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ビッグ・ウェンズデー ~ サラトガ 1952 ~

 10,2017 22:39
あの日の浜辺も今日のように静かだった
冷夏でほとんど 
陽の光を見ることができなかった 20年前の夏の日

”海坊主が呼んでいる・・・”

空を見上げていた父は そう呟くと
いつも以上に 白い顔をした母をよそに
1952年製 サラトガのルーフに
サーフボードを載せはじめた

クライスラー サラトガ 1952

肺を患い 一日の殆どを
布団の上で過ごしていた母は 
その日も 何も言わずに 天井を見つめていた

自分勝手な父は 母のことなど 
一度だって 心配したことのない・・・
”お前なんか・・・ いなくなっちゃえ!!”
心のなかで 叫びながら 横目で父を睨んだ

そんな僕を見て

「お父さんがね あんまり・・・ バカをしないように
 あんたが 見守ってやってね・・・」

白い顔の母が ニコリと笑って言った

首が落ちるほど 何度も大きく頷いた僕は
部屋を飛び出すと
動きだしていた 
サラトガの助手席に飛び乗った
眉間に シワを寄せた父は 
大きく ため息を付きながらも グンとアクセルを踏み込んだ

Myuaaaaaa Myuaaaa・・・

サラトガのボンネットで鳴く
ウミネコの声で 僕は目を覚ました

分厚い雲に覆われた空と
朝もやのおかげで 
夢と現実の区別がつかずに・・・ぼんやりとした僕の目の前に
ねずみ色の海が広がる

真っ赤なサーフボードが どす黒い壁に向けっていた・・・

”父さん!!”
必死に叫ぶ僕の声は 父に届かない
しかし・・・

”待ってたぞ!! 海坊主め!!”

父の叫び声が 僕には はっきり聴こえた

父の足元で巧みに操られる 真っ赤なサーフボードは
凶暴な波を 柔らかく撫でている

父が 
Big Wednesdayを乗りこなす
マット(Jan-Michael Vincent)に見えた・・・



しかし・・・
海坊主は 想像を超えていた
父と真っ赤なサーフボードは 
どす黒い大きな口に飲み込まれた

浜辺に 打ち上げられるように 戻ってきた父は 
砂浜に拳を叩きつけていた
何度も・・・ 何度も・・・

それから 間もなくして 母は死んだ
あの日以来 燃えカスのようになった父も 5年後・・・
一人で行った海から 帰って来ることはなかった
浜辺に サラトガと 真っ赤なサーフボードを残して・・・

大嫌いだったはずの 父と海・・・
しかし 僕は 真っ赤なサーフボードを積んで
サラトガと共に 海に通った

そして 今日・・・

僕は あの日の父と同じように感じた
”アイツがやってくる・・・”

僕は サラトガにロングボードを載せると
外房に向かった

日の出前の 静かな海・・・ 
ウミネコたちが サラトガのボンネットに乗って
鳴きはじめた

間違いない・・・アイツが呼んでいる

ロングボードを担いで 海に向かって 走り出す・・・

!!? ?

と その時・・・携帯がなった

カノジョからだ
こんな時間に電話なんて・・・ ただ事ではない・・・

でも・・・ 今・・・ 海に出なければ
海坊主に乗ることができない・・・
僕はアイツを 20年待ったんだ・・・

Myuaaaaaa Myuaaaa・・・ ウミネコたちが 鳴いた

Zabbbbuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuunnnnnnnnnnnnnnnn!!

凶暴な大波は
この地で 海坊主と呼ばれている
だれ一人 乗りこなしたものがいない伝説の大波は
いつ現れるのか 誰も知らない・・・

チャレンジする資格者にだけ
波のほうから お告げがあるという

その日 浜辺を覆い尽くすような 
水しぶきを上げた大波は 不思議に思った・・・

浜辺に打ち上げられ
挫折を味わう 悲痛な若者の姿が 
そこには なかった・・・

サラトガは
カノジョの待つ 西の街に向かって
くねくねと曲がる半島の坂道を登っている



ルーフに括りつけられた 真っ赤なサーフボードは
カーステレオに合わせて
西の空に浮かぶ 巨大な入道雲を 見事に乗りこなしていた

※ Big Wednesdayに挑んだ3人が サーフボードを積んで
   乗っていた1952年式 Saratoga・・・かっこいいです





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