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鴨川ホルモー ~ Citroën C3 2020 ~

 26,2022 19:20
友人の訃報で 10年ぶりに帰省した古都の街
1000年続く建物が林立する この街は 
目に見えない結界によって
古刹の雰囲気とともに 街を守っているのだと思っていた

しかし・・・
生活利便や 個人の権利といった現代社会は
古の結界師たちの想像を超えた
目を疑うような存在が 
少しづつ街を蝕んでいる状況に 僕は 一抹の不安を覚えた

C3のナビゲーションが 目的地を示していたのに
それを信じなかった自分を 肯定するために
僕は 長い長い講釈を C3に向かって垂れた

だって・・・
葬儀の場所は 寺とは思えない 
オフィスビルのような建造物だったのだから

彼とは親友というほどの仲ではなかった
いや・・・ 
むしろ 集合写真の両端に写る程度の関係だった
そんな僕が
368km離れた東京から
夜通しかけて 葬儀に参列した理由は
彼の配偶者にあった



鴨川ホルモーの儀式を受けるまで 
見ることのできない鬼たちのように
僕はカノジョの思いに 盲目だった

あの時・・・
カノジョの気持ちを理解していれば・・・

心の存在しない 虚無な東京での生活は 
時間を埋めるための仕事があるだけだった
残りの人生は
長い長い ロスタイムでしかなかった

鬼たちを見る目も失った・・・

人生を途中で終わらせる勇気もない自分を 笑ったとき 
彼の訃報が届いた

カノジョに逢える・・・
よこしまな想いで動いた 
僕の心の翻訳機は
カノジョを守るために 人生を使えと表示していた

喪主のカノジョは
ホルモーで
共に背を任せて戦った頃と違い
古都に似合う しとやかな女性になっていた
参列者に 気丈な振る舞いを続けるカノジョを見て
抱きしめたくなる衝動を抑えて 
僕は カノジョの前に立った

しかし・・・

「今日はありがとうございました」

瞳が交差することも無く
僕は 参列者の一人で終わった

夜通し走ってきた疲れが
2倍の重力となって 
僕を 地球に押し込もうとする・・・ 
抗う力もなく 僕は 長椅子に腰掛けた

「おじちゃん 大丈夫?」

真っ黒なワンピースの女の子は 
僕の頭をなでながら 
手に持っていた袋から レーズンを取り出して 僕の口に入れた

父を亡くした
今年3歳になったカノジョの子供に励まされる
寂しい 自分が 窓ガラスの中にいた

Citroën C3 2020

ホテルに戻った僕は
宿泊をキャンセルして 東京に戻ることにした

夜の帳が降り始めたとき 
僕は 鴨川のほとりにいた

ここで カノジョと共に戦った

無駄なことだと わかっていながら 
僕は叫んだ

「ゲロンチョリー (潰せ)!」

「パゴンチョリー (取り囲め)!」

えっ・・・
学生の時のように
鬼たちが わさわさと 湧き出て僕を囲んだ

あの娘がくれた 
レーズンの効力だろうか・・・ 
本来は 鬼のためのエネルギーアイテムだけど・・・

C3に 100匹の鬼を押し込むと 
再び 京都の街に逆戻りした

「どちら様ですか・・・」
憔悴したカノジョの姿が 目に浮かぶ
10年前とは
変わってしまった携帯番号
カノジョには 電話の主は分らない

それでいい・・・

「窓から外を見てもらえますか」

マンションのカーテンが開くと
女の子を抱えた カノジョが見えた

「フギュルッパ(進め)」

「フギュイッパクァ(止まれ)」

僕の命令に従って 
鬼たちが描いたのは 「大」の文字

「少し早いけど 君たちだけの送り火です」

鬼が見えるカノジョには わかるはず・・・

女の子を抱きしめながら
涙をぬぐう姿が バックミラー越しに見えた

「カイマーシュル(負けるな)」
そうカノジョに告げて 僕は電話を切った

C3のフェイスは どことなく
ホルモーの鬼に似ているな そう思った僕は C3に命じた

「アイギュウ・ピッピキピー (我に続けフ!)」

It’s a Beautiful Day / Michael Bublé






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