誰もいない だだっ広い駐車場にローレルを停めた
「貴方の運転は とっても静かで上手だよね」
車を降りた女友達が言う
「僕なんか まだまだだよ」
「そんなことないよ! マニュアルの車を運転するだけでもすごいし!
それに 葉桜が好きなんて言うところも いい!」
そう言いながら肩を寄せてきた
同期入社の彼女は
子供の頃 僕が理想としていた 二重瞼にポニーテールだった
「ちょっと先に行っててくれないか」
そういうと 僕は ダッシュボードから 手紙を取り出して 焼いた
全ての呪縛から解放た
イムホテップ(Boris Karloff)が 灰になって消えたように
白い灰になった手紙は
春の空に が舞い上がり消えていく
カノジョの呪縛が解けることを 願いながら 先をいく同僚を追いかけようとした
そのとき・・・
しなやかなハンドリングで
ローレルの横に ぴたりと 一台の車が停まった
僕のハート(RB20DET)が レッドゾーンに跳ね上がった・・・
※1989. 3.18 エジプトのクフ王のピラミッドで、4,400年前のミイラが発見されたそうです
所有者の叔父さんと同じように 僕を小ばかにしてる
カノジョとの 初デートだと言うのに
何度も エンストを仕掛けてきくるのもその一環だ
そもそも MTを運転する機会なんて ほとんどないのだから
仕方ないじゃないか・・・
誰に言うでもない いい訳をしつつ
目的の駐車場に到着した僕は こっそり タイヤを蹴飛ばした
「お~ 初恋だからって 粋がるなよ!」
そんな僕に にやけたフロントマスクで つぶやく
そんなんじゃない! と 反発してみたものの・・・
「今日から 働いてもらうことになった saoriくんだ
細かいことは お前が教えてやってくれ」
叔父さんの後ろで 頭を下げたカノジョ見たとき
僕のハートは C33系ローレルの心臓
日産の伝説の名機RB20DETエンジンのように 一気にレッドゾーンに跳ね上がった
ショートヘアに 一重瞼
薄くて淡いピンクの唇
モノトーンの服をチョイスするセンス
一つ一つのピースは どれを取っても僕の好みとは
正反対なのに
どこかで 出逢った 大切な人・・・ そんな思いが湧いてきた
エジプトの高僧イムホテップ(Boris Karloff)が
現代に蘇り 3700年前に死別した 王女の生まれ変わりと再会したときも
きっと こんな感覚だったに違いない
小さな港町では すぐに街の情報は口コミで伝わる
次の日から Caféには
海軍基地のあらくれ海兵隊や漁師たちが こぞって カノジョに群がった
そんな男たちを見て 僕の使命は カノジョを守ることだと悟った
普通に考えれば
人生経験も少なく ひ弱な学生が 百戦錬磨の海の男たちの相手になろうはずもない
それでも 何とかしなければならない
そう思った僕は・・・ 結局 卑怯な道を選んだ
「あの人は 不倫して 障害事件を起こして 街を出てきたんだ」
僕の流したゴシップも
すぐに 街の隅々まで広まった
誤算だったのは カノジョの 陰のある性格が相まって
女性も含めて 誰一人カノジョに 声をかけなくなってしまった
あくまで
カノジョを守ることが目的だったが
結果として 僕は カノジョを独占することができた
半年も経つと 僕らは 夕食を一緒に食べるようになった
気をよくした僕は ついに カノジョをデートに誘った
「素敵! ぜひ行きましょう」
その日僕は
はじめてカノジョの 春の日差しのように 気持ちいい笑顔を見た
叔父さんに借りた
ローレルメダリストターボ それもMTで向かったのは
カノジョの希望した 河津桜の並木道
すでに 見ごろを過ぎている 今がいいとカノジョは言った

桜祭りの期間は
2時間も待つことになる 巨大な駐車場に ローレルを止める
気持ちよくさえずる 鶯
誰もいない 若草色の河津桜
真っ青で広い空
これら すべてを 独占した 僕とカノジョと ポンコツ(少々嫌味をこめて)のローレルは
人生 最大の深呼吸をした
帰り道は
カノジョがハンドルを握った
しなやかなハンドリングに
まるでCVTに乗っているようにシフトチェンジは 僕が運転してきた車と同じとは思えなかった
助手席から見たカノジョの横顔は ただ可愛いだけではない
オーラと共に僕の心に焼き付いた
帰り際に 額にそっと口づけをしてくれたカノジョ・・・
最高の 一日だった
それなのに・・・
翌日 カノジョは この街から いなくなった
そして 一週間が過ぎたころ 手紙が届いた
「私は これまで たくさんの人を気付つけてきた
だから 悪いうわさが立った時 私は むしろ償いができると思えた
人から疎まれるぐらいが お似合いなのだ
ただ・・・
噂の原因が 君だと知って 少し驚いた
君が どうして 私の過去を知ったのか わからない
それも報いなのだと 思った
そんな私が・・・
君といると 幸せを感じるようになってしまった・・・
私は 幸せになってはいけない人間なの・・・ だから 行かなければいけない
幸せを ありがとう 」
♪Rick Astley - When I Fall in Love♪
あれから5年
今年も 誰もいない だだっ広い駐車場にローレルを停めた
「貴方の運転は とっても静かで上手だよね」
車を降りた女友達が言う
「僕なんか まだまだだよ」
「そんなことないよ! マニュアルの車を運転するだけでもすごいし!
それに 葉桜が好きなんて言うところも いい!」
そう言いながら肩を寄せてきた
同期入社の彼女は
子供の頃 僕が理想としていた 二重瞼にポニーテールだった
「ちょっと先に行っててくれないか」
そういうと 僕は ダッシュボードから 手紙を取り出して 焼いた
全ての呪縛から解放た
イムホテップ(Boris Karloff)が 灰になって消えたように
白い灰になった手紙は
春の空に が舞い上がり消えていく
カノジョの呪縛が解けることを 願いながら 先をいく同僚を追いかけようとした
そのとき・・・
しなやかなハンドリングで
ローレルの横に ぴたりと 一台の車が停まった
僕のハート(RB20DET)が レッドゾーンに跳ね上がった・・・
※1989. 3.18 エジプトのクフ王のピラミッドで、4,400年前のミイラが発見されたそうです
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