一度も撃ってません ~ ランチア・フルヴィア クーペ 1972 ~
24,2022 20:58
会社では鳴かず飛ばずの僕も
愛車のランチア・フルヴィア1.3クーペを
プロフィール画像にしている
LINE上では
男女のもつれを紐解く
”サイレント・ソリューション”の異名を得ていた
先輩から新人・・・ 男女にかかわらず
恋に焦がされた人は多い
アドバイスした同期の女性が ツイッターで拡散したことで
サイレント・ソリューションのうわさは
社内の枠を超えた
キーを回すと
顎を撫でられた三毛猫のように
フルヴィアのエンジンは ゴロゴロ啼いた
今日も いい感じだ・・・
それじゃ カーステレオ ON!
エンジン音に スイングジャズが合わせれば
車内は シカゴのグリーン・ミル・ジャズ・クラブ
ビリー・ホリデイを聴きながら
僕は メッセージに目を向けた
Billie Holiday - When You're Smiling
「女性は相手の目を見て 押すべきって聞いたけど
今度のカノジョは まったく振り向いてくれない」
常連の経理男子からの依頼だった
夕陽に照らされた
真っ赤なボディが湾岸高速を走り抜ける
「万能な処方箋は無いよ
前の女性のアドバイスを 使いまわすのは論外だ
人見知りの女性には あえて目線を外して ストレスは控えるべきだ」
大黒ふ頭にフルヴィアを停めた僕は アドバイスを返した
恋に悩む人は多い
今日は 既読できてないメッセージがまだ5つもある
神よ・・・
人を愛しなさいという導きに 賛同しますが
迷える子羊の アフターケアも お願いします
夜のとばりが降り始めた空に浮かぶ
天使に向かって LINEを投げた
PIN・・・
再び エンジンをかけた直後
新しいメッセージが入ってきた
社内でも ”やめ検”と言われるほど眼光鋭い元上司だった
入社試験で 僕を釣り上げた
当時の人事課長は
法務部門の役員になっていた
しかし・・・立場を利用して 実は不倫をしている困った人だ
「5年目 案内嬢をどう思う」
相変わらず 桃色眼鏡で人を見る
彼の性癖のために どれだけの女性が 人生のレールを踏み外したことか・・・
「彼女は 会長の娘さんと友人関係です」
岸部一徳を彷彿させる 元上司からの返信は早かった
汗をかいたコアラのスタンプが 戻ってきた
僕が救ったのは 受付嬢の未来なのだが・・・
ベイブリッジを渡ったフルヴィアは 高速を降りた
9月には営業を再開するマリンタワーを横目に
横浜港からの汽笛を聴く
路地に掲げられた ジャズbarのネオンサインの下では
異国人が行き交った
ここは 殺し屋の街・・・ 僕にはそう見える
そして・・・
今 僕が見ているLINEの世界も
殺し屋と依頼人をつなぐ 闇のアイテムのように思えた
次のメッセージは興味深かった
三毛猫の画像・・・
SAKIさんだ
フルヴィアを停めている
パーキングの管理会社で働く女性からだ
カノジョは
恋愛経験豊富なタイプの女性だと 思っていた・・・
「旧車好きの男性の気を引く方法は?」
遠く川崎の工場地帯で 照明が灯った

「旧車のように 手のかかる女性のほうが 愛おしい
なんていう人がいるけど それは全く 逆効果だよ
旧車好きは 車に時間を掛けたいだ
だから 彼の時間をできるだけ奪わないほうがいい
助手席で 彼の顔を眺めていられるかい」
fyuuuuuuuuuuuuuu と一服
今日も いい回答ができた 自分に納得していると
Pin!!
パーキングのカノジョから返信だ
「お弁当 用意するので 助手席に乗せてください」
・・・
サイレントソリューションのスキルは
ゲームの中の経験で得たものだった
みんなは 僕のことを恋愛経験豊富なアラフォーだと思っている
確かに
恋愛シチュエーションの場数は 誰にも負けない・・・
しかし・・・
リアルな経験回数は サイレントキラー”御前零児”と同じだ
慌てた・・・
フルヴィアを2度もエンストさせてしまうほどに・・・
駐車場から出るとき
そっと視線を 君に向け続けて10年・・・
そんな想いを
夜空のベールに覆い隠した
「運転中も食べられる 小ぶりの おにぎりを用意してくれるならね」
ニッコリ笑顔の猫の画像が戻ってきた
初めての告白をした女の子のような リアクション・・・
PIN!!
