ラプラスの魔女 ~ 230GE 1989 ~
30,2018 23:59
1989年式 ゲレンデワーゲン230GEは
無骨な骨格の中の丸目が 愛おしい
30年前のボディも 色褪せることなく
真冬の冷たい太陽に照らされると
虹色のオーラを放出して街を走り抜ける
さすが メルセデス
そんな気持ち良いドライブをしていると
やっぱり今日も 見えてしまった・・・
信号待ちで停車した僕は
歩道で 同じく信号待ちをしている
おそろいのダウンを纏った品の良い 初老の夫婦に声をかけた

「お父さん・・・
もう少しだけ左後ろに下がったほうがいいですよ!!」
オートウインドウを開けながら 僕は言った
いぶかしげに僕を見た 老紳士だったが
突然 ベンツに乗った男から 話しかけられ
何をされるかわからないと 思ったのだろうか
とりあえず素直に 言うことをきいて 3mぐらい後方に下がった
同時に 230GEの後部に車がいないことを確認した僕も
約3mほど 停止線から後ずさりした
刹那・・・
Kyeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
Gasyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan
斜め右から交差点に進入してきたBMWが カーブを曲がり切れずに
230GEの手前にある歩行者用信号機に激突した
老夫婦も僕も無傷だったが
仲良く口をパクパクしながら 尻もちをついた二人を残して 僕は先を急いだ
目の前にあった交番から お巡りさんがやってくるビジョンが見えていたから・・・
そう・・・
僕には なんとなく 少し先の出来事が見える
ラプラスの魔女のように
勉強が好きなわけでも 天才的な頭脳があるわけでもない
ただ なんとなく
頭の中にあるテレビに映った現象が ほんの少しあとで 現実になる
それは 雨の日に 傘を差しながらビルとビルの間を通り抜けようとするとき
誰もが 傘を飛ばされない様に
事前に しっかりと傘を握りしめるべきだと思うようなものだ
そんな感覚エリアが 普通の人より広いだけのこと
230GEに えくぼ一つ つけられていないのも
四流大学出身の僕が
大手企業に就職することができたのも この感覚があったからだ
でも・・・
人生は 甘くない・・・
同僚を蹴落とすことが仕事のような職場環境の中で
僕は 社員の顔を直視できなかった
エゴが 紫色のあざのように視覚化され
仲間が ゾンビのように見えてしまう
そんな 環境から逃げ出した僕は
取引先の一つだった自動車整備工場に再就職した
採算度外視で ぎりぎりの経営をする会社だったが
社長をはじめとした社員の誰もが輝いていた
自分たちの仕事に誇りを持った仲間たち
そんな仲間たちに囲まれた空間が 僕には気持ちよかった
そこで僕はカノジョと出会った
「やぁ お待たせ」
230GEが 駅前のロータリーに到着したのは
約束の5分前だった
と こ ろ が・・・
まっ赤なニット帽を被ったカノジョは
ラプラスの魔女・・・羽原 円華(広瀬 すず)のように 厳しいまなざしで 僕を射貫く
どうやら・・・怒っているようだ・・・
僕の能力が通じないものがある・・・
それは カノジョの行動だ・・・
次にカノジョが 起こす行動が読めない・・・
それは 僕にとって新鮮だった
「いったい どれだけ待たせればいいの!!」
助手席に入るやいなや カノジョは爆発した!!
えっ・・・
約束の時間より 5分も前に到着してるのに・・・
唖然とした僕だったが・・・
カノジョの勢いで 思わず ごめん と謝る
「もう! こんなにいい天気なんだよ!!
