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小さなピアニスト ~ VWシロッコ ~ タイタニック ~

 01,2012 23:40
コンプレインがクレームになるのは 全体の4%
あとの96%は氷山のように 人の心という大海原に埋もれているらしい
このことに気が付かない施設は 顧客満足度が低いというレッテルを張られ 
やがて淘汰されていく



僕とカノジョの間にも 大きな氷山があった
しかし 僕はそれを認識することができず 
カノジョは僕の前から去った
僕は タイタニックとジャックのように深い海に沈んだ
4月15日(タイタニック沈没の日)よりも二月早い 梅の花が咲く頃のことだった

カノジョとの 2年分の思い出が詰まっているはずの部屋には
カーペンターズの歌声を 流し続けたBOSE101が 
解雇されたサラリーマンのように行き場をなくして 床に転がり
カノジョが衝動買いしたシャガール「エッフェル塔の花嫁、花婿」の
レプリカが取り外された壁には 四角い額縁の日焼けだけが残っていた
それは カノジョが この場所にいたという唯一の証だった

―Sheeeeeen― という無音の音が響く部屋に耐えられない僕は
仕事が終わると シロッコを駆って夜の街を流離った
サハラ砂漠から地中海を越えて イタリアに到達する熱い南風”シロッコ”に 
氷山を溶かしてほしいと願った

scirocco

カノジョが去ってから ひと月が過ぎ 桃の花が香り始めたころ 
隣家から かすかに聞こえてくる ピアノの旋律に気付いた
それは”春よ 来い”(松任谷由美)だった

しかし 曲は 一小節毎に止まり ミスタッチも多発していた
一般論で言うと単なる雑音でしかなかったが
僕にとっては 無音の音による苦行を和らげる 魔法の旋律だった

ピアニストは 隣に住む桜のようにピンクの頬をした6年生の少女
毎日聴こえてくる演奏は 着実に曲として形成されていたが 
その成長はスローテンポだった
ピアノをかじったことのある僕には 少女の成長が歯がゆく感じた
しかし 無料の聴取者である僕は ひたすらピアニストの成長を待つしかなかった

 「そこはテンポよく! ここはピアノを意識して あっ! そこはフォルテでしょう・・・・」
独り言を言いながら ふと窓を見ると 眉間に皺を寄せた自分がいた・・・
とその時~♪~!!



僕の感性を超えた 旋律が聴こえてきた 
 「僕は なにをしていたのだろう・・・ 自分の思いを少女に押し付けて・・・
  彼女が奏でるリズムの方が 素晴らしいじゃないか・・・」
自分の驕りに気付いた僕は 久しぶりに笑った 涙が出るほどに
次の日から 僕は少女の感性を楽しむようになった

桜が舞い散る季節を迎えたとき ”春よ 来い”は完成した
そして僕は 二ヶ月ぶりにカノジョの携帯にショートメッセージを送った
 「もう一度 君のことを知りたい そして君の話を聴きたい」
カノジョからの着信を知らせる Top of the Worldが流れた



僕は 隣家をノックした
「はーい」という元気な返事と共に扉が開いた
ピンクのリボンを付けた少女ピアニストが立っていた

 「君は 最高のピアニストだね」
そう言うと 僕はチューリップの花束を少女にプレゼントした
 「わー とってもきれい! ありがとう!」
少女が 両手を挙げて喜ぶ姿を見て 僕は心の中で呟いた
 「次は カーペンターズを聴きたいナ・・・」



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