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タイピスト ~ RX-7 1990 ~

 15,2017 20:38
ミッキーローク主演の
エンゼルハートに出てくる悪魔”ルイス・サイファ-”に似た体躯の
上席が予告なしにやってくるときは
もちろん いい話であるはずがない
しかし その日 彼の横には 天を照らすほど 陽気な女性がいた
中途採用で入社したカノジョは
帰国子女らしく垢抜けていた

「よろしくっ お願いしま-す!!」

という第一声は
この会社の音量ボリュームを遥かに超えていた

「・・・あとは よろしく」
上席は 私の肩をポンと叩くと そそくさと部屋を出ていった

RX-7 1990

弱小広告代理店の企画部には
大手企業の華やかなイベントは ほとんどこないが
地元の中小企業からの
低価格で大きな効果を求められる小型イベントは山積みだ

そんな部署を取りまとめている私にとって
労働力アップは 喜ばしいことなのだが・・・

「私!! 面倒かけますけど とにかくがんばっちゃいます!!」

15歳も年下の女の子に
ウインクしながら そう言われたとき 
頭上に 分厚い雪雲が流れてくるような気がした・・・

しかし・・・
一週間後 私の感覚が 誤っていたことに気付かされる
雪雲と思った不安な塊は
季節外れのタイフーンになっていた

顧客に向かってダメ出しをする・・・
実施中のイベントを
独断で方向転換して 進行をドタバタにする・・・
予算オーバーの演出を仕掛ける などなど・・・

私の仕事は
カノジョの 自分勝手な行動で発生した問題を
一つ一つ 消火していくという新しい業務が加算された

今日も イベントに呼んだタレントに
”やる気が無いなら帰れ”と言い放ったカノジョの一言で
タレント事務所へのお詫びに行脚していた



その帰り道・・・

「すいませんでした」
舌をぺろりと出しながら 頭を下げるカノジョ

やれやれ・・・
小言を言いながらも 結局私は カノジョを許してしまう・・・
それは カノジョの仕事に対する姿勢が
直球すぎるが 決して間違ってはいないからだ

だから 私は 自分が培ってきたノウハウを 
少しづつ カノジョに引き継いでいた

”ただ・・・”
「次長・・・この車セブンですね!」

まだ 説教の途中のつもりだった私の言葉を遮り
カノジョが言う

”あー全く・・・”

「会社に入った時に買ったんだ 1990年式 FC3Sだ」

「私!! 大好きですよ!」

運転中の私の顔に 
鼻頭が くっつきそうになるほど接近するカノジョ

明らかな領海侵犯と 主語の無い一言に 
私は大好きの 矛先が自分だと勘違いした 

「私と一緒ですから!!」
カノジョの名前はNaNaだった

そんなカノジョの破天荒な仕事は
問題も多かったが 成果も大きかった
3年目にもなると
カノジョは 仕事も安定し 我が社の看板娘になっていた

ようやく肩の荷をおろして 仕事ができると思い始めたとき・・・
上席が やってきた・・・ 

私の耳元でそっと囁く
「いい天気だし そばでも食いに行こうか」
それは 彼のリストラ告知の手段だった

私は 気がつくと 
何も痕跡を残すことなく消えていく 
手のひらの粉雪のように 会社を去った

そして南の国の 今より更に小さな代理店に再就職した

幸いこの街のリズムは 
私と同じ LP盤の33回転で動いていた

イベント開催は 夏の間だけ 冬は のんびり釣りの毎日だった

はじめての正月を終えた 
ほんわりと晴れた日

お気に入りの浜辺に行くと
FC3Sが停まっていた

!!

「来ちゃいました!」

セブンの背後から聴こえた声・・・ 
そこにはNaNaがいた
カノジョは
会社を辞めて ここに来た 
私が残したセブンと共に

会社を離れる時・・・
君に声をかけようか・・・迷った
しかし・・・
映画タイピストの
ルイ・エシャール(Romain Duris)と同じように
私は 臆病者だった
君は 会社に残れば 間違いなくローズ・パンフィル( Deborah Francois)になれる
君の人生を 摘んでしまう権利は 私には・・・無い



だから 黙って消えた・・・ それなのに・・・

「面倒な女だ・・・」

「やっとわかったんですね」

私の絶対領域に
今度も あっさり侵入してきたカノジョに
そっとキスをした

そして 想った・・・
カノジョの時間・・・
SP盤の45回転で動く世界・・・も悪くないと





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