雨男 ~ Lancia Delta Integrale ~ レインマン ~
03,2012 23:59
「えっ これ以上先には進めないだって!」
若い駅員が申し訳なさそうに答える
「はい 昨晩から続くこの大雨で この先の線路が土砂崩れにあって・・・」
「どうしても 今日中に行かなきゃいけんないんだ!」
ポールスミスのネクタイをウィンザーノットで締める男が必至になって叫んでいる
「そう言われても この駅にはタクシーも・・・」
男は 糸の切れたマリオネットのように がっくりと膝をついた
信号待ちで そんな状況を見ていた僕は インテグラーレに問いかけた
「あの人を乗せてやるかい?」
Whoooon
軽くエンジンが呼応した
僕は 絶望の淵に立っている 男に声をかけた
「やぁ君 乗ってくかい?」

昨日から降り続いている雨は 大型連休にはそぐわない台風並みの低気圧が原因だ
「この天気じゃ 山に来るのも 海パンが必要だよ
それなのに 君はダンスホールにでも行くような格好だね」
僕は冗談を交えて彼に言った
「今日は 彼女のお父さんの命日なんです」
助手席で濡れた頭を拭いている男は 几帳面な話し方だった
「そして 彼女にプロポーズする日でもあります
彼女を男手一つで育てたお父さんの墓前で
彼女を大切にすると約束しなけばいけません
だから 今日中に 行かなくてはいけないんです」
「よし! 君の願いを兼ねてやろう
その代り 荒れた道を通ることになるよ!」
Whoooooooooooon!
2Lターボが吠えた
男は 左右に振られる体を何とか維持しながら
内ポケットからスマートフォンを取り出した
そこには トミーフィルフィガーの
FRANCIS CHECK SHIRTを着たカジュアルカールの女性がいた
「その娘が未来のお嫁さんかい?」
僕が尋ねると彼はいった
「えぇ でも彼女を前にすると うまく話ができないんです・・・」
BuwaaaaaaaaaaN
強風と共に 叩きつけるよな雨 普通の車なら音を上げるところだが
僕とインテグラーレのチームにはかなわない
大雨の影響で 所々に土砂の堆積や大きな水溜りがあるが
一気に走り去る
助手席の男は ハラハラしているようだが・・・
「カノジョ(インテグラーレ)はね 僕の親友であり 伴侶でもある
だから ハンドルを介して カノジョ(インテグラーレ)の
思いが伝わってくる
因みに 君のことを乗せてあげようと言ったのは こいつなんだ」
僕はインテグラーレのハンドルを ポンと叩いて言った
「ついでに こいつが君にアドバイスしたいとさ!
”プロポーズは しっかり相手の目を見て言うの
どもったり 噛んだりしたってかまわない
君の心を そのままカノジョにぶつけるのよ!”だってさ」
Zureeeeeeen Kerriririri
急カーブにタイヤが唸る
想像以上に後輪が滑り 車は一回転した
「大丈夫だったかい」
少し心配になって彼に問う
「問題ないです あなたを信用しているから・・・」
彼は言った
2時間前に知り合ったばかりの見知らぬ男をここまで信用するか!
僕とカノジョ(インテグラーレ)は感動した
峠を越えると 雨雲が切れて空は明るくなってきた
「あそこです!」
彼が言った
オレンジ色の屋根が輝く家の庭先に女性が見えた
インテグラーレは彼女に向かってウィンクライトを照らした
「玲:Rei!」
カノジョが叫んだ
男は 車を降りると 一度だけ僕に頭を下げ
彼女のところに走った
僕は ゆっくりインテグラーレをUターンさせた
バックミラーにはカノジョと抱き合う男が見えた
「Rei・・・レインマンか・・・大雨になった理由がわかったよ」
すっかり 晴れた空に うっすっらと現れた虹は
インテグラーレのフロントガラスに写りこんでいた
若い駅員が申し訳なさそうに答える
「はい 昨晩から続くこの大雨で この先の線路が土砂崩れにあって・・・」
「どうしても 今日中に行かなきゃいけんないんだ!」
ポールスミスのネクタイをウィンザーノットで締める男が必至になって叫んでいる
「そう言われても この駅にはタクシーも・・・」
男は 糸の切れたマリオネットのように がっくりと膝をついた
信号待ちで そんな状況を見ていた僕は インテグラーレに問いかけた
「あの人を乗せてやるかい?」
Whoooon
軽くエンジンが呼応した
僕は 絶望の淵に立っている 男に声をかけた
「やぁ君 乗ってくかい?」

昨日から降り続いている雨は 大型連休にはそぐわない台風並みの低気圧が原因だ
「この天気じゃ 山に来るのも 海パンが必要だよ
それなのに 君はダンスホールにでも行くような格好だね」
僕は冗談を交えて彼に言った
「今日は 彼女のお父さんの命日なんです」
助手席で濡れた頭を拭いている男は 几帳面な話し方だった
「そして 彼女にプロポーズする日でもあります
彼女を男手一つで育てたお父さんの墓前で
彼女を大切にすると約束しなけばいけません
だから 今日中に 行かなくてはいけないんです」
「よし! 君の願いを兼ねてやろう
その代り 荒れた道を通ることになるよ!」
Whoooooooooooon!
2Lターボが吠えた
男は 左右に振られる体を何とか維持しながら
内ポケットからスマートフォンを取り出した
そこには トミーフィルフィガーの
FRANCIS CHECK SHIRTを着たカジュアルカールの女性がいた
「その娘が未来のお嫁さんかい?」
僕が尋ねると彼はいった
「えぇ でも彼女を前にすると うまく話ができないんです・・・」
BuwaaaaaaaaaaN
強風と共に 叩きつけるよな雨 普通の車なら音を上げるところだが
僕とインテグラーレのチームにはかなわない
大雨の影響で 所々に土砂の堆積や大きな水溜りがあるが
一気に走り去る
助手席の男は ハラハラしているようだが・・・
「カノジョ(インテグラーレ)はね 僕の親友であり 伴侶でもある
だから ハンドルを介して カノジョ(インテグラーレ)の
思いが伝わってくる
因みに 君のことを乗せてあげようと言ったのは こいつなんだ」
僕はインテグラーレのハンドルを ポンと叩いて言った
「ついでに こいつが君にアドバイスしたいとさ!
”プロポーズは しっかり相手の目を見て言うの
どもったり 噛んだりしたってかまわない
君の心を そのままカノジョにぶつけるのよ!”だってさ」
Zureeeeeeen Kerriririri
急カーブにタイヤが唸る
想像以上に後輪が滑り 車は一回転した
「大丈夫だったかい」
少し心配になって彼に問う
「問題ないです あなたを信用しているから・・・」
彼は言った
2時間前に知り合ったばかりの見知らぬ男をここまで信用するか!
僕とカノジョ(インテグラーレ)は感動した
峠を越えると 雨雲が切れて空は明るくなってきた
「あそこです!」
彼が言った
オレンジ色の屋根が輝く家の庭先に女性が見えた
インテグラーレは彼女に向かってウィンクライトを照らした
「玲:Rei!」
カノジョが叫んだ
男は 車を降りると 一度だけ僕に頭を下げ
彼女のところに走った
僕は ゆっくりインテグラーレをUターンさせた
バックミラーにはカノジョと抱き合う男が見えた
「Rei・・・レインマンか・・・大雨になった理由がわかったよ」
すっかり 晴れた空に うっすっらと現れた虹は
インテグラーレのフロントガラスに写りこんでいた
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