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桜前線と共に ~ M3 ~ 第三の男 ~

 15,2012 23:59
カノジョからの連絡は ソメイヨシノの開花宣言が鹿児島に上陸した日だった
学生時代の思い出がいっぱい詰まった ベイブリッジviewのCafeが
待ち合わせ場所だったが そこはコンビニに変わっていた 
予定時間より15分早く到着した僕は 
コンビニの入口で Cafeでの思い出に通じる記憶の糸を手繰っていた

 「久しぶり―」
甘えたような独特のニュアンスの声に 僕は はじける様に視線を向けた 
スプリングレイヤーのストレートヘアーに 胸元で輝くティファニーのクロスネックレス 
記憶の糸は 8年前のカノジョを引き寄せてしまったらしい

すべてに平等な時間の神クロノスも カノジョだけは特別扱いなのか 
最後に会った時よりも若々し容姿は 
魔法の絵の具で花に彩色する 春の女神ペルセポネを想像させた
先輩と付き合っていなければ 遥か昔に告白していただろう
ほんのり甘い学生時代を思い出し 僕は苦笑した

BMW M3-1

挨拶もそこそこに 僕たちはM3で海岸線を駆った
僕の愛車M3は 先輩から譲り受けたものだ
左腕のピッチャーだった僕は 同じ左腕の先輩に可愛がられ
車の運転から 女性の付き合い方 お酒の飲み方まで 伝授してもらった
そして 先輩の傍にはいつもカノジョがいた
両親を早くに亡くした僕にとって
先輩たちの存在は 家族以上だった

昔話が一段落し カフェカリカを通り過ぎたころ 
カノジョの頬に涙が流れているのが見えた
カーステレオから流れるのは Gloria Estefan - Anything For You


 「彼のことが見えなくなってきたの・・・ 私たちに隠し事なんか無かったのに・・・
  彼が 危ない仕事をしているようで 心配なの・・・」
カノジョの姿を見て 僕はホームズになろうと心に誓った

先輩との再会も 思い出の場所だった
”Cinema bar Casablanca”に現れた先輩は 思い出の中の先輩より丸くなっていた
満面の笑顔で迎える先輩には 何の不満も淋しさも感じない
カノジョとは大違いだった

懐かしい昔話で盛り上がる中 僕はカノジョについて話を振った
 「カノジョは元気ですか・・・?」
すると先輩は 少しだけ憂鬱そうな顔で言った
 「アイツは 俺を拘束しすぎるんだ 一緒にいると息が詰まるんだよ」
更にこう続けた
 「アイツとはもう別れるだろうな 実はもう好きな子がいるんだ
  そうだ お前がカノジョと付き合えばいい アイツもお前のことがお気に入り・・・」
”Gtuーun!”
僕の左拳は 先輩の右頬にヒットした
九段下の桜が開花した日のことだ

僕はカノジョの家を訪れた
清潔感漂う白亜のマンションは カノジョのイメージにぴったりだった
玄関に現れたカノジョは 純白のカーデガンを羽織っていた
カノジョの顔色が 何となくblueに見えたが 
僕は正義感とカノジョへの思いから 気持ちの赴くままに語った
 「あなたや僕の記憶にある先輩は もう別の世界に逝ってしまったようです
  もう あなたはアイツと一緒にいるべきじゃない!」

”Pasi-nnn!”
カノジョは 僕の頬を叩いた
 「彼のことを殴ったわね・・・」
そう言うとカノジョは 扉を閉めた
僕は ドア越しに言った
 「アイツは あなたを幸せにできない! 僕はあなたに笑顔でいてほしいんだ!」
 「あなたには わからないわ」
小さな声が聴こえた 
そしてカノジョの気配は消えた

僕の脳裏に 落ち葉が舞い散る道を歩く アンナ(Alida Valli)の姿が浮かび上がった
桜吹雪が舞う道で Heartbreakの僕を M3が優しく見ていた 





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