ブレードランナー ~ コスモスポーツ ~

 14,2018 20:57
「かさ雲がかかっているから 明日は雪になるよ
 スリップには十分注意したほうがいい」
それだけ言うと彼は 自室に戻ってしまった 

ご朱印集めに ほうじ茶好きの彼は
私より一回り年上だったが 体感はそれ以上

私がひとつ行動しようとするたびに
好々爺のような笑顔で
科学的とは思えない民間伝承やことわざで助言が入った

そんなジェネレーションギャップが 
私には 新鮮で心地よかった
しかし それも2年も経てば 煩わしく感じるようになる
そう・・・
父から譲り受けた このコスモスポーツと同じように

コスモスポーツ1970

彼との出会いも この真っ白な車がきっかけだった

港街のカフェの駐車場で

「やっぱり ロータリーエンジンの車は いいね
 1960年代の車で ここまで車高が低いなんて驚きだよ」
 
彼は宝石を見るようにこの車を見つめながら話しかけてきた

「でも・・・ 運転前には しっかりエンジンを温めないといけないし
 雨が強いと雨漏りもするんですよ!面倒なことがいっぱいで・・・」

彼の 子供のような眼に 
普段は きやすく男性と話すことのない私がつい話に乗っていた・・・
「そんなことは 面倒でも何でもないよ!」
そう言うと彼は コスモスポーツが 自動車の発展において
いかに貴重な存在だったかを語り始めた 
父の車を こんなに熱く語る彼が なんとなくかわいらしく見えた
それが彼との出会いの話・・・

デートは 常にコスモスポーツでドライブ
運転手は彼だった
とてもやさしく 繰り返されるシフトチェンジ 
私が焼きもちを焼くほどに 
ロータリーエンジンは滑らかに駆動した

あなたのカノジョは 誰なの?



ブレードランナーで レプリカントを作り続けた
J・F・セバスチャン(William J. Sanderson)
早老症の彼は 人よりレプリカントを愛していた
私には彼が セバスチャンと重なって見えた
彼の恋人は コスモスポーツ・・・
私の中で その想いが日に日に大きくなり 
そして 昨日私は その想いを支えきれなくなった

「別れましょう・・・ 明日 私はこの家を出ていくわ」

「かさ雲がかかっているから 明日は雪になるよ
 スリップには十分注意したほうがいい」

彼は 私に残ってくれ・・・ とは 言わなかった

快晴だった・・・
彼の助言が私にとって 利益をもたらしたことは一つもない・・・
今回も 同じ・・・
そう 思いながら コスモスポーツを発車させた

もし・・・ 
ほんとうに雪が降れば 私はここに留まろう そんな思いが3%あったのに・・・
どこまでも続く青空に
神様も 私たちが一緒にいることは 反対なのだと確認した

街境の急カーブに差し掛かった
太陽光を浴びてキラキラ輝くカーブ
これを曲がれば もう二度とこの街を見ることはないだろう・・・

いつしか 彼のように 
やわらかいシフトチェンジができるようになっていた私は
対向車の大型トラックを横目で見つつ
しなやかにコスモスポーツのハンドルを切った

と・・・ そのとき・・

Dosaaaaaaaaaaaaa!!

突然・・・ 目の前が真っ暗・・・いや真っ白になった

Kyaaaaaaaaa!

思わず 悲鳴を上げながら ブレーキを踏む!

”SLIP” ”SLIP” ”SLIP”・・・
彼の言葉が 私の体の中で木霊していた
 
咄嗟のことだったにもかかわらず 車はふわりと停車した

外に出ると・・・
コスモスポーツは 大きな雪ダルマになっていた

急カーブの路面は 
峠を越えてきた 大型トラックの雪が落下するスポットになっていたようだ
カーブが あんなにキラキラしていた理由が分かった



「雪・・・降っちゃった・・・」

ぽつりとつぶやいたとき 携帯が鳴った
彼からだった
 「1月の引越しは縁起が悪い せめて2月にならないか」

彼の助言で利益を得たことは一度もない・・・
でも 彼の助言を聞いて 
何度も 危険から免れていたことを思い出した

Uターンした コスモスポーツは 彼の家に向かった
屋根に積もった雪を落とさないように 
ゆっくりと エレガントな走りで





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