ふつう 約束の時間より 早く来るもんでしょ!!」
そっ・・・そういうもんかな・・・
木枯らしで 赤くなった頬を膨らませる
助手席のカノジョを 横目で見てると 自然に笑いがこみ上げてきた
と・・・そのとき
Pusun・・・
230GEのエンジンが 突然止まった・・・
少しだけ先の出来事が見える僕にも・・・
予測できないものがある
カノジョ と 230GEのご機嫌だ
平成最後の12月31日
僕は 230GEの運転席で
カノジョの手作りのクラブサンドイッチをほおばていた
ロードサポートのトラックに積まれた230GEの車窓からは
普段 防波柵で見ることができない太平洋が 水平線まではっきりと見えた
そして・・・
僕と カノジョと 230GEの 2019年のストーリーも見えたような気がした
Echosmith - Future Me
無骨な骨格の中の丸目が 愛おしい
30年前のボディも 色褪せることなく
真冬の冷たい太陽に照らされると
虹色のオーラを放出して街を走り抜ける
さすが メルセデス
そんな気持ち良いドライブをしていると
やっぱり今日も 見えてしまった・・・
信号待ちで停車した僕は
歩道で 同じく信号待ちをしている
おそろいのダウンを纏った品の良い 初老の夫婦に声をかけた

「お父さん・・・
もう少しだけ左後ろに下がったほうがいいですよ!!」
オートウインドウを開けながら 僕は言った
いぶかしげに僕を見た 老紳士だったが
突然 ベンツに乗った男から 話しかけられ
何をされるかわからないと 思ったのだろうか
とりあえず素直に 言うことをきいて 3mぐらい後方に下がった
同時に 230GEの後部に車がいないことを確認した僕も
約3mほど 停止線から後ずさりした
刹那・・・
Kyeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee
Gasyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan
斜め右から交差点に進入してきたBMWが カーブを曲がり切れずに
230GEの手前にある歩行者用信号機に激突した
老夫婦も僕も無傷だったが
仲良く口をパクパクしながら 尻もちをついた二人を残して 僕は先を急いだ
目の前にあった交番から お巡りさんがやってくるビジョンが見えていたから・・・
そう・・・
僕には なんとなく 少し先の出来事が見える
ラプラスの魔女のように
勉強が好きなわけでも 天才的な頭脳があるわけでもない
ただ なんとなく
頭の中にあるテレビに映った現象が ほんの少しあとで 現実になる
それは 雨の日に 傘を差しながらビルとビルの間を通り抜けようとするとき
誰もが 傘を飛ばされない様に
事前に しっかりと傘を握りしめるべきだと思うようなものだ
そんな感覚エリアが 普通の人より広いだけのこと
230GEに えくぼ一つ つけられていないのも
四流大学出身の僕が
大手企業に就職することができたのも この感覚があったからだ
でも・・・
人生は 甘くない・・・
同僚を蹴落とすことが仕事のような職場環境の中で
僕は 社員の顔を直視できなかった
エゴが 紫色のあざのように視覚化され
仲間が ゾンビのように見えてしまう
そんな 環境から逃げ出した僕は
取引先の一つだった自動車整備工場に再就職した
採算度外視で ぎりぎりの経営をする会社だったが
社長をはじめとした社員の誰もが輝いていた
自分たちの仕事に誇りを持った仲間たち
そんな仲間たちに囲まれた空間が 僕には気持ちよかった
そこで僕はカノジョと出会った
「やぁ お待たせ」
230GEが 駅前のロータリーに到着したのは
約束の5分前だった
と こ ろ が・・・
まっ赤なニット帽を被ったカノジョは
ラプラスの魔女・・・羽原 円華(広瀬 すず)のように 厳しいまなざしで 僕を射貫く
どうやら・・・怒っているようだ・・・
僕の能力が通じないものがある・・・
それは カノジョの行動だ・・・
次にカノジョが 起こす行動が読めない・・・
それは 僕にとって新鮮だった
「いったい どれだけ待たせればいいの!!」
助手席に入るやいなや カノジョは爆発した!!
えっ・・・
約束の時間より 5分も前に到着してるのに・・・
唖然とした僕だったが・・・
カノジョの勢いで 思わず ごめん と謝る
「もう! こんなにいい天気なんだよ!!
ふつう 約束の時間より 早く来るもんでしょ!!」
そっ・・・そういうもんかな・・・
木枯らしで 赤くなった頬を膨らませる
助手席のカノジョを 横目で見てると 自然に笑いがこみ上げてきた
と・・・そのとき
Pusun・・・
230GEのエンジンが 突然止まった・・・
少しだけ先の出来事が見える僕にも・・・
予測できないものがある
カノジョ と 230GEのご機嫌だ
平成最後の12月31日
僕は 230GEの運転席で
カノジョの手作りのクラブサンドイッチをほおばていた
ロードサポートのトラックに積まれた230GEの車窓からは
普段 防波柵で見ることができない太平洋が 水平線まではっきりと見えた
そして・・・
僕と カノジョと 230GEの 2019年のストーリーも見えたような気がした
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