ポビーとディンガン ~ 260RS オーテックバージョン 1997 ~
24,2019 23:43
都会の会社に就職して
一年が過ぎようとしている
しかし 仕事が終われば 寄り道もせず
故郷を思い出させる
北向きの 凍りついたワンルームアパートに逃げ帰るだけの私は
時という概念から はじき出されたように
毎日 同じ生活を リフレインしていた
両親を早くに亡くした私を 大学に進学させ
成人するまで養ってくれたのは
12歳年上の兄だった
そのころの私は
人並みに 時の中で生きて 青春を謳歌していた
それも 兄がいてくれたから・・・
挫けそうな
ビックウェーブが 押し寄せてきても・・・
「いくぞ!!」
兄は 私をドライブに誘った
BCNR33スカイラインGT-Rが
兄の繊細なドライビングと RB26DETTエンジンの圧倒的なパワーで
山道を切り裂くように走り抜ける
すると 私を飲み込もうとしていた悩みのビックウェーブは
圧倒的な スピードに負けて
山道の中で消えていった
四点ベルトの助手席は 母に抱かれているようで
帰り道・・・
いつも 私は心地よく眠ってしまった
家に到着すると
兄は そんな私の頭をかきむしる様に 豪快に撫でて起こした
がさつだったが 愛情のこもった掌だった
そんな 兄も 私の社会人の姿を見る前に
あっけなく 向こうの世界に逝ってしまった
がん・・・だった
駐車場に残された主を亡くしたブルーのGT-Rが
真っ白に見えた・・・
だから・・・
私は このアパートの駐車場に
ブルーのBCNR33スカイラインGT-Rが停まっていたという理由だけで
この部屋を借りた
BCNR33スカイラインGT-Rは
毎日 22:00に出かけて 24:00に帰ってきた
RB26DETTのエンジン音を聞くたびに
ポビーとディンガンが見えたケリーアン(Sapphire Boyce)のように
兄が見えた
そんなある日・・・
初めての残業を経験した私は
GT-Rの現実の持ち主に遭遇してしまった・・・
兄が消えてしまいそうで
現実世界の持ち主には会いたくない・・・
そう思っていたが・・・私の嫌な予感は的中した
運転席に乗り込もうとしていた男は
兄の面影を全く感じられない
クロムハーツのチェーンを手首に巻き付けた 金髪の若者だった
思わず 立ち止まってしまった私に気づいたその男は言った
「ねぇ 君ぃ・・・ 一緒にドライブしなーい」
首筋が ゾクッりとするような粘着質な声だった・・・
何も聞こえなかった素振りで 自宅に向かおうとする私に
「無視するなよ・・おいっ!」
チンピラのような口調になった男は
逃げようとする私に飛びついて 右手を掴んだ
いやっ・・・
反射的に 小さな悲鳴を上げた そのとき・・・
Booooonnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn!
眩しいハイビーム共に RB26DETTのエンジン音が響いた
えっ・・・
GT-Rがもう一台あったの・・・
「やめとけ」
ハイビームの向こうから ”お兄ちゃん”が来てくれた・・・
「ドラレコで全部取ってるぞ!」
その一言で・・・
GT-Rの男は 私の手を放して逃げていった
ライトに目が慣れてくると
エンジン音はステーションワゴンのボディから響いているのがわかった

そして・・・
お兄ちゃんだと思った残像は
兄の雰囲気をまとった 男性になった
「あっ ありがとうございます」
涙をこぼしながら ぺこりと頭を下げた私にの頭を
彼は豪快に撫でた・・・ 兄のように・・・
BCNR33スカイラインGT-Rと同じ
RB26DETTを載せたステージア260RSの助手席が
私の指定席になったとき
私の人生は 再び動き始めた
一年が過ぎようとしている
しかし 仕事が終われば 寄り道もせず
故郷を思い出させる
北向きの 凍りついたワンルームアパートに逃げ帰るだけの私は
時という概念から はじき出されたように
毎日 同じ生活を リフレインしていた
両親を早くに亡くした私を 大学に進学させ
成人するまで養ってくれたのは
12歳年上の兄だった
そのころの私は
人並みに 時の中で生きて 青春を謳歌していた
それも 兄がいてくれたから・・・
挫けそうな
ビックウェーブが 押し寄せてきても・・・
「いくぞ!!」
兄は 私をドライブに誘った
BCNR33スカイラインGT-Rが
兄の繊細なドライビングと RB26DETTエンジンの圧倒的なパワーで
山道を切り裂くように走り抜ける
すると 私を飲み込もうとしていた悩みのビックウェーブは
圧倒的な スピードに負けて
山道の中で消えていった
四点ベルトの助手席は 母に抱かれているようで
帰り道・・・
いつも 私は心地よく眠ってしまった
家に到着すると
兄は そんな私の頭をかきむしる様に 豪快に撫でて起こした
がさつだったが 愛情のこもった掌だった
そんな 兄も 私の社会人の姿を見る前に
あっけなく 向こうの世界に逝ってしまった
がん・・・だった
駐車場に残された主を亡くしたブルーのGT-Rが
真っ白に見えた・・・
だから・・・
私は このアパートの駐車場に
ブルーのBCNR33スカイラインGT-Rが停まっていたという理由だけで
この部屋を借りた
BCNR33スカイラインGT-Rは
毎日 22:00に出かけて 24:00に帰ってきた
RB26DETTのエンジン音を聞くたびに
ポビーとディンガンが見えたケリーアン(Sapphire Boyce)のように
兄が見えた
そんなある日・・・
初めての残業を経験した私は
GT-Rの現実の持ち主に遭遇してしまった・・・
兄が消えてしまいそうで
現実世界の持ち主には会いたくない・・・
そう思っていたが・・・私の嫌な予感は的中した
運転席に乗り込もうとしていた男は
兄の面影を全く感じられない
クロムハーツのチェーンを手首に巻き付けた 金髪の若者だった
思わず 立ち止まってしまった私に気づいたその男は言った
「ねぇ 君ぃ・・・ 一緒にドライブしなーい」
首筋が ゾクッりとするような粘着質な声だった・・・
何も聞こえなかった素振りで 自宅に向かおうとする私に
「無視するなよ・・おいっ!」
チンピラのような口調になった男は
逃げようとする私に飛びついて 右手を掴んだ
いやっ・・・
反射的に 小さな悲鳴を上げた そのとき・・・
Booooonnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnnn!
眩しいハイビーム共に RB26DETTのエンジン音が響いた
えっ・・・
GT-Rがもう一台あったの・・・
「やめとけ」
ハイビームの向こうから ”お兄ちゃん”が来てくれた・・・
「ドラレコで全部取ってるぞ!」
その一言で・・・
GT-Rの男は 私の手を放して逃げていった
ライトに目が慣れてくると
エンジン音はステーションワゴンのボディから響いているのがわかった

そして・・・
お兄ちゃんだと思った残像は
兄の雰囲気をまとった 男性になった
「あっ ありがとうございます」
涙をこぼしながら ぺこりと頭を下げた私にの頭を
彼は豪快に撫でた・・・ 兄のように・・・
BCNR33スカイラインGT-Rと同じ
RB26DETTを載せたステージア260RSの助手席が
私の指定席になったとき
私の人生は 再び動き始めた
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