メイズ・ランナー ~ 206CC ~
01,2018 18:16
206CCは ルーフトップを開けたまま
駐車場に 停まった
「Cafe 空と海」
雲一つない空の色が 海に映りこむに
圧倒的な ブルーの世界に
うねるような岬の緑 現代アートのようなパステルカラーの世界が広がる

その中で 唯一 焦げ茶と白で統一された
カフェの存在は 裂けた空間から現れた 別次元の店のように思えた
そして 私も モノトーンの世界に飲み込まれる・・・
海が見えるカウンターに座る
店の中から見える海は モノトーンだった
「カフェモカを2つ・・・」
モノクロの店内には やはり色をなくした マスターが一人だけ・・・
外に停まっている車を見ながら怪訝そうに訊ねる
「お持ち帰りですか・・・」
いえ・・・
ダークサイドの住人のような私を見ると
マスターは それ以上何も訊かずに カップの用意を始めた
ひと月前・・・病床の父に呼ばれた
「お前には悪いことをしたのかもしれない」
そう言うと父は 15通の手紙を私に差し出した
彼からの手紙だった
20年前・・・学生だった私は
美術の先生だった 彼と駆け落ちを決行した
朝靄がかかる
迷路のような路地を 人目を避けながら 駆け抜け 駅に向かった
無事 巨大な迷路を踏破した私たちは
朝日とともに
輝く未来をイメージしながら ホームで始発を待った
メイズランナー 第一章のように・・・
しかし・・・
電車が来る前に 父に見つかった
私たちは 引き裂かれた
メイズランナー 第二章・・・
一人・・・ 街を出た彼から 連絡はなかった
一瞬の大輪・・・ 真夏の夜の夢・・・ 花火のような関係だった・・・
そう言い聞かせて生きてきた・・・
しかし・・・ 彼は 私を待っていた
父は 隠し事を打ち明けた安堵からか・・・笑顔で逝った
私の気持ちなど 最後まで理解できずに・・・
彼と別れて 20年も経ってしまったが
私は もう一度 自分の人生を見つける迷路・・・
彼のところへ向かうことにした
15通の手紙を頼りに・・・
カフェモカ2つ・・・
それは、二人で待ち合わせをしたとき
いつも 先に到着する私が注文していたメニュー
遅れてくる彼は 冷めたカフェモカが好きだった
テーブルに置かれたまま
手の付けられていないカップを眺めながら
私は マスターに尋ねた
「『希望の手』までは あと何キロぐらいありますか・・・」
「あ~ あなたはあそこに行くのですか・・・
まだ あの場所を訊ねてくる人が いるとは思わなかった・・・」
マスターは 遠く続く モノトーンの海岸線を見ながら言った
「それにしても よくご存知でしたね
あの岩の彫刻・・・『希望の手』は 縁結びのパワースポットと言われてました
でもね・・・ このカフェに立ち寄らないと その効果はないと 囁かれていました
作者の彼が オブジェを作っていた2年の間・・・
毎日 空と海を眺めていた この場所にね・・・
オブジェが完成したころは 多くの人が ここに来ていました でも・・・
ブームは あっという間に 去ってしまった
今では ここに立ち寄ることを知る人はいません
いや・・・あのオブジェがあることすらも 忘れ去られている
今では同じ”きぼう”でも 『希忘の手』になってしまいました」
希忘の手・・・
「迷路のゴールは ハッピーエンドとは限らないよ
それでも あなたは 行くのですね」
マスターの声が 頭の中で響いた
熱ッ・・・!!
206CCの 焼けたシートが 体を焦がす と同時に・・・
蜃気楼のように ぼやけて揺らぎ始めていた
私の心に喝が入った!
