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市民ケーン ~ ハコスカ 1971 GT-R ~

 18,2016 23:59
「Hiroshiさんですね」

ジャッキアップしたマスタングの下から
ガレージには似合わない 
エドワードグリーンの ウイングチップが見たとき
Hiroshiは 胸騒ぎを覚えた

「大河内氏の遺言をお持ちしました」

「オオゴウチ・・・」
全く記憶にない名前に 戸惑いながら反芻すると
ウイングチップの男が言った

「大変 失礼しました・・・
 旦那様は ここでは箱須賀と名乗っておりました」

Hiroshiの脳裏にカーネルサンダースのような
好々爺がぷかりと浮かんだ

「あー ハコさん・・・ えっ ハコさん死んだんですか」

Hiroshiは サービスクリーパーを蹴って 
マスタングの下から顔を出した

1971GTR

ウイングチップの主は
誰もが想像できる 典型的な執事であった

「はい・・・ 一週間前・・・
 お風呂で倒れて・・・そのまま・・・」

「そうですか・・・」
Hiroshiは ハコさんと呼んでいた 老人が
このガレージにはじめて やってきた日のことを思い出した

「コイツをレストアしてほしいんだが・・・」
サンタクロースのような老人の後ろには 赤鼻のトナカイではなく
羊の皮をかぶった狼
グレーの1971年式 GT-R 通称ハコスカがあった

程度が良ければ数千万円で取引される
伝説の初代GT-Rは 整備士にとっても 憧れの車だ

ボンネットを開けると
この車が どれだけ大切にされてきたのか十分に分かった
走行距離は 5万キロを指していたが
真っ赤なS20エンジンは 油染み一つ無い
消耗品は純正品により 適切に交換されていた

運転席に滑り込んでキーを回す
しかし・・・ エンジンがかからない・・・

「しばらく乗ってなかったからね
 できれば 昔のように 峠で早く走れる奴に戻してほしい」
老人はニコニコしながら言った

仕事抜きでも 手がけたい車に
Hiroshiは 快諾した
タバコの焦げ跡がついた内装も含めて新品に仕上げますと意気込んだ

しかし 老人は内装の修理は一切不要と声を張り上げた
お客様の要望に答えるのが ガレージの仕事・・・
憧れのハコスカを目にして 
余計なことを口走ったとHiroshiは後悔した

S20エンジンはSUキャブレターの修理と
プラグ交換で完全に息を吹き返したものの
40年という時によって 腐食したパーツは少なくなかった
富士スピードウェイ仕様の純正新古品の足回りを手に入れ 細部までこだわり抜いた結果
完成まで一年を要した



ラジオから流れる ディープ・パープルを肴に
完成した1971年製GT-Rは 持ち主のハコさん指名の峠ルートで試験走行
最近のコンピューター制御された車では味わえないフィーリングと
ズシッと感じるステアリング感覚は ドライバーを恍惚の境地に誘う
運転席のHiroshiを見ながら
助手席に乗った老人も 40年前の感覚が全身で蘇ってくるのを感じていた

「最高だ!」

試験走行が終わった時 老人は一言そう呟いた

その後も 老人は 毎月1回 GT-Rの整備という名目で
Hiroshiのガレージを訪れた
あるとき 老人が マックィーンの栄光のル・マンについて話をした時
二人は お互いが 映画好きであることを知った
只管 マシーンと一緒にいるだけの職場・・・
誰も話し相手がいなかった Hiroshiも ハコさんとの会話が 楽しみになっていた

そんな ハコさんが死んだ・・・

Hiroshiは ポカリと 胸の中に空洞ができたように感じた
それは・・・
ハコさんに会えなくなるからなのか
それとも ハコスカを触れることが できなくなるからなのか・・・
不謹慎な 思いが浮かぶ・・・ 俺は 何を考えているんだ・・・

そう思った時

!!

「遺言って・・・ 俺に 関係あるの」
Hiroshiは 老紳士の初めの一言について 疑問を感じた

「はい・・・
 旦那様は 早くに奥様を亡くされ 天涯孤独でした
 だから あなたとの会話がとても楽しかったようで・・・」

ハコさん・・・いや大河原氏の遺言とは 次のようなんものだった

”Hiroshi君  君が本当に映画好きなら 次の問題がわかるはずだ
 この質問に正解したら あの車を 君に譲ろう・・・”

Hiroshiは ゴクリとつばを飲み込んだ
老紳士は 1枚の写真をHiroshiに見せると続けた

”君は この部屋の写真の中の一つを選ぶことができます
 そこに車の鍵が隠してあります それはどこでしょう
 ヒントは一つだけ 『ローズバット』です”

「いかがですか・・・」
老紳士の瞳がキラリと光った 

Hiroshiは 躊躇せずに ただひとつの物を指した

老紳士は ニコリと笑った
「正解です」

Hiroshiが指したもの それは そりの置物だった

老紳士は 内ポケットから GT-Rの鍵を出すと Hiroshiに手渡した



Hiroshiは GT-Rのキーを回した

Bwooooooooooooooooooooooooo
S20が 心地よいサウンドで吹き上がる

ダッシュボードを開けると
1枚の写真と手紙 そして 山の権利証が入っていた

「君ならきっと正解してくれると思った  この車は君のものだが
 そして この車を走らせるのに適切な環境も一緒に君に譲ろう
 君の手掛けた車たちの 試験運転場所に使ってほしい
 
 一つだけ 私の願いを叶えてくれるなら・・・
 内装だけは このままで使ってくれまいか
 30年前 先に逝ってしまった 家内の思い出が詰まっているから・・・ 
 家内と喧嘩して 初めて頬を叩かれた時に 落としたタバコの跡も 大切な思い出た 
 
 君と出逢えて 楽しかった
 家内をなくした後・・・
 ケーン(Orson Welles)のような人生を歩んだ私は・・・天涯孤独でこの世を去るつもりだった
 しかし 家内の愛したGT-Rが・・・君を連れてきてくれた
 コイツを頼むよ ありがとう・・・」

来週には 雪が降るらしい

Hiroshiは ハコさんと 奥さんを後部座席に乗せて
晩秋の碧天の中 
ハコスカ峠に向かうことにした

P.S. ローズバッドは市民ケーンのキーワードですね





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