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レベッカ ~ トヨタクラシック 1997 ~

 21,2021 19:02
「あなたの街に行ってみたい」
彼に怒られると思いながらも 私は言った

死別した彼女との思い出にあふれた街は
彼にとって 
永遠に閉ざしておきたい
マキシム(Laurence Olivier)の邸宅マンダレー

でも・・・
だからこそ・・・
私はそこに行かなければならない 
彼の本当の伴侶になるために 



彼は優しい笑顔だったが
最後まで 首を縦に振らなかった

翌日
私は 朝一番の列車で
彼と彼女の記憶の街に向かった

格子窓に漆喰の壁が続く小京都の街は
穏やかな春の日差しに照らされていた

列車を降りた私は 
彼が以前見せてくれた街の写真を思い出す

無人駅の改札横にある柱・・・

木造校舎の小学校 体育館の入口・・・

児童公園の滑り台の横に立つ銀杏の古木・・・

交番の裏壁・・・

ロマネスク様式の白亜の教会は 
確か・・・ 後ろから3段目のチャーチベンチ

最後に・・・
細い路地を抜けると見えてきた
さやしい黄色のミモザに覆われたCafe

私の記憶と同じ
イングリッシュパブ風の店内は
街の歴史を集積したヒエログリフのように 
たくさんの写真が飾らていた
サイフォンにアルコールランプを灯す
蝶ネクタイのマスターもまた
そのログの一つに思えた

トヨタクラシック1997

目的の窓際の席は 空いていた

脳細胞が活性化するほど
甘いアイスココアを飲みながら
そっとテーブルクロスを持ち上げると・・・

ここにも あった・・・

今まで回ってきた 場所には 
ロールスロイスのエンブレムのように
Rが二つ重なるサインが彫られていた
Rは 彼と彼女のイニシャル・・・

Kari Kari・・・ 
「私も 一緒に居させて・・・」

と・・・その時 
Rのイニシャルに影ができた
目の前に 彼がいた

彼は 私のイニシャルRを付け加えて
三つ重ねとなったRを見て やさしく 微笑んだ

いつもなら 
私を飽きさせないように
ジョークを交えて 話が止まらない彼が
今日は ただ 私を見つめた

やがて

「運転してくれるかい」

彼は そう言うと 
キーを私に渡して 店を出た

彼の車は
トヨタクラシック
生産台数100台の希少車
そういえば
映画レベッカでマキシムに言われて
「私」(Joan Fontaine)が運転した1935 Bentley 3½ ・・・
ロールスロイス傘下になって初めて造られたベントレーも
こんな 飛び出た丸め目のクラシックカーだった
(後で調べたら 全然違っていたけれど・・・)

やっぱり 怒ってるのかしら・・・
助手席の彼は 一言もしゃべらなかった

!!

そういえば・・・ 私ははっとした

彼は 絶対に人の運転する車には乗らなかった

ぼくたちの失敗/森田童子


そんな彼が 
私に運転を頼むなんて・・・
それも彼が大切にしている この車の運転を・・・

窓を開けて 走る車内に 
桜の花びらが飛び込んできた

「窓・・・ 閉めようか・・・」

・・・

彼は・・・
気持ちよさそうに すやすやと眠りについていた

彼女と死別して
一日3時間 それも浅い眠りだけ・・・
そう嘆いていた彼が・・・ 

ようやく 私は 
彼と彼女と一緒のステージに立つことができた

カーラジオから
森田童子の唄声が聴こえていた




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