CC(クーペ・ガブリオレ)には もう一つの意味がある・・・
”Coup de Coeur” ハートの一撃が 私の背中を押した
迷路の終焉まで あと10キロ・・・
岬の突端に立つ オブジェ・・・
それは彼らしい 自然の石を荒々しく削った作品だった
大地から空に向けて 突き出すように生まれた右手首と
空から降りてきたような右手首は しっかりと握りしめられ 一つの塊となり
これからも ずっと離れることはないだろう
最後の手紙に書かれた一文を思い出した・・・
「君と手をつないで 逃げた あの日 あのぬくもりを忘れない」
私は 15枚の手紙と
その返事の手紙 30通を紙飛行機にして
海に向けて投げた
そこに彼がいる気がした
メイズランナー 第三章・・・最期の迷宮のように
駐車場に 停まった
「Cafe 空と海」
雲一つない空の色が 海に映りこむに
圧倒的な ブルーの世界に
うねるような岬の緑 現代アートのようなパステルカラーの世界が広がる

その中で 唯一 焦げ茶と白で統一された
カフェの存在は 裂けた空間から現れた 別次元の店のように思えた
そして 私も モノトーンの世界に飲み込まれる・・・
海が見えるカウンターに座る
店の中から見える海は モノトーンだった
「カフェモカを2つ・・・」
モノクロの店内には やはり色をなくした マスターが一人だけ・・・
外に停まっている車を見ながら怪訝そうに訊ねる
「お持ち帰りですか・・・」
いえ・・・
ダークサイドの住人のような私を見ると
マスターは それ以上何も訊かずに カップの用意を始めた
ひと月前・・・病床の父に呼ばれた
「お前には悪いことをしたのかもしれない」
そう言うと父は 15通の手紙を私に差し出した
彼からの手紙だった
20年前・・・学生だった私は
美術の先生だった 彼と駆け落ちを決行した
朝靄がかかる
迷路のような路地を 人目を避けながら 駆け抜け 駅に向かった
無事 巨大な迷路を踏破した私たちは
朝日とともに
輝く未来をイメージしながら ホームで始発を待った
メイズランナー 第一章のように・・・
しかし・・・
電車が来る前に 父に見つかった
私たちは 引き裂かれた
メイズランナー 第二章・・・
一人・・・ 街を出た彼から 連絡はなかった
一瞬の大輪・・・ 真夏の夜の夢・・・ 花火のような関係だった・・・
そう言い聞かせて生きてきた・・・
しかし・・・ 彼は 私を待っていた
父は 隠し事を打ち明けた安堵からか・・・笑顔で逝った
私の気持ちなど 最後まで理解できずに・・・
彼と別れて 20年も経ってしまったが
私は もう一度 自分の人生を見つける迷路・・・
彼のところへ向かうことにした
15通の手紙を頼りに・・・
カフェモカ2つ・・・
それは、二人で待ち合わせをしたとき
いつも 先に到着する私が注文していたメニュー
遅れてくる彼は 冷めたカフェモカが好きだった
テーブルに置かれたまま
手の付けられていないカップを眺めながら
私は マスターに尋ねた
「『希望の手』までは あと何キロぐらいありますか・・・」
「あ~ あなたはあそこに行くのですか・・・
まだ あの場所を訊ねてくる人が いるとは思わなかった・・・」
マスターは 遠く続く モノトーンの海岸線を見ながら言った
「それにしても よくご存知でしたね
あの岩の彫刻・・・『希望の手』は 縁結びのパワースポットと言われてました
でもね・・・ このカフェに立ち寄らないと その効果はないと 囁かれていました
作者の彼が オブジェを作っていた2年の間・・・
毎日 空と海を眺めていた この場所にね・・・
オブジェが完成したころは 多くの人が ここに来ていました でも・・・
ブームは あっという間に 去ってしまった
今では ここに立ち寄ることを知る人はいません
いや・・・あのオブジェがあることすらも 忘れ去られている
今では同じ”きぼう”でも 『希忘の手』になってしまいました」
希忘の手・・・
「迷路のゴールは ハッピーエンドとは限らないよ
それでも あなたは 行くのですね」
マスターの声が 頭の中で響いた
熱ッ・・・!!
206CCの 焼けたシートが 体を焦がす と同時に・・・
蜃気楼のように ぼやけて揺らぎ始めていた
私の心に喝が入った!
CC(クーペ・ガブリオレ)には もう一つの意味がある・・・
”Coup de Coeur” ハートの一撃が 私の背中を押した
迷路の終焉まで あと10キロ・・・
岬の突端に立つ オブジェ・・・
それは彼らしい 自然の石を荒々しく削った作品だった
大地から空に向けて 突き出すように生まれた右手首と
空から降りてきたような右手首は しっかりと握りしめられ 一つの塊となり
これからも ずっと離れることはないだろう
最後の手紙に書かれた一文を思い出した・・・
「君と手をつないで 逃げた あの日 あのぬくもりを忘れない」
私は 15枚の手紙と
その返事の手紙 30通を紙飛行機にして
海に向けて投げた
そこに彼がいる気がした
メイズランナー 第三章・・・最期の迷宮のように
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