007 ノー・タイム・トゥ・ダイ ~ Aston Martin V8 MkIV 1985 ~
04,2022 14:48
20年間連れ添った家内が出て行った
引き金を 引かせたのは 僕なのだろう・・・
幸せな生活を継続するためには
外界の不要な情報を 極力 彼女に与えないほうがいい
これは 周囲で離婚していく仲間たちを見て学んだ経験だ
パートなどに出なくても 専業主婦で
自分の時間を謳歌してもらうことが 二人の関係を維持することができると
考えた僕は 幸せづくりのために 身を粉にして働いた
情報陛下である 家内の007として
007は 女王陛下の そばにはいない
常に陛下を守るため
世界中を飛び回るのだ
おのずと 僕も仕事優先の 生活を送ることになった
それもこれも
女王陛下のためだったのだが
僕は 小さなプロモーション会社ではあるが
最年少で 企画部長に就任し 業界でも一目置かれる存在になった
イベント界の ジェームズボンドだ
そうそう・・・
出会う前から お互いに007のファンだった僕らは
家を購入する前に
1985 Aston Martin V8 MkIVを購入した
初代DB5よりも ティモシー・ダルトンが乗った
フォード・マスタングのような丸形四つ目に 魅了されたからだ
これが 僕らの道を狂わせることになるとは つゆ知らず・・・
奥日光のリゾート地一帯を使う
大きなイベントを指揮することになった僕は
公共交通を使わずに
Aston Martin V8 MkIVで現地に向かった
交通便の悪さが建前だったが 本音はV8 MkIVを 思い切り走らせたかったからだ・・・
そこで 小さな事故を起こしてしまった
露骨に ゆっくり走る
BMWを追い抜こうとしたとき 間違いなく 仕掛けられた・・・
追い越しエリアに入ったV8 MkIVは
ウインカーを出して一気に加速した と・・突然
BMWも同じ方向にウインカーを点灯させずに 車線変更をかけてきた
Gasyaaaan
Aston Martin は BMWのリアバンパーにキスをした
本物のジェームス・ボンドであれば 楽に回避できただろう・・・
いや・・・ どこかで僕は思っていた
嫌味な運転をする奴を 少し懲らしめてやろうと・・・
相手は イベントのパトロンである地元名士の御曹司だった
事故自体は 軽微だったが
会社は 僕を内勤に異動させた
007の称号は はく奪され 社会的に抹殺された
もちろん 収入も激減した

これを機に
虚像の城に閉じ込めていた 家内はパートに出ることになった
リアル社会を知ったカノジョは
お金だけでなく 外部の新鮮な情報を手に入れるようになった
私が 懸命に守ってきた城壁は 情報の渦に駆逐された
結果・・・
カノジョは 僕が世界で一番つまらないものだと 再定義してしまった
いや・・・
それだけにとどまらず・・・
自分の最も輝いていた時間を浪費させた重罪人として
僕を蔑んだ
20年間 守り続けてきたものが
砂上の楼閣だったということが 3ヶ月後に カノジョが出ていたことで 証明された
二人の間に 子供はいなかったが
Aston Martin V8 MkIVと 同時期に購入した
アメリカンショートヘアーの二つが
20年間が現実に存在したことを語っていた
僕にもカノジョにも なつかない この猫は
007の仇敵から 名前を取ってスペクターと命名した
それがいけなかったのか
今 カノジョは 腎臓病を悪化させ 片目を失っていた
スペクターの統領 ブロフェルドのように
そんな 僕の20年間を証明していた君も
今朝 逝ってしまった・・・
人の寿命に置き換えると 96歳
僕よりずっと 年上になっていた
これで 僕には生きている 理(ことわり)が無くなった
結婚して初めての正月
家内と一緒に 屛風ヶ浦から 初日の出を見た
日本のドーバーと言われる
あそこから ダイブすれば すべてが塵に帰す・・・
無断欠勤した僕は
スペクターの入った段ボールを助手席に乗せて 東へ向かった
本州で一番早く陽が昇る場所は
当然・・・ 一番早く陽が沈む
それでも 遠く南米に続く太平洋は ダイヤモンドが散りばめられたように
キラキラ輝いていた
この世に存在した証を すべて消し去るシチュエーションとしては 最高だ・・・
世界遺産に登録されたイタリアの街
マテーラの小道を
アクセル全開で 走り回ったDB5と ジェームズ・ボンド(Daniel Craig)・・・
彼のように!!
目いっぱい アクセルを踏み込んだ!
Billie Eilish - No Time To Die
暴力的な後輪の回転!
とともに Aston Martin V8 MkIV は 大海原に向かった
人は・・・
危険を察知した時
二度と同じことを繰り返さないように
第三のハードドライブが 起動するらしい
それは 時の概念を変える
一秒が一分になるほどのスローモーション
その時起きたすべての事象が 第三のハードドライブに記憶される
空を飛ぶウミネコが こちらを眺めている
その瞳には 僕が映っている
その後ろで 飛行機雲を生成する ジャンボジェット機が3台・・・
007にとどめを刺すための 核ミサイルのようだ
僕らを誘うように 囁く竹藪のたち
その時・・・
竹藪の生え際に 段ボールが見えた
自動的に 視点がズームアップされる
箱の上部は 開いている・・・
!!
