この茫漠たる荒野で ~ セリカXX A60 2000GT 1985 ~
20,2022 15:38
Cafébar Casablancaの向かいには
シルバーボディの初代ハコスカGT-Rが屋根上に鎮座する
ガレージ ”Doc・wheel(ドク・ホイール)”がある
3代続く このチューニングカーショップは
車をこよなく愛する人々のたまり場・・・
週末になると
Casablancaのホットドックセットを持ち込んだ
老若男女のカーマニアたちが集う
その様は 自分の戦歴を宣う
異世界の冒険者ギルドのようだ
Daughters John Mayer
残雪が凍りつく 冷たいブルーな その日
店の初代代表で
ハコスカマジシャンを自称する Kenichi爺さんに
三代目の僕(Kenzo)は 呼ばれた
「XXの様子を ちょっと 見てきてくれ」
片道150kが ちょっと見てくるレベルなのかという論議は別として
僕も 1985年式A60セリカXXが 気になっていた
2年前・・・
エルフの長老のようなXXの所有者は
店にメンテナンスを依頼したあと急逝した
「これは あなたのお父さんが 愛情を注いだ車です
大切に してあげてください」
一月後やってきたエルフの息子に
僕は XXのカギを渡した
しかし・・・
禁煙で清潔な車内にもかかわらず
くわえ煙草のまま
愛情を全く感じさせない ぞんざいなしぐさで
扉を開けた彼は
蹴りつけるように アクセルを踏み込んで 走り去っていった・・・
これでよかったのだろうか・・・
そんな思いが頭をよぎった

大海原に浮かぶ漁船のように
連綿と続く茶畑の中に ポツリと瓦屋根が見えた
霜が降りた茶葉の起伏が
リアルな白波を感じさせ 遠距離ドライブを楽しんでいて
気付くのが遅れたが
漁船と思われたXXの自宅は 豪華客船のように広大だった
塀で囲まれた敷地に入ると
巨大な日本家屋の母屋と ガレージが見える
しかし目的のXXは 庭の片隅で
埃と枯草の中に沈むように放置されていた
傷一つなく磨かれていたボディの面影は微塵もなく
両サイドのリアフェンダーには
大きな窪みと錆が見えた
ジョハンナ・・・
”この茫漠たる荒野で”の中で
足を縛られて 自由を奪われた女の子の姿が 頭をよぎった・・・
「あぁ 車屋か!
この車 今まで ちゃんとメンテしてたのかい
エンストばかりだし 真っすぐ走らんし・・・
ゴミだから もっていってくれ」
渇いた空が 啼いていた
ドアを開けると
カーステレオが取り外され
傷だらけになったセンターパネルと泥だらけのカーマットが見える
ボンネットを開けて
バッテリーと オイルを交換する
6気筒 2.0L DOHC 24バルブの心臓は強い
何のストレスもなく一発始動!
優しくアクセルを踏む
機敏に反応するエンジン
ゆっくり動かしてみる
BuooooooooooooooN
フジツボマフラーも健在!
