バンブルビー ~ ビートル Type1 1967 ~
24,2019 22:38
人は 頼られるからこそ 人として生きていられる
誰からも 頼られなくなったとき
人は 生きていられない
行き先を遮るように広がっていた真っ白な吐息が
桜の開花ニュースが 気になるころには
まったく 見えなくなっていることに 誰も気が付かない
そんな風に 人でなくなった者たちは
昨日までいた 人の視界に 映ることさえできなくなる
これは 特別なことではなく
人が脈略と積み重ねてきた理
ただ その時が来るまで 誰も気が付かない理
定年という看板が目の前にぶら下がっていることに
気付いた私は
その看板の裏面に
その理を見つけた
生活費を稼ぐだけのマシーンだった私が
その能力を失うとき
家内も 娘たちにも 私の声は届かなくなるだろう
そして 私は 自宅にこびりつくカビのような存在になっていく
年老いた頭脳は 刷新されない旧態情報と
ところどころ クロスワードになった記憶装置であり
年配者の助言を敬うような者は 誰一人いない
そう・・・
家族にも忘れ去られ 私はひとでなしになるのだ
人であることのレベルゲージが5%を切ろうとしたとき
1967年式ビートルが主演の映画に出会った
バンブルビー・・・
ファンタジーアクション映画は私の趣味ではなかった・・・
ただ・・・
私と同じ年の1967年式ビートルは祖父の愛車だった
祖父は 赤ん坊の私を抱いた祖母を助手席に乗せ ドライブを楽しんだ
祖母が亡くなった後も
祖父は 私を助手席に乗せた
サンシェイドには 祖母の写真が飾ってあった
しかし・・・
僕が高校に進学した年 祖父は あっけなく死んでしまった
ビートルは 納屋の片隅で祖父を見ていた
あの日のヘッドライトが・・・バンブルビーの瞳と重なった
都会から 電車で3時間・・・
村自体が廃村となった ふるさと
両親も早世したため
二度と戻ってくることはない そう思っていた
そんな セピア色の風景の中・・・
朽ち果てた納屋の奥の奥に
ほこりをかぶった バンブルビーがいた

「車を押すから ハンドルを握っててくれ・・・」
運転席に 声をかける
「オッケー!!」
今年 大学生になる娘が
マルハナバチのように 弾んだ声で答えた
助手席には
整備工具と 洗車セットが置かれている
祖父のビートルが
私を 人でいられることの理になった
誰からも 頼られなくなったとき
人は 生きていられない
行き先を遮るように広がっていた真っ白な吐息が
桜の開花ニュースが 気になるころには
まったく 見えなくなっていることに 誰も気が付かない
そんな風に 人でなくなった者たちは
昨日までいた 人の視界に 映ることさえできなくなる
これは 特別なことではなく
人が脈略と積み重ねてきた理
ただ その時が来るまで 誰も気が付かない理
定年という看板が目の前にぶら下がっていることに
気付いた私は
その看板の裏面に
その理を見つけた
生活費を稼ぐだけのマシーンだった私が
その能力を失うとき
家内も 娘たちにも 私の声は届かなくなるだろう
そして 私は 自宅にこびりつくカビのような存在になっていく
年老いた頭脳は 刷新されない旧態情報と
ところどころ クロスワードになった記憶装置であり
年配者の助言を敬うような者は 誰一人いない
そう・・・
家族にも忘れ去られ 私はひとでなしになるのだ
人であることのレベルゲージが5%を切ろうとしたとき
1967年式ビートルが主演の映画に出会った
バンブルビー・・・
ファンタジーアクション映画は私の趣味ではなかった・・・
ただ・・・
私と同じ年の1967年式ビートルは祖父の愛車だった
祖父は 赤ん坊の私を抱いた祖母を助手席に乗せ ドライブを楽しんだ
祖母が亡くなった後も
祖父は 私を助手席に乗せた
サンシェイドには 祖母の写真が飾ってあった
しかし・・・
僕が高校に進学した年 祖父は あっけなく死んでしまった
ビートルは 納屋の片隅で祖父を見ていた
あの日のヘッドライトが・・・バンブルビーの瞳と重なった
都会から 電車で3時間・・・
村自体が廃村となった ふるさと
両親も早世したため
二度と戻ってくることはない そう思っていた
そんな セピア色の風景の中・・・
朽ち果てた納屋の奥の奥に
ほこりをかぶった バンブルビーがいた

「車を押すから ハンドルを握っててくれ・・・」
運転席に 声をかける
「オッケー!!」
今年 大学生になる娘が
マルハナバチのように 弾んだ声で答えた
助手席には
整備工具と 洗車セットが置かれている
祖父のビートルが
私を 人でいられることの理になった
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