大地震 ~ ポルシェ カイエン 958型 2012 ~
17,2022 17:15
Gu ra gu ra gu ra
!!
Kyaaaaaa
雑貨店にいた僕は
しゃがみこむカノジョに向かって
落ちてきた 目覚まし時計をキャッチした
「大丈夫かい」
かっこいいセリフを決めた瞬間
まさかの伏兵・・・
Gatyuuuuuuuuun
ミュシャのリトグラフが入った額縁が 僕の頭を直撃した
漫画のような 星が宙を舞う中
1974年 ハリウッドのパニック映画
大地震の一場面が浮かんだ
あぁ・・・
スチュアート・グラフ(Charlton Heston)のように 僕は・・・
そして 目の前に闇が訪れた
「大丈夫? 」
後頭部に やさしい温もりを感じた
僕は こどもの時以来の
たんこぶと引き換えに カノジョの膝枕を手に入れた
「もう少しだけ このままでいいかな」
そう言う僕に
頬を軽く叩くと カノジョは言った
「甘えすぎ!」
画家志望の僕と 6つ年上のカノジョ
週末は 雑貨店をめぐるのが
僕らのルーティーンだった
そして
帰り道・・・
カノジョは ポルシェのディーラーの前で止まると
「いつの日か カイエンの助手席をプレゼントしてね」
と言った
僕は 笑顔でうなずいた
幸せだった しかし・・・
「いつの日か」とは
やってこないものの代名詞・・・
The Beatles-She´s leaving home
都会のビル群の一角に
小さな チューリプ畑を描いた
処女作『希望』と言う名の作品が カノジョのお気に入りだった
もちろん僕も 大好きだったが
それを超える作品を
生み出すことができない自分に 限界を感じていた
そして・・・
一緒に暮らし始めて4年目・・・
カノジョの期待が重荷になり始めていたその年・・・
震度5強の地震が 僕らの街を襲った
生活に支障が出る規模ではなかったが
液状化を理由に
ポルシェのディーラーが閉鎖した
そして・・・
カノジョとの結婚を考え始めた僕は
安定した生活を手に入れるため
創作活動より
就職活動に時間を割いていた
「私の存在が 君の夢を奪ってしまう・・・」
八重桜が舞い落ちる中
カノジョは 一言メモを残して 僕たちのアパートを出て行った
その年・・・
僕は カノジョも カイエンも 未来も 失った・・・
Gu ra gu ra gu ra
地震だ・・・
慌ててテレビをつけた私は
地震速報の背景に流れていた ニュースを見た
そして・・・10年ぶりに
ここに戻ってきた

かつて
ポルシェのディーラーがあったそこは
真っ赤な
チューリップ畑になっていた
都会のビルに囲まれた一角の花畑・・・
私の記憶に残る無名の画家の処女作と同じ風景だった
『ご用の方は 向かいへどうぞ』
看板に吸い寄せされるように 振り返ると
小さな花屋があった
フラワーギャラリー『希望』という名の店の扉を開けると
そこには
あの絵があった
私は 女性の店員に尋ねた
「向かいチューリップ畑は 良く再現できているわね」
真っ赤なリボンに真っ赤なエプロンの
店員は 眼を大きく開いて 言った
「失礼ですが Kyouko-sanですか?」
「はい・・・ でもどうして・・・」
「この店に来る方は
絵のほうを見て よく描けてますね?って言うんですよ
でも お客様は あの畑のほうが 絵に合わせて作られたと言われたので・・・
そう思う人は 作者のご主人以外に 一人しかいないって 聴いていたので」
・・・
「あっ ご主人が 来ました!!」
花畑の前に2012年型の カイエンが停まった
店を出た私は言った
「助手席の予約は まだ有効ですか?」
運転席から出てきた青年は言った
「夢破れて 趣味が絵画の花屋店主
そして 中古のカイエンだけど いいのかなぁ」
私が 笑顔で頷くと
彼は続けて言った
「それに・・・ 膝枕のリザーブも有効ならね」
「甘えすぎ」
地震が起こったわけではないけど・・・
私たちは
身体を相手に預けるように傾けた
!!