突然 ロシアンブルーの子猫が 顔を出した
Keeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
ガーリング製4ポットのキャリパーと
ベンチレーテッドディスクブレーキをロッキードAP製のバキュームサーボでアシストしたブレーキが
煙を吐いた
時が戻った・・・
Nyaaaaaaaaaaaaaaaaa
捨て猫だった
断崖を降りた僕は
猫の額ほどの砂浜に スペクターを埋めながら 呟いた
「No Time To DIE・・・ 死んでなんかいられない」
助手席で 眠る 新しい女王陛下 のために
引き金を 引かせたのは 僕なのだろう・・・
幸せな生活を継続するためには
外界の不要な情報を 極力 彼女に与えないほうがいい
これは 周囲で離婚していく仲間たちを見て学んだ経験だ
パートなどに出なくても 専業主婦で
自分の時間を謳歌してもらうことが 二人の関係を維持することができると
考えた僕は 幸せづくりのために 身を粉にして働いた
情報陛下である 家内の007として
007は 女王陛下の そばにはいない
常に陛下を守るため
世界中を飛び回るのだ
おのずと 僕も仕事優先の 生活を送ることになった
それもこれも
女王陛下のためだったのだが
僕は 小さなプロモーション会社ではあるが
最年少で 企画部長に就任し 業界でも一目置かれる存在になった
イベント界の ジェームズボンドだ
そうそう・・・
出会う前から お互いに007のファンだった僕らは
家を購入する前に
1985 Aston Martin V8 MkIVを購入した
初代DB5よりも ティモシー・ダルトンが乗った
フォード・マスタングのような丸形四つ目に 魅了されたからだ
これが 僕らの道を狂わせることになるとは つゆ知らず・・・
奥日光のリゾート地一帯を使う
大きなイベントを指揮することになった僕は
公共交通を使わずに
Aston Martin V8 MkIVで現地に向かった
交通便の悪さが建前だったが 本音はV8 MkIVを 思い切り走らせたかったからだ・・・
そこで 小さな事故を起こしてしまった
露骨に ゆっくり走る
BMWを追い抜こうとしたとき 間違いなく 仕掛けられた・・・
追い越しエリアに入ったV8 MkIVは
ウインカーを出して一気に加速した と・・突然
BMWも同じ方向にウインカーを点灯させずに 車線変更をかけてきた
Gasyaaaan
Aston Martin は BMWのリアバンパーにキスをした
本物のジェームス・ボンドであれば 楽に回避できただろう・・・
いや・・・ どこかで僕は思っていた
嫌味な運転をする奴を 少し懲らしめてやろうと・・・
相手は イベントのパトロンである地元名士の御曹司だった
事故自体は 軽微だったが
会社は 僕を内勤に異動させた
007の称号は はく奪され 社会的に抹殺された
もちろん 収入も激減した

これを機に
虚像の城に閉じ込めていた 家内はパートに出ることになった
リアル社会を知ったカノジョは
お金だけでなく 外部の新鮮な情報を手に入れるようになった
私が 懸命に守ってきた城壁は 情報の渦に駆逐された
結果・・・
カノジョは 僕が世界で一番つまらないものだと 再定義してしまった
いや・・・
それだけにとどまらず・・・
自分の最も輝いていた時間を浪費させた重罪人として
僕を蔑んだ
20年間 守り続けてきたものが
砂上の楼閣だったということが 3ヶ月後に カノジョが出ていたことで 証明された
二人の間に 子供はいなかったが
Aston Martin V8 MkIVと 同時期に購入した
アメリカンショートヘアーの二つが
20年間が現実に存在したことを語っていた
僕にもカノジョにも なつかない この猫は
007の仇敵から 名前を取ってスペクターと命名した
それがいけなかったのか
今 カノジョは 腎臓病を悪化させ 片目を失っていた
スペクターの統領 ブロフェルドのように
そんな 僕の20年間を証明していた君も
今朝 逝ってしまった・・・
人の寿命に置き換えると 96歳
僕よりずっと 年上になっていた
これで 僕には生きている 理(ことわり)が無くなった
結婚して初めての正月
家内と一緒に 屛風ヶ浦から 初日の出を見た
日本のドーバーと言われる
あそこから ダイブすれば すべてが塵に帰す・・・
無断欠勤した僕は
スペクターの入った段ボールを助手席に乗せて 東へ向かった
本州で一番早く陽が昇る場所は
当然・・・ 一番早く陽が沈む
それでも 遠く南米に続く太平洋は ダイヤモンドが散りばめられたように
キラキラ輝いていた
この世に存在した証を すべて消し去るシチュエーションとしては 最高だ・・・
世界遺産に登録されたイタリアの街
マテーラの小道を
アクセル全開で 走り回ったDB5と ジェームズ・ボンド(Daniel Craig)・・・
彼のように!!
目いっぱい アクセルを踏み込んだ!
Billie Eilish - No Time To Die
暴力的な後輪の回転!
とともに Aston Martin V8 MkIV は 大海原に向かった
人は・・・
危険を察知した時
二度と同じことを繰り返さないように
第三のハードドライブが 起動するらしい
それは 時の概念を変える
一秒が一分になるほどのスローモーション
その時起きたすべての事象が 第三のハードドライブに記憶される
空を飛ぶウミネコが こちらを眺めている
その瞳には 僕が映っている
その後ろで 飛行機雲を生成する ジャンボジェット機が3台・・・
007にとどめを刺すための 核ミサイルのようだ
僕らを誘うように 囁く竹藪のたち
その時・・・
竹藪の生え際に 段ボールが見えた
自動的に 視点がズームアップされる
箱の上部は 開いている・・・
!!
突然 ロシアンブルーの子猫が 顔を出した
Keeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
ガーリング製4ポットのキャリパーと
ベンチレーテッドディスクブレーキをロッキードAP製のバキュームサーボでアシストしたブレーキが
煙を吐いた
時が戻った・・・
Nyaaaaaaaaaaaaaaaaa
捨て猫だった
断崖を降りた僕は
猫の額ほどの砂浜に スペクターを埋めながら 呟いた
「No Time To DIE・・・ 死んでなんかいられない」
助手席で 眠る 新しい女王陛下 のために
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