Ted ~ ジェッタ ~
24,2016 22:47
9回裏 ツーアウト ランナー1塁
あと一人で優勝が決まる
名門チームのピッチャーは ネクストバッターズサークルを見て
にやりと笑った
一点差で迎えた最終バッターは
萬年控えの背番号13番・・・ そう 僕だ
緊張して
バットと脚が小刻みに震えた
ZubaaaaN ”ストラーイク”
目の前を通過した速球より
主審の 大きなコールに 腰を抜かしそうになった
レッドゾーンに振りきれたままの
僕の二気筒エンジン
アクセルを緩める間もなく 第二球がやってくる
ZubaaaaaaaaaaaaaaN
”スットライーーーク”
ミットに収まった後に 振られたバット
観客席が ドロリと笑った
「タイム！！」
親友のTakashiが 僕の所へ来ると言った
「空を見ろ！！ 今にも雷が落ちそうだ！
ロイ・ハブス（映画ナチュラル）がついてるぞ！
お前なら 絶対いける！」
Takashiの一言が
僕の二気筒エンジンの添加剤になった
三球目・・・
目を瞑って バットを振り抜いたとき・・・
雲の一部が キラリと輝いた
白球は バックスクリーンへ消え
13番のバットは ワンダーボーイになった
あれから ２０年・・・
同じ学校に 同じ職場・・・
僕とTakashiは いつも一緒だった
映画好きの二人は Tedとジョン（Mark Wahlberg）のように
いつも映画の話題の中で生きていた
そんな僕に
プリティウーマンのような カノジョができた
不器用な僕を まるごと受け止めてくれる
底抜けに明るい カノジョに
僕は Takashiとは違う 心地の良さを感じた
しかし・・・
カノジョとの関係が深まること
それは Takashiとの関係が 薄れていくこと意味していた
Cafébar Casablancaは
僕とTakashiが見つけた
映画談話で盛り上がるには最高の場所
そこに カノジョを 初めて連れていった日・・・
ジャンポールベルモンドのポスターの下で
一人 キールを飲んでいたTakashiに
僕は 気がつかなかった
Takashiは 何でもこなす器用な男だったが
人付き合いが苦手だった
だから 友達は僕一人
もし僕が カノジョと結婚したら 彼は どうなる・・・
何度も 僕を救ってくれた
アイツを見捨てることはできない・・・
そんな葛藤に悩まされているとき
Takashiが 僕のデスクにやってきた
「週末は 気温も上がるようだ！
たまには 朝一番で
関東最大のブナの原生林に行こうよ！！
インディジョーンズ博士！！」
Zuki Zuki Zuki・・・
心が疼いた
その日は・・・カノジョの誕生日だった
「ロケットサイクル！ 出してくれるよね！」
フラッシュゴードンの操る乗り物の名前・・・
それは 僕の真っ赤なVW JETTAのことだ
ああああああああああああああああ
返事のような ため息のような
声がこぼれた
しかし・・・僕は アイツを裏切れない・・・
その日は・・・
僕の心を映すかのように どんよりとした 天気になった
こんな日に ハイキングとは・・・
カノジョの顔と
Takashiの顔が交互に浮かぶ
複雑な表情の僕を見て
JETTAの真っ赤なボディも くすんで見えた
その時・・・
コツリとウインドウガラスをノックする音
！！
そこにいたのは・・・
カノジョだった
右手には Takashiからの 手紙があった
「僕も そろそろ
自分の 夢を目指したい
どこまでも蒼い空が広がる大地で
サトウキビ畑をつくることにした
レイ・キンセラ（フィールドオブドリームス）のような
奇跡の野球場をつくるために・・・
しかし・・・君一人じゃ 何もできないだろう
だからカノジョに 面倒を見てもらうように！
ガンバレよ 雷兄弟！！ 」
JETTAのカーナビは カノジョの故郷へセットされた・・・
一方 僕の二気筒エンジンに搭載された
ナビゲーションは
Takashiの サトウキビ畑の野球場に設定された
・・・トウモロコシじゃないところが・・・アイツらしい・・・
到着時間未定の
くねくねと曲がった ブルーラインが空に浮かぶ
それは いつか必ず 彼と出会えることを意味していた
「ありがとう・・・ そして・・・ また逢おう！雷兄弟！！」
僕は 空に向かって 呟いた
遠くで Crying In The Rainのような 雷が ごろりと啼いた
