メアリと魔女の花 ~ XT5クロスオーバー ~
22,2018 22:26
一か月ぶりになってしまった 家内のお見舞い・・・
別れ際になると 涙が止まらなかった子供たちは
後部座席に座ると すぐに眠ってしまった

自然吸気の3.6リッター V型6気筒エンジンに
8速ATを搭載するXT5クロスオーバーは
小型ながら アメ車の性質を周到しており
アクセルワークに対して どっしりとした やさしいエンジン
ふんわりとした加速に適度なロールは
まだ小学生と幼稚園の兄妹にとって
母親に添い寝してもらっている気分なのだろう
バックミラー越しに見える子供たちの頬には
涙でできた枯れた川のような模様が残っているものの
満面の笑顔だった
Fooooooooooooooooooooooooooooooo
大きく深呼吸した僕は
高速道路の入り口を通過して 峠の一般道にハンドルを切った
今日ぐらい・・・息抜きしてもいいよなぁ・・・
車内を彷徨う 僕の問いかけに
XT5が 唯一シフトチェンジで承諾の返事をくれた
家内が病院に入院して一年目を迎える
終わりの見えない治療の始まりだった
周囲の人からは・・・
仕事の上に家事もこなさなければならない僕の状況を
大変だねと言われる
しかし
一番苦しんでいるのは 子供たちの成長期を見守ることのできないカノジョだ
僕の境遇を苦しみなんて 感じたことはない
それでも・・・今日
カノジョは言った
「あなたも大変なんだから毎月来なくてもいいのよ」
僕を気遣っての一言 わかっている でも・・・辛かった
そんなことを・・・
カノジョに気を使わせてしまう自分が情けなかった・
R-35・・・ 次いでR-70!!
気持ちよく カーブを切り込みたいところだが
子供たちが起きないように・・・
ゆっくりとステアリングを回す
「また来るよ・・・一か月後・・・」
僕がカノジョに向かって 発した言葉はそれだけだった
子供たち二人に泣かれて
困り果てながら目を潤ませていたカノジョは・・・
そんな 僕を見てコクリと頷いた
GW前にもなると 日没も かなり遅くなる
トワイライトタイムを楽しみながらの峠越えは
不思議な感覚にしてくれる
空に浮かぶ星座たちや 森の中の妖精たちが
XT5を見つめている
そんな気がした
山頂には
小さな駐車スペースと展望エリアがあった
後部座席の子供たちが
すやすや眠っているのを確認した僕は
XT5を停めると 車外に出た
運転席のドアを開けたまま
まだ太陽光の残光で暗闇に飲まれていない地平線から
青白い空を見上げる
カーオーディオから流れる曲は
世界を黒一色の虚無の空間に移る中で
僕が まだここにいることを 仄かに感じさせた
それを自覚したとき・・・
僕の頬には 大河が流れていた
「あっ!! 夜間飛行!!」
いつの間にか 幼稚園児の娘が目を覚ましていた
慌てて 涙を拭いた僕は
娘のところへ向かった
どうしたんだい 僕の質問に
娘は XT5のヘッドライトが照らす草むらを指さした
「あっ !ほんとだ! 夜間飛行だ!!」
隣の息子も目を覚ましていた
そして車を出た 息子は 草むらに入って
ムスカリを摘んできた
「これはムスリカ・・・ いや この花は夜間飛行っていうのかい?」
僕は娘に尋ねた
「うん!! メアリが言ってた!!」
メアリ・・・!???
