ザ・フォーリナー：復讐者 ~ モンデオ 2000 ~
21,2021 18:23
まだ2月だというのに
庭のライラックが開花しそうな 暖かい土曜日の朝・・・
テイラー・スイフトのアップテンポミュージックのようなような娘が
カレン・カーペンターの
ナチュラルポップスの雰囲気を醸し出していることに
もっと 危険信号を感じるべきだった
「お父さん・・・私 ・・・ 結婚する・・・」
チューリップ柄のマキシ丈ワンピースで
春を先取りした娘は
こんがり焼けたトーストにバターを塗るように淡々と言った
遠い未来にやってくるはずの会話が
何の前触れもなく 私の鼓膜を揺らした
「そうか・・・」
反射神経のように出た言葉は 薄っぺらいものだった
娘が生まれた20年前
家内が選んだフォードモンデオは
今年も 元気に17号線を北上した 20年間の記憶を遡りながら・・・
安産祈願の初ドライブで
春風のように軽やかに走るモンデオに
家内は 子供が生まれたら自分も運転したいと言っていた
深夜に 産気づいた家内を病院に送るときも
一度も 赤信号につかまらず モンデオは風のように走った
しかし・・・
カノジョは出産直後に 逝ってしまった・・・
「あの子のこと よろしくね」 それだけ言い残して
桃の花が咲くころ
白い箱の中に入ったカノジョと一緒に
ふるさとの 日本海を見渡せる丘の墓地まで最後のドライブをした
それから毎年 春になると
私は娘を連れて 17号線を北上した
ドライブの間 私は 娘とモンデオに語り続けた
いつしか モンデオは カノジョそのものになっていった
しかし・・・20回目の今年は
私とモンデオの二人旅になった
「まだ二十歳じゃないか・・・
どうして そんなに急がなきゃいけないんだ！！」
カノジョの墓の向こう・・・
日本海に向かって 僕の心が吠えた
クァン・ノク・ミン（Jackie Chan）が感じたような悲しみに 押しつぶされそうだ
しかし・・・
私には 復讐する相手が いない・・・
「あの子のこと よろしくね・・・
大好きな 大好きな あなた・・・ 」
暖かい春風に乗って
20年前のカノジョの声が 私の身体を通り抜けた・・・
ロングドライブを終えて
自宅に戻ったモンデオは
その日を境に エンジンがかからなくなった・・・
冬に逆戻りしたかのように寒い朝になった
いや・・・ この寒さは 私の罪悪感なのだろう・・・
「やっぱり 言わなきゃよかった・・・」
そう思いながら
食パンをトーストしようとキッチンに向かった私は
ダイニングテーブルに置かれた 越後姫のパッケージに気づいた
父から お土産だった
その横には・・・
！！
春風に飛ばされないように
モンデオのフロントグリルから外された フォードのエンブレムで抑えられた手紙・・・
「おめでとう 祝福します 父と母より」
Butterfly Kisses Bob Carlisle
庭のライラックが開花しそうな 暖かい土曜日の朝・・・
テイラー・スイフトのアップテンポミュージックのようなような娘が
カレン・カーペンターの
ナチュラルポップスの雰囲気を醸し出していることに
もっと 危険信号を感じるべきだった
「お父さん・・・私 ・・・ 結婚する・・・」
チューリップ柄のマキシ丈ワンピースで
春を先取りした娘は
こんがり焼けたトーストにバターを塗るように淡々と言った
遠い未来にやってくるはずの会話が
何の前触れもなく 私の鼓膜を揺らした
「そうか・・・」
反射神経のように出た言葉は 薄っぺらいものだった
娘が生まれた20年前
家内が選んだフォードモンデオは
今年も 元気に17号線を北上した 20年間の記憶を遡りながら・・・
安産祈願の初ドライブで
春風のように軽やかに走るモンデオに
家内は 子供が生まれたら自分も運転したいと言っていた
深夜に 産気づいた家内を病院に送るときも
一度も 赤信号につかまらず モンデオは風のように走った
しかし・・・
カノジョは出産直後に 逝ってしまった・・・
「あの子のこと よろしくね」 それだけ言い残して
桃の花が咲くころ
白い箱の中に入ったカノジョと一緒に
ふるさとの 日本海を見渡せる丘の墓地まで最後のドライブをした
それから毎年 春になると
私は娘を連れて 17号線を北上した
ドライブの間 私は 娘とモンデオに語り続けた
いつしか モンデオは カノジョそのものになっていった
しかし・・・20回目の今年は
私とモンデオの二人旅になった
「まだ二十歳じゃないか・・・
どうして そんなに急がなきゃいけないんだ！！」
カノジョの墓の向こう・・・
日本海に向かって 僕の心が吠えた
クァン・ノク・ミン（Jackie Chan）が感じたような悲しみに 押しつぶされそうだ
しかし・・・
私には 復讐する相手が いない・・・
「あの子のこと よろしくね・・・
大好きな 大好きな あなた・・・ 」
暖かい春風に乗って
20年前のカノジョの声が 私の身体を通り抜けた・・・
ロングドライブを終えて
自宅に戻ったモンデオは
その日を境に エンジンがかからなくなった・・・
冬に逆戻りしたかのように寒い朝になった
いや・・・ この寒さは 私の罪悪感なのだろう・・・
「やっぱり 言わなきゃよかった・・・」
そう思いながら
食パンをトーストしようとキッチンに向かった私は
ダイニングテーブルに置かれた 越後姫のパッケージに気づいた
父から お土産だった
その横には・・・
！！
春風に飛ばされないように
モンデオのフロントグリルから外された フォードのエンブレムで抑えられた手紙・・・
「おめでとう 祝福します 父と母より」
Butterfly Kisses Bob Carlisle
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