あと一人で優勝が決まる
名門チームのピッチャーは ネクストバッターズサークルを見て
にやりと笑った
一点差で迎えた最終バッターは
萬年控えの背番号13番・・・ そう 僕だ
緊張して
バットと脚が小刻みに震えた
ZubaaaaN ”ストラーイク”
目の前を通過した速球より
主審の 大きなコールに 腰を抜かしそうになった
レッドゾーンに振りきれたままの
僕の二気筒エンジン
アクセルを緩める間もなく 第二球がやってくる
ZubaaaaaaaaaaaaaaN
”スットライーーーク”
ミットに収まった後に 振られたバット
観客席が ドロリと笑った
「タイム！！」
親友のTakashiが 僕の所へ来ると言った
「空を見ろ！！ 今にも雷が落ちそうだ！
ロイ・ハブス（映画ナチュラル）がついてるぞ！
お前なら 絶対いける！」
Takashiの一言が
僕の二気筒エンジンの添加剤になった
三球目・・・
目を瞑って バットを振り抜いたとき・・・
雲の一部が キラリと輝いた
白球は バックスクリーンへ消え
13番のバットは ワンダーボーイになった
あれから ２０年・・・
同じ学校に 同じ職場・・・
僕とTakashiは いつも一緒だった
映画好きの二人は Tedとジョン（Mark Wahlberg）のように
いつも映画の話題の中で生きていた
そんな僕に
プリティウーマンのような カノジョができた
不器用な僕を まるごと受け止めてくれる
底抜けに明るい カノジョに
僕は Takashiとは違う 心地の良さを感じた
しかし・・・
カノジョとの関係が深まること
それは Takashiとの関係が 薄れていくこと意味していた
Cafébar Casablancaは
僕とTakashiが見つけた
映画談話で盛り上がるには最高の場所
そこに カノジョを 初めて連れていった日・・・
ジャンポールベルモンドのポスターの下で
一人 キールを飲んでいたTakashiに
僕は 気がつかなかった
Takashiは 何でもこなす器用な男だったが
人付き合いが苦手だった
だから 友達は僕一人
もし僕が カノジョと結婚したら 彼は どうなる・・・
何度も 僕を救ってくれた
アイツを見捨てることはできない・・・
そんな葛藤に悩まされているとき
Takashiが 僕のデスクにやってきた
「週末は 気温も上がるようだ！
たまには 朝一番で
関東最大のブナの原生林に行こうよ！！
インディジョーンズ博士！！」
Zuki Zuki Zuki・・・
心が疼いた
その日は・・・カノジョの誕生日だった
「ロケットサイクル！ 出してくれるよね！」
フラッシュゴードンの操る乗り物の名前・・・
それは 僕の真っ赤なVW JETTAのことだ
ああああああああああああああああ
返事のような ため息のような
声がこぼれた
しかし・・・僕は アイツを裏切れない・・・
その日は・・・
僕の心を映すかのように どんよりとした 天気になった
こんな日に ハイキングとは・・・
カノジョの顔と
Takashiの顔が交互に浮かぶ
複雑な表情の僕を見て
JETTAの真っ赤なボディも くすんで見えた
その時・・・
コツリとウインドウガラスをノックする音
！！
そこにいたのは・・・
カノジョだった
右手には Takashiからの 手紙があった
「僕も そろそろ
自分の 夢を目指したい
どこまでも蒼い空が広がる大地で
サトウキビ畑をつくることにした
レイ・キンセラ（フィールドオブドリームス）のような
奇跡の野球場をつくるために・・・
しかし・・・君一人じゃ 何もできないだろう
だからカノジョに 面倒を見てもらうように！
ガンバレよ 雷兄弟！！ 」
JETTAのカーナビは カノジョの故郷へセットされた・・・
一方 僕の二気筒エンジンに搭載された
ナビゲーションは
Takashiの サトウキビ畑の野球場に設定された
・・・トウモロコシじゃないところが・・・アイツらしい・・・
到着時間未定の
くねくねと曲がった ブルーラインが空に浮かぶ
それは いつか必ず 彼と出会えることを意味していた
「ありがとう・・・ そして・・・ また逢おう！雷兄弟！！」
僕は 空に向かって 呟いた
遠くで Crying In The Rainのような 雷が ごろりと啼いた
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