ポルターガイスト ~ 500 Tetto Rosso ~
20,2015 12:42
「あなたは、私の声を 聴いてくれるかしら・・・」
画面から かすかに聞こえるキャロルアンの
声を感じながら
私は 一向に減らないビールグラスを片手に持った
彼に尋ねる
「もちろんさ!」
急に目を細めて ぐいと私のほうに顔を向ける彼・・・
私と彼の鼻頭は
タルシウス(世界最小のサル)の手のひら程まで接近した
「今日は ハンバーガーセットが食べたいと思ってたろう?」
Guuuuuu
私のお腹から 正解の声が鳴った・・・
「君の心の声は いつでも しっかり聞こえているよ」
憎らしい彼は 笑いながら私のお腹をぽこりと 叩いた
お腹の声が 心の声かは別にして
そのころの私たちは
言葉にしなくても それとなく 相手の思いがわかるような気がした
だから 私たちは いつまでも一緒にいられる
そう思っていた
しかし・・・
私が新商品のプロジェクトリーダーに任命された頃から
彼は 私の心を読めなくなった
FIAT 500 Tetto Rosso を駆って向かう先は
何も言わなくても
二人の思いに 食い違いが起きたことはなかった
それなのに・・・
私が 潮風に当たりたいと感じたときに
彼が都心のショッピングセンターへ車を停めた
私の身体の中を
スルリと 何かが通りぬけていくような
冷たさを感じた・・・
彼は私の心を見失った・・・
そう思うと 私も彼の心が見えなくなった
お互いの心が見えるなんて・・・幻想だった
私は 彼と別れて 仕事に専念した
プロジェクトは大成功・・・
そして私は
会社に無くてはならない存在になった
仕事に時間をとられ
なかなか休めなかった
それは ポカリト開いた心の隙間を
感じさせないための 神様の配慮だったのだろうか・・・
真夏の太陽が 日本列島に戻ってきたころ
心の傷口も塞がり始めた
そんなある日・・・小さな休日ができた
しかし・・・
私には まだ休日は早かった
傷口から 漏れる小さな声・・・
私は東の岬にあるラベンダー畑に向かった
二人が大好きだった場所・・・
彼のFIATなら 3時間で到着する場所も
電車とバスに揺られて行くと 倍の時間を要した
少し時期遅れの ラベンダー畑の停留所で
下車するのは 私一人・・・
バスが 丘の向こうに消えると
甘い香りと海風に揺れる草笛のオーケストラが
私を癒した・・・
ほんの900秒・・・ラベルのボレロの演奏時間分だけ・・・
帰りのバスがやってくる時間を考えると
この場所にいられるのは それだけだった
口ずさんだ ボレロが終わった・・・
丘の向こうから さっき乗ってきたバスが
Uターンして戻ってくるのが見えた
と そのとき・・・
「もう行っちゃうのかい・・・
ラヴェルが言うには・・・
”ボレロは 17分以上かけて 演奏したとき最高の曲となる”そうだ」
!!
ラベンダー畑に横たわり
青空を眺めている彼がいた・・・

どうして・・・
「君の心を感じられない日は 一日だってなかったよ・・・」
分厚いグレーの雲に覆われていた 私は
夏の風によって 一気に解き放たれた・・・
そのとき・・・
彼の心が読めた・・・
「私のために・・・」
「君だって 同じことをしただろう?」
彼の心は 決して離れていなかった・・・
「もう少しだけ ここで流れる雲を見ていたわ」
「もちろんさ! でもこれが必要だろう?」
彼は 紙袋から
ハンバーガーを取り出した・・・
私の 心が・・・ ぐうと泣いた
画面から かすかに聞こえるキャロルアンの
声を感じながら
私は 一向に減らないビールグラスを片手に持った
彼に尋ねる
「もちろんさ!」
急に目を細めて ぐいと私のほうに顔を向ける彼・・・
私と彼の鼻頭は
タルシウス(世界最小のサル)の手のひら程まで接近した
「今日は ハンバーガーセットが食べたいと思ってたろう?」
Guuuuuu
私のお腹から 正解の声が鳴った・・・
「君の心の声は いつでも しっかり聞こえているよ」
憎らしい彼は 笑いながら私のお腹をぽこりと 叩いた
お腹の声が 心の声かは別にして
そのころの私たちは
言葉にしなくても それとなく 相手の思いがわかるような気がした
だから 私たちは いつまでも一緒にいられる
そう思っていた
しかし・・・
私が新商品のプロジェクトリーダーに任命された頃から
彼は 私の心を読めなくなった
FIAT 500 Tetto Rosso を駆って向かう先は
何も言わなくても
二人の思いに 食い違いが起きたことはなかった
それなのに・・・
私が 潮風に当たりたいと感じたときに
彼が都心のショッピングセンターへ車を停めた
私の身体の中を
スルリと 何かが通りぬけていくような
冷たさを感じた・・・
彼は私の心を見失った・・・
そう思うと 私も彼の心が見えなくなった
お互いの心が見えるなんて・・・幻想だった
私は 彼と別れて 仕事に専念した
プロジェクトは大成功・・・
そして私は
会社に無くてはならない存在になった
仕事に時間をとられ
なかなか休めなかった
それは ポカリト開いた心の隙間を
感じさせないための 神様の配慮だったのだろうか・・・
真夏の太陽が 日本列島に戻ってきたころ
心の傷口も塞がり始めた
そんなある日・・・小さな休日ができた
しかし・・・
私には まだ休日は早かった
傷口から 漏れる小さな声・・・
私は東の岬にあるラベンダー畑に向かった
二人が大好きだった場所・・・
彼のFIATなら 3時間で到着する場所も
電車とバスに揺られて行くと 倍の時間を要した
少し時期遅れの ラベンダー畑の停留所で
下車するのは 私一人・・・
バスが 丘の向こうに消えると
甘い香りと海風に揺れる草笛のオーケストラが
私を癒した・・・
ほんの900秒・・・ラベルのボレロの演奏時間分だけ・・・
帰りのバスがやってくる時間を考えると
この場所にいられるのは それだけだった
口ずさんだ ボレロが終わった・・・
丘の向こうから さっき乗ってきたバスが
Uターンして戻ってくるのが見えた
と そのとき・・・
「もう行っちゃうのかい・・・
ラヴェルが言うには・・・
”ボレロは 17分以上かけて 演奏したとき最高の曲となる”そうだ」
!!
ラベンダー畑に横たわり
青空を眺めている彼がいた・・・

どうして・・・
「君の心を感じられない日は 一日だってなかったよ・・・」
分厚いグレーの雲に覆われていた 私は
夏の風によって 一気に解き放たれた・・・
そのとき・・・
彼の心が読めた・・・
「私のために・・・」
「君だって 同じことをしただろう?」
彼の心は 決して離れていなかった・・・
「もう少しだけ ここで流れる雲を見ていたわ」
「もちろんさ! でもこれが必要だろう?」
彼は 紙袋から
ハンバーガーを取り出した・・・
私の 心が・・・ ぐうと泣いた
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