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クライ・マッチョ ~ メルセデスベンツ 300SL 1956 ~ 

 23,2022 14:25
うちの庭には
風見鶏がいる
以前は 隣家の屋根にいた

なぜ 
ここにいるのかって・・・

風見鶏の家には
1954年式 ベンツ300SLと
真冬でも真っ黒に日焼けした初老の老人が暮らしていた

ベンツ 300SL  1956

銀色のガルウィングと同じくらい
健康的な白い歯を キラキラさせて 
Gahahaと豪快に笑う彼が 大好きだった

「大学教授らしいけど
 あんなホストみたいな外見のヤツとは あまり関わりたくないな」
そう言う父も
出張のたびに 手土産と称して届く地酒を 
一番 楽しみにしていた

Karariと澄んだ大寒の夜・・・
庭のファイヤーピットで暖を取りながら 
スコッチウィスキーを飲む隣人の隣で
中学生だった僕は
青春という船旅で遭遇した 嵐を乗り切るアドバイスを受けた

「君は 苦難に出会えたことを 感謝すべきだ
 どんなに チート能力が備わっていても 
 魔王がいなけりゃ 勇者にはなれない
 平和な世界じゃ ヒーローは生まれないのさ

 少年!! 
 苦難に感謝して 立ち向かえ!」

「でも・・・ 告白したのに あっさりごめんなさいって・・・」

あの日の僕は かなり落ち込んでいた

「そうか! そうか!
 それじゃ 明日 もう一度チャレンジしよう!
 だめなら もう一回!
 告白100回と言うだろう! 一度のターンで降伏なんて つまらない!!」

殺人事件の現場検証じゃないのだから・・・
そう思いながらも 
隣人の言葉は 僕の船旅の北極星になった

「あいつに 乗ってごらん・・・」

ガルウィングの向こう側に 1960年代を感じながら
僕は 300SLの 運転席に乗った

「この均整の取れた流線形
 そして 機能重視で配備されたガルウィング 
 どうだ・・・ 最高にマッチョだろ!」
そう言うと 彼は Sabor a mi を口ずさみながら 一人ステップを踏んだ

Sabor a mi - Los panchos



それから 
数日経った 静かな朝・・・
300SLの豪快な排気音で 僕は目覚めた

何となく 
行かなくちゃいけない・・・
そう思った僕は ベッドを飛び出した

しかし・・・
隣家は すでに空っぽだった 
隣人も 300SLも 風見鶏も なくなっていた

父の話では
研究に没頭するため 家を売ったそうだ
ちなみに 彼の日焼けは 
野鳥観察で雪山に行って 日焼けしたものだったらしい
 
父は これで地酒とも おさらばかと嘆いていた

僕宛に郵便物が届いたのは
それから半年後のことだった 中身は あの風見鶏だった



それ以来
我が家の庭には 風見鶏が住み着いている
今年で5年目になる・・・

風が流れると  
時折 それは Keeeeee と啼いた

「チャレンジしてるか?」

心の中で
マイク・マイロ(Clinton Eastwood)に変換された隣人が
そう 問いかけてくるように思えた

安心して・・・

ルコックのスニーカーに
桃色のチェスターコートのカノジョを 僕は 風見鶏に紹介した

12回目の告白で
ようやく 勇者になれたよ

南を向いた風見鶏が 再び Keeeeeeeeeと 啼く前で
僕は  Sabor a mi を口ずさんだ





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