ソウルフル・ワールド ~ ポルシェ968 ~
25,2021 20:38
ガラス窓に
ミュートされた歓声でも 血液は３℃上昇する
窓の向こうにそびえ立つ
東京メッツの本拠地
グリーンウォールスタジアムは今日も燃えている
ひざの故障で
入院生活も一ヶ月を超えた
40歳間近での長期離脱
フロントから
いつ 戦力外を通告が出されてもおかしくない
そろそろ潮時か・・・
それなら こちらから引退宣言してやろう
そう思ってはみるが
結局 実行する勇気は・・・ない
僕の人生は
もうとっくに エンディングを迎えているのかもしれない・・・
ジョー・ガードナーが見た
あの ソウルフルワールドが
目の前に ぼんやり見えた・・・
すいません・・・
病室の入口に立つ
青白く透き通った肌の少年が
僕をリアルワールドへ 連れ戻した
「おじさん メッツの選手なんですか」
「そうだよ でも・・・ おじさんではない」
それに・・・
一軍でもない・・・ 心の中で呟いた
「それじゃ 二刀流？」
「いやいや 僕は天使（エンジェル）じゃないから
ただの ピッチャーだよ」
なーんだ・・・
少年の 口調が変わった
「僕はねぇ 二刀流なんだ！！」
少年野球で ピッチャーで四番バッターだった彼は
僕にアドバイスをしたいらしい
「ホームランを打つコツは
こんな感じ！！
月に向かってアッパースィングだよ おじさん！」
それは もうゴルフスィングだよ 少年
そう思いながらも
「OK！ それじゃ
グリーンウォールスタジアムで 対戦だ！」
そういう僕に 少年は言った
「おじさん！ 科学的じゃないね！
僕がメッツに入るころには おじさんは とっくに引退してるよ！！」
口の減らない子供だ・・・
Ryan Keberle & Catharsis - Fool on the Hill
「そうだ おじさん
今度ポルシェに乗せてよ？」
「ポルシェ？」
どうやら 少年には
プロ野球選手＝ポルシェ保有者という公式が成立しているらしい
おじさんではない
一軍でもない
故に ポルシェなど持ってない！
独自の三段論法が頭に浮かんだが・・・
プロ野球選手の端くれとして
少年の夢を壊してはいけない
「あぁー もちろん持ってるけど
旧型だから 乗り心地はハードだけどね」
そういう僕に
少年は 自分の身体を見ながら呟いた
「昔の車は最高だよね
どんなに故障しても スクラップにならないから・・・」
Gofoon Gofoon・・・
咳込む少年
そこに 看護師が 驚いて飛び込んできた
「Kenちゃん だめじゃない」
看護師に手を引かれていく少年は
「おじさん！
ガンバってね 応援してるよ！」
その日以来・・・
小さなコーチが
再び 僕のところに来ることはなかった
退院の日
友人に頼んておいた中古の968が病院の駐車場に到着した
ポルシェ最後のFR
僕は 少年を車に乗せてあげようと 病室を訪ねた
！！
グリーンウォール球場が見える病室のベッドにいた少年は
体中に 数えきれないほどの管を付けていた・・・
余命一ヶ月なんです
あの看護師が 涙をためながら言った
「待っているぞ」と書いたサインボールを看護師に渡すと
僕は 病院の前の大通りを
トップギアで走り抜けた 爆音を残して・・・
それから毎日
968は 病院の前を通過した
うるさい車ねぇ
看護師たちが 迷惑そうに話す中
眠り続ける少年の顔は ほんの少し笑顔を浮かべていた
復帰後
968のエンジンのように
雄たけびを上げる 剛腕ストッパーに変貌した老獪なピッチャーは
グリーンウォールスタジアムの一軍の試合にいた
一軍初登板の その日・・・
三者三振の完璧なストッパーをこなした彼は
そのまま 次の回で バッターボックスに立つことになった・・・
無人になった病室の窓から
グリーンウォールスタジアムを見ていた看護師は
球場の歓声を聴いて 空を見上げた
すると 白く輝くホームランボールが 月に向かって
いや ソウルフル・ワールドに向かって 飛んでいくのが見えた・・・
