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白鯨 ~ アルシオーネ ~

 06,2016 12:28
内装デザイナーは
常に 挑戦し続けるべきだ
懐古的な デザインを使えば
誰でも 完成形をイメージすることができ
クライアントとの意思疎通も簡単だ
しかし そんなオートメーションのような作業は 
僕の仕事ではない
コンクリートや鉄骨といった建築素材を際立たせたカフェや
紺碧のタイルで覆われたバー・・・
僕は 自分の右脳を信じた 前例の無いスタイルに拘った 



夜霧が冷たく頬を撫でる・・・
あのガス灯を曲がると そろそろ 看板が見えるはずだ
20年前の記憶が確かならば・・・ 


こんな 僕のスタイルに賛同できない
クライアントとは 何度も物別れした
自分は妥協をしない
僕の生き方は 白鯨への復讐を誓ったエイハブ船長そのものだ
たとえ 嵐で船が転覆しそうになっても
目的達成までは 最短距離を邁進する 

そんな生き方の代償で・・・
顧客のいない僕は 仕事のオファーが来ない
自称デザイナーに なっていった


ガス灯を曲がると
街の灯りも月明かりさえ 届かない小道になった
その闇の中で ぼんやりと宙に浮く
ネオンサインが見えた・・・


マスターとの出逢いは 池袋の名画座だった
「オールドムービーをテーマにした店(Cafe Bar)を開きたい・・・
 君に手伝ってほしい」
物静かな男は 僕が内装デザイナーであることを知ると
そう 依頼してきた

「白鯨」という映画をご存知ですか」
「1956年 グレゴリーペック主演の モビイ・ディックだね・・・」



彼の返事を聞いて 僕は この仕事を受諾した

しかし・・・ 彼の拘りは 
僕のスタイルと正反対のベクトルを指していた

自分の直感を信じて 提示する先鋭的なデザイン案は 
彼の首を立てに振らせることはなかった
会心の作と言えるデザインで 
何度もチャレンジするが
どれも 彼のお眼鏡に適うものはなかった

その日も 彼は承諾しなかった
この仕事は 僕には向かない・・・
そう言って この仕事に終止符をつけようとしたとき
彼が言った

「一杯 どうですか・・・」

彼が差し出したのは ブルームーンだった
ドライ・ジン30mg バイレットリキュール15mg レモンジュース15mg

「カクテルには それぞれ花言葉のように意味が付けられています
 このカクテル言葉は ”出来ない相談”です」

僕は彼を睨みつけた・・・

 「しかし・・・」
彼はニコリと笑った
 「もう一つ意味があるのです それは”奇跡の予感”です」

それだけ言うと 
彼は またいつものように寡黙になった

カクテルグラスに浮いた 
レモンの皮でできた 三ヶ月を眺めたあと
僕は グイッとグラスを空けて・・・
「もう少し 考えます・・・」
そう言って 彼の部屋を後にした

アルシオーネ1995

翌日 僕は横浜のヨットハーバーにいた
アルシオーネのカーテレビに映るのは 
~白鯨~

鯨に取り憑かれた エイハブ船長を見ていて
僕は気づいた・・・ 
彼こそ・・・ 過去に囚われているではないか・・・ 

アルシオーネから出た僕は 
これまで自分が住んできた世界が 壊れていくのを感じながら 
ぼんやりとハーバーを眺めていた・・・

!!

古びた レンガ倉庫と
先鋭的な流線型のアルシオーネが重なった瞬間
僕の右脳にパルスが走った

翌日・・・
クライアントは 僕に握手を求めてきた
ネオ・バロックの手本と言われる
ガルニエのオペラ座のテイストに未来的なエッセンスを融合させた
”レトロ&フューチャー”なデザイン画が 机の上に置かれていた


Karariiiiii

扉を開ける・・・
店内は 若い女性から ハンチングが似合う老人まで
幅広い客で賑わっていた
レトロとフューチャーが融合した 
この店は 彼の代表作となっていた・・・

カウンターの向こうにいる マスターの視線が 僕を捉える
そして その視線は・・・ 一つの席へ僕を誘った
そこは 開店当初から 
Moby Dickのポスターが掲げられた席だった

Cafe Bar Casablancaは 今日も 誰かを癒やしている・・・





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