タイヤもサスペンションも痛みはない
ボディの傷は 表面的だ
カリカリにチューンされたXXは
ハンドルも足回りも繊細だ
最新のスポーツカーにも劣らない走りを体験できるが
運転手の技能を求められる
エルフの息子は
ようやく厄介者を 追い払えると言いながら
僕が帰るのを待たずに
屋敷に消えた
FuooooooooooN FuooooooooooooN
エギゾーストノートが
エルフさんの語りを思い出させた
この車は
家族の歴史 そのものなんですよ
結婚して 子供が生まれた
みんなを乗せて いろんなところに行きました
家内が死んで
子供も大きくなってしまって・・・
再びコイツと二人きりになったけど
コイツの中にいると
あの頃の家族と 逢えるんですよ
いつの日か
息子にコイツを託したいんだけど・・・
君のほうが
コイツに好かれているようだねぇ・・・
寂しく微笑んだ横顔が 忘れられない
後部座席には
あの煙草をふかしていた息子が
小さいころ いつも抱きかかえていたという 熊のぬいぐるみがあった
ごめんよ XX・・・
君は 僕といるべきだった 一緒に帰ろう
リトラクタブルライトを跳ね上げる
茶畑に反射したライトが
流した涙のように XXの後を 見送った
シルバーボディの初代ハコスカGT-Rが屋根上に鎮座する
ガレージ ”Doc・wheel(ドク・ホイール)”がある
3代続く このチューニングカーショップは
車をこよなく愛する人々のたまり場・・・
週末になると
Casablancaのホットドックセットを持ち込んだ
老若男女のカーマニアたちが集う
その様は 自分の戦歴を宣う
異世界の冒険者ギルドのようだ
Daughters John Mayer
残雪が凍りつく 冷たいブルーな その日
店の初代代表で
ハコスカマジシャンを自称する Kenichi爺さんに
三代目の僕(Kenzo)は 呼ばれた
「XXの様子を ちょっと 見てきてくれ」
片道150kが ちょっと見てくるレベルなのかという論議は別として
僕も 1985年式A60セリカXXが 気になっていた
2年前・・・
エルフの長老のようなXXの所有者は
店にメンテナンスを依頼したあと急逝した
「これは あなたのお父さんが 愛情を注いだ車です
大切に してあげてください」
一月後やってきたエルフの息子に
僕は XXのカギを渡した
しかし・・・
禁煙で清潔な車内にもかかわらず
くわえ煙草のまま
愛情を全く感じさせない ぞんざいなしぐさで
扉を開けた彼は
蹴りつけるように アクセルを踏み込んで 走り去っていった・・・
これでよかったのだろうか・・・
そんな思いが頭をよぎった

大海原に浮かぶ漁船のように
連綿と続く茶畑の中に ポツリと瓦屋根が見えた
霜が降りた茶葉の起伏が
リアルな白波を感じさせ 遠距離ドライブを楽しんでいて
気付くのが遅れたが
漁船と思われたXXの自宅は 豪華客船のように広大だった
塀で囲まれた敷地に入ると
巨大な日本家屋の母屋と ガレージが見える
しかし目的のXXは 庭の片隅で
埃と枯草の中に沈むように放置されていた
傷一つなく磨かれていたボディの面影は微塵もなく
両サイドのリアフェンダーには
大きな窪みと錆が見えた
ジョハンナ・・・
”この茫漠たる荒野で”の中で
足を縛られて 自由を奪われた女の子の姿が 頭をよぎった・・・
「あぁ 車屋か!
この車 今まで ちゃんとメンテしてたのかい
エンストばかりだし 真っすぐ走らんし・・・
ゴミだから もっていってくれ」
渇いた空が 啼いていた
ドアを開けると
カーステレオが取り外され
傷だらけになったセンターパネルと泥だらけのカーマットが見える
ボンネットを開けて
バッテリーと オイルを交換する
6気筒 2.0L DOHC 24バルブの心臓は強い
何のストレスもなく一発始動!
優しくアクセルを踏む
機敏に反応するエンジン
ゆっくり動かしてみる
BuooooooooooooooN
フジツボマフラーも健在!
タイヤもサスペンションも痛みはない
ボディの傷は 表面的だ
カリカリにチューンされたXXは
ハンドルも足回りも繊細だ
最新のスポーツカーにも劣らない走りを体験できるが
運転手の技能を求められる
エルフの息子は
ようやく厄介者を 追い払えると言いながら
僕が帰るのを待たずに
屋敷に消えた
FuooooooooooN FuooooooooooooN
エギゾーストノートが
エルフさんの語りを思い出させた
この車は
家族の歴史 そのものなんですよ
結婚して 子供が生まれた
みんなを乗せて いろんなところに行きました
家内が死んで
子供も大きくなってしまって・・・
再びコイツと二人きりになったけど
コイツの中にいると
あの頃の家族と 逢えるんですよ
いつの日か
息子にコイツを託したいんだけど・・・
君のほうが
コイツに好かれているようだねぇ・・・
寂しく微笑んだ横顔が 忘れられない
後部座席には
あの煙草をふかしていた息子が
小さいころ いつも抱きかかえていたという 熊のぬいぐるみがあった
ごめんよ XX・・・
君は 僕といるべきだった 一緒に帰ろう
リトラクタブルライトを跳ね上げる
茶畑に反射したライトが
流した涙のように XXの後を 見送った
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