夜空の天使から メッセージ
カノジョも君と同じだよ
愛車のランチア・フルヴィア1.3クーペを
プロフィール画像にしている
LINE上では
男女のもつれを紐解く
”サイレント・ソリューション”の異名を得ていた
先輩から新人・・・ 男女にかかわらず
恋に焦がされた人は多い
アドバイスした同期の女性が ツイッターで拡散したことで
サイレント・ソリューションのうわさは
社内の枠を超えた
キーを回すと
顎を撫でられた三毛猫のように
フルヴィアのエンジンは ゴロゴロ啼いた
今日も いい感じだ・・・
それじゃ カーステレオ ON!
エンジン音に スイングジャズが合わせれば
車内は シカゴのグリーン・ミル・ジャズ・クラブ
ビリー・ホリデイを聴きながら
僕は メッセージに目を向けた
Billie Holiday - When You're Smiling
「女性は相手の目を見て 押すべきって聞いたけど
今度のカノジョは まったく振り向いてくれない」
常連の経理男子からの依頼だった
夕陽に照らされた
真っ赤なボディが湾岸高速を走り抜ける
「万能な処方箋は無いよ
前の女性のアドバイスを 使いまわすのは論外だ
人見知りの女性には あえて目線を外して ストレスは控えるべきだ」
大黒ふ頭にフルヴィアを停めた僕は アドバイスを返した
恋に悩む人は多い
今日は 既読できてないメッセージがまだ5つもある
神よ・・・
人を愛しなさいという導きに 賛同しますが
迷える子羊の アフターケアも お願いします
夜のとばりが降り始めた空に浮かぶ
天使に向かって LINEを投げた
PIN・・・
再び エンジンをかけた直後
新しいメッセージが入ってきた
社内でも ”やめ検”と言われるほど眼光鋭い元上司だった
入社試験で 僕を釣り上げた
当時の人事課長は
法務部門の役員になっていた
しかし・・・立場を利用して 実は不倫をしている困った人だ
「5年目 案内嬢をどう思う」
相変わらず 桃色眼鏡で人を見る
彼の性癖のために どれだけの女性が 人生のレールを踏み外したことか・・・
「彼女は 会長の娘さんと友人関係です」
岸部一徳を彷彿させる 元上司からの返信は早かった
汗をかいたコアラのスタンプが 戻ってきた
僕が救ったのは 受付嬢の未来なのだが・・・
ベイブリッジを渡ったフルヴィアは 高速を降りた
9月には営業を再開するマリンタワーを横目に
横浜港からの汽笛を聴く
路地に掲げられた ジャズbarのネオンサインの下では
異国人が行き交った
ここは 殺し屋の街・・・ 僕にはそう見える
そして・・・
今 僕が見ているLINEの世界も
殺し屋と依頼人をつなぐ 闇のアイテムのように思えた
次のメッセージは興味深かった
三毛猫の画像・・・
SAKIさんだ
フルヴィアを停めている
パーキングの管理会社で働く女性からだ
カノジョは
恋愛経験豊富なタイプの女性だと 思っていた・・・
「旧車好きの男性の気を引く方法は?」
遠く川崎の工場地帯で 照明が灯った

「旧車のように 手のかかる女性のほうが 愛おしい
なんていう人がいるけど それは全く 逆効果だよ
旧車好きは 車に時間を掛けたいだ
だから 彼の時間をできるだけ奪わないほうがいい
助手席で 彼の顔を眺めていられるかい」
fyuuuuuuuuuuuuuu と一服
今日も いい回答ができた 自分に納得していると
Pin!!
パーキングのカノジョから返信だ
「お弁当 用意するので 助手席に乗せてください」
・・・
サイレントソリューションのスキルは
ゲームの中の経験で得たものだった
みんなは 僕のことを恋愛経験豊富なアラフォーだと思っている
確かに
恋愛シチュエーションの場数は 誰にも負けない・・・
しかし・・・
リアルな経験回数は サイレントキラー”御前零児”と同じだ
慌てた・・・
フルヴィアを2度もエンストさせてしまうほどに・・・
駐車場から出るとき
そっと視線を 君に向け続けて10年・・・
そんな想いを
夜空のベールに覆い隠した
「運転中も食べられる 小ぶりの おにぎりを用意してくれるならね」
ニッコリ笑顔の猫の画像が戻ってきた
初めての告白をした女の子のような リアクション・・・
PIN!!
夜空の天使から メッセージ
カノジョも君と同じだよ
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