ラスト・ベガス ~ スープラ 3.0GT 1990 ~
16,2021 13:44
「おや 今日はパーティじゃなかったのかな」
じいちゃんが言った
YUKIと Takashiの顔が浮かぶ・・・
「行くのやめたんだ・・・」
僕は 妖精のため息のような 小声で返した
加齢性難聴の じいちゃんには聞こえないだろう それでもよかった
それが Takashiのためなんだ 僕さえ我慢すれば・・・
Gon!!
突然 じいちゃんの拳骨が頭に落ちた
「ちょっと 出かけるか」
家族の猛反対で 禁煙することになった じいちゃんの
胸ポケットに ”わかば”が 顔を出している
それは ドライブに行こう! という合図だった

じいちゃんの愛車 1990年式 スープラ3.0GT
セリカXXから派生した トヨタの純潔スポーツカー
コイツと一緒なら 運転テクニックは誰にも負けないと
じいちゃんは よく言ったが
運転席のドアには ぼっこり 大きなへこみがある
じいちゃんの話は 話半分・・・ それが我が家の統一見解だった
最近めっきり見なくなった リトラクタブルライトをはね上げて
田園風景を疾走すると
5月のさわやかな風に乗った燕が 並走した
「ある映画の話をしよう・・・」
じいちゃんが 切り出した
「ビリー(Michael Douglas)は ソフィーが好きだった
そして ソフィーもまた そのビリーのことが気になっていた
二人は 毎日の生活の中で
お互いの存在を確かめ合っていた
しかし・・・
ビリーは 親友のパディ(Robert De Niro)がソフィーを 愛していることを知ってしまう
親友の恋を成就させるため
ビリーは ソフィーと少しづつ距離をとった
時の流れは パディとソフィーの未来を選ぶんだ・・・」
僕の心臓は スープラのエンジンよりも回転数が上昇した
「ところが・・・
幸せをつかんだはずの彼は ある日 カノジョの古い日記を見つけてしまう
カノジョが本当に愛したのは 自分ではなかった・・・
それを知りながらも 彼はカノジョとの結婚生活を続けた・・・
・・・やさしさが いつも幸せを生むとは限らない・・・」
Boooooooooooooomb!
ついに 僕のハートがブローを起こした
「本当に やさしい男は 自分にも優しいもんだ」
そう言うと じいちゃんは
街が一望できる山腹の展望パーキングにスープラを停めて 外に出た
わかばに火を付けるじいちゃんに
「死んだ ばあちゃんに 怒られるよ!!」
背後から 僕が言うと
Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu
と一服・・・
「おれは 自分に 優しいのさ」
だって・・・
「お前も もっと 自分にやさしくなってほしい」
Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu
じいちゃんの 2回目の深い一服で
モワリと広がった煙は 僕の視界を真っ白に遮った後・・・
徐々に拡散していく中で 心の中で燻っていた もやもやも一緒に取り払った
「じいちゃん ありがとう!!」
・・・
孫の 笑顔を見ながら スープラに戻った
ふと 君と喧嘩した あの日が 蘇った・・・
”俺より あいつと結婚すればよかったじゃないか!!”
つい口走ってしまった私に
”私が選んだのは あなたです!”
そう言うと 君は スープラを 蹴り飛ばした
君が僕と一緒にいてくれたという証・・・
運転席の扉に残った ヒールの跡を撫でると
「タバコを続けても なかなかそっちに行けないよ」
そう呟いた
じいちゃんが言った
YUKIと Takashiの顔が浮かぶ・・・
「行くのやめたんだ・・・」
僕は 妖精のため息のような 小声で返した
加齢性難聴の じいちゃんには聞こえないだろう それでもよかった
それが Takashiのためなんだ 僕さえ我慢すれば・・・
Gon!!
突然 じいちゃんの拳骨が頭に落ちた
「ちょっと 出かけるか」
家族の猛反対で 禁煙することになった じいちゃんの
胸ポケットに ”わかば”が 顔を出している
それは ドライブに行こう! という合図だった

じいちゃんの愛車 1990年式 スープラ3.0GT
セリカXXから派生した トヨタの純潔スポーツカー
コイツと一緒なら 運転テクニックは誰にも負けないと
じいちゃんは よく言ったが
運転席のドアには ぼっこり 大きなへこみがある
じいちゃんの話は 話半分・・・ それが我が家の統一見解だった
最近めっきり見なくなった リトラクタブルライトをはね上げて
田園風景を疾走すると
5月のさわやかな風に乗った燕が 並走した
「ある映画の話をしよう・・・」
じいちゃんが 切り出した
「ビリー(Michael Douglas)は ソフィーが好きだった
そして ソフィーもまた そのビリーのことが気になっていた
二人は 毎日の生活の中で
お互いの存在を確かめ合っていた
しかし・・・
ビリーは 親友のパディ(Robert De Niro)がソフィーを 愛していることを知ってしまう
親友の恋を成就させるため
ビリーは ソフィーと少しづつ距離をとった
時の流れは パディとソフィーの未来を選ぶんだ・・・」
僕の心臓は スープラのエンジンよりも回転数が上昇した
「ところが・・・
幸せをつかんだはずの彼は ある日 カノジョの古い日記を見つけてしまう
カノジョが本当に愛したのは 自分ではなかった・・・
それを知りながらも 彼はカノジョとの結婚生活を続けた・・・
・・・やさしさが いつも幸せを生むとは限らない・・・」
Boooooooooooooomb!
ついに 僕のハートがブローを起こした
「本当に やさしい男は 自分にも優しいもんだ」
そう言うと じいちゃんは
街が一望できる山腹の展望パーキングにスープラを停めて 外に出た
わかばに火を付けるじいちゃんに
「死んだ ばあちゃんに 怒られるよ!!」
背後から 僕が言うと
Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu
と一服・・・
「おれは 自分に 優しいのさ」
だって・・・
「お前も もっと 自分にやさしくなってほしい」
Fuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu
じいちゃんの 2回目の深い一服で
モワリと広がった煙は 僕の視界を真っ白に遮った後・・・
徐々に拡散していく中で 心の中で燻っていた もやもやも一緒に取り払った
「じいちゃん ありがとう!!」
・・・
孫の 笑顔を見ながら スープラに戻った
ふと 君と喧嘩した あの日が 蘇った・・・
”俺より あいつと結婚すればよかったじゃないか!!”
つい口走ってしまった私に
”私が選んだのは あなたです!”
そう言うと 君は スープラを 蹴り飛ばした
君が僕と一緒にいてくれたという証・・・
運転席の扉に残った ヒールの跡を撫でると
「タバコを続けても なかなかそっちに行けないよ」
そう呟いた
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