Kyaaaaaa
雑貨店にいた僕は
しゃがみこむカノジョに向かって
落ちてきた 目覚まし時計をキャッチした
「大丈夫かい」
かっこいいセリフを決めた瞬間
まさかの伏兵・・・
Gatyuuuuuuuuun
ミュシャのリトグラフが入った額縁が 僕の頭を直撃した
漫画のような 星が宙を舞う中
1974年 ハリウッドのパニック映画
大地震の一場面が浮かんだ
あぁ・・・
スチュアート・グラフ(Charlton Heston)のように 僕は・・・
そして 目の前に闇が訪れた
「大丈夫? 」
後頭部に やさしい温もりを感じた
僕は こどもの時以来の
たんこぶと引き換えに カノジョの膝枕を手に入れた
「もう少しだけ このままでいいかな」
そう言う僕に
頬を軽く叩くと カノジョは言った
「甘えすぎ!」
画家志望の僕と 6つ年上のカノジョ
週末は 雑貨店をめぐるのが
僕らのルーティーンだった
そして
帰り道・・・
カノジョは ポルシェのディーラーの前で止まると
「いつの日か カイエンの助手席をプレゼントしてね」
と言った
僕は 笑顔でうなずいた
幸せだった しかし・・・
「いつの日か」とは
やってこないものの代名詞・・・
The Beatles-She´s leaving home
都会のビル群の一角に
小さな チューリプ畑を描いた
処女作『希望』と言う名の作品が カノジョのお気に入りだった
もちろん僕も 大好きだったが
それを超える作品を
生み出すことができない自分に 限界を感じていた
そして・・・
一緒に暮らし始めて4年目・・・
カノジョの期待が重荷になり始めていたその年・・・
震度5強の地震が 僕らの街を襲った
生活に支障が出る規模ではなかったが
液状化を理由に
ポルシェのディーラーが閉鎖した
そして・・・
カノジョとの結婚を考え始めた僕は
安定した生活を手に入れるため
創作活動より
就職活動に時間を割いていた
「私の存在が 君の夢を奪ってしまう・・・」
八重桜が舞い落ちる中
カノジョは 一言メモを残して 僕たちのアパートを出て行った
その年・・・
僕は カノジョも カイエンも 未来も 失った・・・
Gu ra gu ra gu ra
地震だ・・・
慌ててテレビをつけた私は
地震速報の背景に流れていた ニュースを見た
そして・・・10年ぶりに
ここに戻ってきた

かつて
ポルシェのディーラーがあったそこは
真っ赤な
チューリップ畑になっていた
都会のビルに囲まれた一角の花畑・・・
私の記憶に残る無名の画家の処女作と同じ風景だった
『ご用の方は 向かいへどうぞ』
看板に吸い寄せされるように 振り返ると
小さな花屋があった
フラワーギャラリー『希望』という名の店の扉を開けると
そこには
あの絵があった
私は 女性の店員に尋ねた
「向かいチューリップ畑は 良く再現できているわね」
真っ赤なリボンに真っ赤なエプロンの
店員は 眼を大きく開いて 言った
「失礼ですが Kyouko-sanですか?」
「はい・・・ でもどうして・・・」
「この店に来る方は
絵のほうを見て よく描けてますね?って言うんですよ
でも お客様は あの畑のほうが 絵に合わせて作られたと言われたので・・・
そう思う人は 作者のご主人以外に 一人しかいないって 聴いていたので」
・・・
「あっ ご主人が 来ました!!」
花畑の前に2012年型の カイエンが停まった
店を出た私は言った
「助手席の予約は まだ有効ですか?」
運転席から出てきた青年は言った
「夢破れて 趣味が絵画の花屋店主
そして 中古のカイエンだけど いいのかなぁ」
私が 笑顔で頷くと
彼は続けて言った
「それに・・・ 膝枕のリザーブも有効ならね」
「甘えすぎ」
地震が起こったわけではないけど・・・
私たちは
身体を相手に預けるように傾けた
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