2分の1の魔法 ~ シボレーシェビーバン 1978 ~
24,2021 23:30
兄さんが連れてきた5人目のカノジョは
僕の血液を
キレートレモンスパークリングに変えた
カノジョが瞬きをするたびに
Syuwaaaaaaaaaと
弾ける炭酸が 体中をめぐった
大学受験に備えて
都会の高校に進学した僕は
兄のマンションから 通学していた
同居させてもらう条件は ただ一つ 家事を行うこと
そんな僕に
カノジョは 料理を教えてくれた
炉の神 ヘスティアのように 包み込むような やさしさが
僕の心を カノジョの存在でいっぱいにした
兄さんが残業で 遅くなり
カノジョと僕だけになったある日
僕はカノジョに問いかけた
「兄さんと結婚するの」
「どうかしら・・・
でも・・・ もしそうなったら あなたのお姉さんね」
少しだけ意地悪そうな 笑顔でカノジョは言った
「兄さんとじゃ 幸せになれないよ・・・
これまっだって そうだったんだ! 僕のほうが 僕のほうが・・・」
カノジョは 僕の目の前に 顔を寄せてきた
そして 人差し指で そっと僕の唇を抑える・・・
ほんのり甘い
チェルシー ヨーグルトスカッチの香りが時を止めた

Gaoooooooooooooooooo Kyeeeeeeeeeeee! BANG!!
100年に一度の巨大台風が上陸したような爆音が
ささやかな魔法を打ち砕く
カスタイマイズされた1978式 シボレーシェビーバンのお帰りだ
「よお 待たせたな!!」
太陽の神 アポロンのように
いつも晴天の 兄が帰ってくると
カノジョは 僕には見せない潤んだ瞳に
満面の笑顔で 兄を迎えた
しかし・・・
僕の予言は的中した
梅の花の香りがする頃
カノジョは 一通の手紙を残して去っていった
手紙には 最後のレシピと共に こう書かれていた
~君を好きになり始めている 自分がいます
でも あなたを 本当に大切に思ってる彼を 私は裏切れない・・・
だから・・・ ごめんね ~
「おい! 出かけるぞ」
シェビーバンの車内は
いつもと変りなく ハードロックが流れている
フランク・ザッパの話をしてくる兄の表情も変わらない・・・
でも 僕の頭の中では 手紙の文字が渦を巻いていた
水平線が一望できる 丘の上で シェビーバンは停まった
エンジンが切られると 無音の世界が広がり
操り人形のように 無意識のうちに 僕の口が しゃべりだす・・・
「Yumiさんのこと・・・」
Faaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan!!
2月の透明な夕空は
シェビーバンの嗚咽(クラクション)を 優しく受け止めた
僕は 助手席から 運転席の兄さんに 抱きついた 涙がこぼれ始めている
シェビーバンの巨大なセンターコンソールの中にあるエンジンと
兄の両手が 僕を 暖かく包み込む
「さて・・・帰るか・・・
明日の朝食は 卵焼きが食いたいな」
兄が言った
「いいよ! それじゃあ スフレ風のふわふわオムレツでどう?」
それは カノジョが残した最後のレシピだった
Brandi Carlile - Carried Me with You
僕の血液を
キレートレモンスパークリングに変えた
カノジョが瞬きをするたびに
Syuwaaaaaaaaaと
弾ける炭酸が 体中をめぐった
大学受験に備えて
都会の高校に進学した僕は
兄のマンションから 通学していた
同居させてもらう条件は ただ一つ 家事を行うこと
そんな僕に
カノジョは 料理を教えてくれた
炉の神 ヘスティアのように 包み込むような やさしさが
僕の心を カノジョの存在でいっぱいにした
兄さんが残業で 遅くなり
カノジョと僕だけになったある日
僕はカノジョに問いかけた
「兄さんと結婚するの」
「どうかしら・・・
でも・・・ もしそうなったら あなたのお姉さんね」
少しだけ意地悪そうな 笑顔でカノジョは言った
「兄さんとじゃ 幸せになれないよ・・・
これまっだって そうだったんだ! 僕のほうが 僕のほうが・・・」
カノジョは 僕の目の前に 顔を寄せてきた
そして 人差し指で そっと僕の唇を抑える・・・
ほんのり甘い
チェルシー ヨーグルトスカッチの香りが時を止めた

Gaoooooooooooooooooo Kyeeeeeeeeeeee! BANG!!
100年に一度の巨大台風が上陸したような爆音が
ささやかな魔法を打ち砕く
カスタイマイズされた1978式 シボレーシェビーバンのお帰りだ
「よお 待たせたな!!」
太陽の神 アポロンのように
いつも晴天の 兄が帰ってくると
カノジョは 僕には見せない潤んだ瞳に
満面の笑顔で 兄を迎えた
しかし・・・
僕の予言は的中した
梅の花の香りがする頃
カノジョは 一通の手紙を残して去っていった
手紙には 最後のレシピと共に こう書かれていた
~君を好きになり始めている 自分がいます
でも あなたを 本当に大切に思ってる彼を 私は裏切れない・・・
だから・・・ ごめんね ~
「おい! 出かけるぞ」
シェビーバンの車内は
いつもと変りなく ハードロックが流れている
フランク・ザッパの話をしてくる兄の表情も変わらない・・・
でも 僕の頭の中では 手紙の文字が渦を巻いていた
水平線が一望できる 丘の上で シェビーバンは停まった
エンジンが切られると 無音の世界が広がり
操り人形のように 無意識のうちに 僕の口が しゃべりだす・・・
「Yumiさんのこと・・・」
Faaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan!!
2月の透明な夕空は
シェビーバンの嗚咽(クラクション)を 優しく受け止めた
僕は 助手席から 運転席の兄さんに 抱きついた 涙がこぼれ始めている
シェビーバンの巨大なセンターコンソールの中にあるエンジンと
兄の両手が 僕を 暖かく包み込む
「さて・・・帰るか・・・
明日の朝食は 卵焼きが食いたいな」
兄が言った
「いいよ! それじゃあ スフレ風のふわふわオムレツでどう?」
それは カノジョが残した最後のレシピだった
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