ミュートされた歓声でも 血液は３℃上昇する
窓の向こうにそびえ立つ
東京メッツの本拠地
グリーンウォールスタジアムは今日も燃えている
ひざの故障で
入院生活も一ヶ月を超えた
40歳間近での長期離脱
フロントから
いつ 戦力外を通告が出されてもおかしくない
そろそろ潮時か・・・
それなら こちらから引退宣言してやろう
そう思ってはみるが
結局 実行する勇気は・・・ない
僕の人生は
もうとっくに エンディングを迎えているのかもしれない・・・
ジョー・ガードナーが見た
あの ソウルフルワールドが
目の前に ぼんやり見えた・・・
すいません・・・
病室の入口に立つ
青白く透き通った肌の少年が
僕をリアルワールドへ 連れ戻した
「おじさん メッツの選手なんですか」
「そうだよ でも・・・ おじさんではない」
それに・・・
一軍でもない・・・ 心の中で呟いた
「それじゃ 二刀流？」
「いやいや 僕は天使（エンジェル）じゃないから
ただの ピッチャーだよ」
なーんだ・・・
少年の 口調が変わった
「僕はねぇ 二刀流なんだ！！」
少年野球で ピッチャーで四番バッターだった彼は
僕にアドバイスをしたいらしい
「ホームランを打つコツは
こんな感じ！！
月に向かってアッパースィングだよ おじさん！」
それは もうゴルフスィングだよ 少年
そう思いながらも
「OK！ それじゃ
グリーンウォールスタジアムで 対戦だ！」
そういう僕に 少年は言った
「おじさん！ 科学的じゃないね！
僕がメッツに入るころには おじさんは とっくに引退してるよ！！」
口の減らない子供だ・・・
Ryan Keberle & Catharsis - Fool on the Hill
「そうだ おじさん
今度ポルシェに乗せてよ？」
「ポルシェ？」
どうやら 少年には
プロ野球選手＝ポルシェ保有者という公式が成立しているらしい
おじさんではない
一軍でもない
故に ポルシェなど持ってない！
独自の三段論法が頭に浮かんだが・・・
プロ野球選手の端くれとして
少年の夢を壊してはいけない
「あぁー もちろん持ってるけど
旧型だから 乗り心地はハードだけどね」
そういう僕に
少年は 自分の身体を見ながら呟いた
「昔の車は最高だよね
どんなに故障しても スクラップにならないから・・・」
Gofoon Gofoon・・・
咳込む少年
そこに 看護師が 驚いて飛び込んできた
「Kenちゃん だめじゃない」
看護師に手を引かれていく少年は
「おじさん！
ガンバってね 応援してるよ！」
その日以来・・・
小さなコーチが
再び 僕のところに来ることはなかった
退院の日
友人に頼んておいた中古の968が病院の駐車場に到着した
ポルシェ最後のFR
僕は 少年を車に乗せてあげようと 病室を訪ねた
！！
グリーンウォール球場が見える病室のベッドにいた少年は
体中に 数えきれないほどの管を付けていた・・・
余命一ヶ月なんです
あの看護師が 涙をためながら言った
「待っているぞ」と書いたサインボールを看護師に渡すと
僕は 病院の前の大通りを
トップギアで走り抜けた 爆音を残して・・・
それから毎日
968は 病院の前を通過した
うるさい車ねぇ
看護師たちが 迷惑そうに話す中
眠り続ける少年の顔は ほんの少し笑顔を浮かべていた
復帰後
968のエンジンのように
雄たけびを上げる 剛腕ストッパーに変貌した老獪なピッチャーは
グリーンウォールスタジアムの一軍の試合にいた
一軍初登板の その日・・・
三者三振の完璧なストッパーをこなした彼は
そのまま 次の回で バッターボックスに立つことになった・・・
無人になった病室の窓から
グリーンウォールスタジアムを見ていた看護師は
球場の歓声を聴いて 空を見上げた
すると 白く輝くホームランボールが 月に向かって
いや ソウルフル・ワールドに向かって 飛んでいくのが見えた・・・
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