あっ!あれか・・・
一週間前に借りてきたアニメ映画だった・・・
「この花を・・・」
息子は 花を左手に持つと ぱちんと手を合わせた
「こうすると 僕は魔女になるんだ!」
おいおい・・・男の子は魔女にはなれないよ
それを言うなら魔法使い・・・
そんなことを思っていると
息子と 娘は 口をそろえて言った
「ママが帰ってきますように!」
それは願い事じゃないかと思いながらも・・・
僕は 子供たちの頭をくしゃくしゃにしながら抱きしめた
子供たちを 後部座席に戻して 運転席にも戻ろうとしたとき・・・
真っ黒なXT5の縦長のヘッドライトが
黒猫の瞳のように細くなったように見えた
翌朝・・・
いつものように
子供たちのお弁当に奮闘している僕・・・
夜間飛行の魔力に気づくのは もう少し後
朝一番で 携帯電話に届いたメールには
カノジョの退院の知らせが入っていた
別れ際になると 涙が止まらなかった子供たちは
後部座席に座ると すぐに眠ってしまった

自然吸気の3.6リッター V型6気筒エンジンに
8速ATを搭載するXT5クロスオーバーは
小型ながら アメ車の性質を周到しており
アクセルワークに対して どっしりとした やさしいエンジン
ふんわりとした加速に適度なロールは
まだ小学生と幼稚園の兄妹にとって
母親に添い寝してもらっている気分なのだろう
バックミラー越しに見える子供たちの頬には
涙でできた枯れた川のような模様が残っているものの
満面の笑顔だった
Fooooooooooooooooooooooooooooooo
大きく深呼吸した僕は
高速道路の入り口を通過して 峠の一般道にハンドルを切った
今日ぐらい・・・息抜きしてもいいよなぁ・・・
車内を彷徨う 僕の問いかけに
XT5が 唯一シフトチェンジで承諾の返事をくれた
家内が病院に入院して一年目を迎える
終わりの見えない治療の始まりだった
周囲の人からは・・・
仕事の上に家事もこなさなければならない僕の状況を
大変だねと言われる
しかし
一番苦しんでいるのは 子供たちの成長期を見守ることのできないカノジョだ
僕の境遇を苦しみなんて 感じたことはない
それでも・・・今日
カノジョは言った
「あなたも大変なんだから毎月来なくてもいいのよ」
僕を気遣っての一言 わかっている でも・・・辛かった
そんなことを・・・
カノジョに気を使わせてしまう自分が情けなかった・
R-35・・・ 次いでR-70!!
気持ちよく カーブを切り込みたいところだが
子供たちが起きないように・・・
ゆっくりとステアリングを回す
「また来るよ・・・一か月後・・・」
僕がカノジョに向かって 発した言葉はそれだけだった
子供たち二人に泣かれて
困り果てながら目を潤ませていたカノジョは・・・
そんな 僕を見てコクリと頷いた
GW前にもなると 日没も かなり遅くなる
トワイライトタイムを楽しみながらの峠越えは
不思議な感覚にしてくれる
空に浮かぶ星座たちや 森の中の妖精たちが
XT5を見つめている
そんな気がした
山頂には
小さな駐車スペースと展望エリアがあった
後部座席の子供たちが
すやすや眠っているのを確認した僕は
XT5を停めると 車外に出た
運転席のドアを開けたまま
まだ太陽光の残光で暗闇に飲まれていない地平線から
青白い空を見上げる
カーオーディオから流れる曲は
世界を黒一色の虚無の空間に移る中で
僕が まだここにいることを 仄かに感じさせた
それを自覚したとき・・・
僕の頬には 大河が流れていた
「あっ!! 夜間飛行!!」
いつの間にか 幼稚園児の娘が目を覚ましていた
慌てて 涙を拭いた僕は
娘のところへ向かった
どうしたんだい 僕の質問に
娘は XT5のヘッドライトが照らす草むらを指さした
「あっ !ほんとだ! 夜間飛行だ!!」
隣の息子も目を覚ましていた
そして車を出た 息子は 草むらに入って
ムスカリを摘んできた
「これはムスリカ・・・ いや この花は夜間飛行っていうのかい?」
僕は娘に尋ねた
「うん!! メアリが言ってた!!」
メアリ・・・!???
あっ!あれか・・・
一週間前に借りてきたアニメ映画だった・・・
「この花を・・・」
息子は 花を左手に持つと ぱちんと手を合わせた
「こうすると 僕は魔女になるんだ!」
おいおい・・・男の子は魔女にはなれないよ
それを言うなら魔法使い・・・
そんなことを思っていると
息子と 娘は 口をそろえて言った
「ママが帰ってきますように!」
それは願い事じゃないかと思いながらも・・・
僕は 子供たちの頭をくしゃくしゃにしながら抱きしめた
子供たちを 後部座席に戻して 運転席にも戻ろうとしたとき・・・
真っ黒なXT5の縦長のヘッドライトが
黒猫の瞳のように細くなったように見えた
翌朝・・・
いつものように
子供たちのお弁当に奮闘している僕・・・
夜間飛行の魔力に気づくのは もう少し後
朝一番で 携帯電話に届いたメールには
カノジョの退院の知らせが入っていた
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