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バグダッドカフェ ~ 306 ~

 17,2016 20:57
306の先頭に立つ
ベルフォールのライオンが見つめる先には 
南風の神ノトス の気まぐれで うねりを見せる
砥粉色の砂丘が続いている

その中にぽつりと立つ
一軒の朱塗りの建物は 間違いなく
ラスヴェガス近郊 モハーヴェ砂漠の
うらぶれた ブレンダの店(Bagdad Café)を意識していた



”Kari Corori ”

と 鳴く 扉を開けると
ほのかにココナツの香りが絡みつく
昼時で 飲食店としてはゴールデンタイムといえる
時間であるが
店内に 生気が感じられない

自分が 情緒不安定だから そう感じるのだろうと思った男も 
店の客たちを眺めてみると 
そうとも言えないと 考えを改めた

カウンター席に陣取る
大型トラックの運転手は 
夜通し走った疲れからか ぼんやりと 
高校野球の地方予選を眺めている

店の入り口 近くのソファー席に
横たわる少女は
澱んだ瞳で 天井旋の回転数を数えている

入り口から一番遠い席には
この店には似つかわしくない
純白の バーバリーのワンピースを着た女性が座っていたが
砂丘を眺めている カノジョの心は 
この場所にはいないようだった 



砂丘を貫く国道が見える席に座った男は 
愛想のない初老のマスターに
トーストにコーラを注文すると ショルダーバックを開けた
中には 様な色の折り紙が入っていた・・・

炭酸の抜けたコーラの入ったグラスから
氷がすべて 消える約40分の間に
折り鶴を20羽を作った男は
予定調和だったかのように
スラリと席を立つと 店を出ていった

次の日も また次の日も
男はランチの時間に やってきた
そして 窓際から 国道を眺めながら
折り紙を折った
カフェの常連たちは 遠くから彼を見つめていた 

10日目・・・
少女が 男のそばにやってきた
「私にも折り方を教えて・・・」
そう言う 少女の瞳は輝いている
何も言わずに 折り紙を少女に渡した男は 
いつもより ゆっくりと 鶴を折りはじめた
 
雨の日も 風の日も 男は 06に乗ってやってきた
トラック運転手も ワンピースの女性も
いつしか 少女と男を 
フワリと暖かい目で見るようになっていた
しかし・・・
店のマスターだけは 一人苦虫をつぶした顔のままだった

ハリケーンがcafeの上空を通過した翌日
スカイブルーにおおわれた砂丘の駐車場に 
306を停めた男は 大きなボストンバックを抱えていた

”Kari Corori”

扉が開くと
男は いつもの席を通り越して 
カウンターに向かった
グラスを磨く マスターは
男のいつもと違う 雰囲気を察していたものの 
顔を上げることはなかった

 「今日 この街を出ていくことになりました
  あと半月は滞在できると思っていましたが・・・
  急に本社から呼び出しを受けてしまいました」

マスターは サイフォンを見つめていた

 「この街に滞在している間に
  千羽鶴を完成させたかった・・・
  その時 もう一度 
  あなたに カノジョとの交際を認めていただこうと思っていました」

1年前・・・
男は 娘との交際を求めてきた
しかし マスターの答えはNoだった
男の素行に問題があったわけではない
ただ 娘が重い難病を患っていたからだった

 「でも・・・
  やっぱり 神様は 僕とカノジョを結びつけたくないようです・・・
自分に課した約束を 僕は守ることができなかった・・・
  だから・・・ 僕は・・・
  今日 この街を出ます 二度と 戻ることはありません」

男は900羽の鶴をカウンターに置いた

 「一つ一つ 心を込めて折りました
  1000羽には足りませんが 
  カノジョの病を治すだけの願いは込められています」

常連たちの 
瞳が潤む中 男はゆっくり 頭を下げると 店を出ていった

306 1993

嵐によって 梅雨前線が消失し
真っ青な空が広がる
日本とは思えない空間の中で 306が待っていた

「おい・・・」

!!

振り返ると そこには マスターが立っていた
カノジョが療養している
サナトリウムの住所が書かれたメモを差し出していた

 「お前さんの千羽鶴は完成していたよ」

マスターの左手には100羽の折り鶴があった
それらは どれも羽の大きさが左右違っていたり 顔が極端に長かった

 「お前さんの弟子が 折った分だよ」

男は cafeの窓から手を振る少女に気付いた

 「病気の娘と一緒じゃ 
 お前さんの人生も無駄になるかもしれんぞ・・・」

そういうマスターの瞳は 
砂丘には似合わないほど 水分を含んでいた

 「マスター・・・ 砂丘にもこんな日があるんですね・・・」

マスターと常連たちが見送る306は
ハリケーンによって生まれた 巨大な水溜りに向かっていた
 
スカイブルーの空と 一筋の飛行機雲が 映し出された水溜りは 
時空が裂けてできた 
もう一つの世界へ通じる道のようだった

そこでは 
男とカノジョの眩しい第二幕が開演される
カフェの住人たちは そう想った 





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