インターステラー ~ ダッジ・ラム ~
19,2015 23:35
「そこを左に行って・・・
そう・・・それから あの銀杏の木を超えたらもう一度左・・・」
その先に 何があるのか わからない
でも そこに行かなければいけない気がする・・・
彼と結婚して一か月
ようやく落ち着いた日常が戻ってきた
私たちは ぽかり ぽかりと浮かぶ
春の雲に誘われながら
海岸線を南下した
ドライブには
彼が選曲したミュージック・・・
これは結婚前からの習慣
今日も 彼の暖かい想いが伝わる ナンバーが続いた
「あっ・・・ここ・・・」
岬の突端から
太平洋にせり出すような桃の木が
ピンク色に染まっているを見つけたとき
私の頭を フワリと暖かい手が触れたような気がした・・・
桃の木の向かいには
白壁の ”STAY”という名のcafe
吸い込まれるように中に入ると
真っ白な髪のマスターが一人・・・
サイフォンに火を灯しながら
ポツリと海を見ていた
マスターの 後ろにある振り子時計は・・・
止まっていた

「いい趣味してるね 」
駐車場に停まっている ダッジ・ラムを 眺めながら
マスターが声をかけてきた
バリトンの優しい響きは 私のイメージ通りの声だった
「僕も 昔ラムに乗っていたんです」
「モカの趣味なんです」
彼が言うと マスターの頭上に 疑問符が浮かんだ
「Moka?」
「桃の香りで”モカ”といいます」
私は言った
マスターは・・・キラキラした瞳を大きくさせて にこりと笑った
「それで 君たちはモカを注文したのかい・・・
実は 今日 モカを頼んだ人は サービスの日なんだ」
カップルが 店を出るとき
私は ピーチティの香りがする クマのぬいぐるみを プレゼントした
「ありがとう!
昔 これと同じぬいぐるみを持っていたの うれしい! 」
ダッジ・ラムの助手席から
ぬいぐるみを抱いた 女性は いつまでも手を振っていた
遠い昔 家族でこの場所へ やってきた
ピクニックで食べた桃の種を 幼稚園だった娘と一緒に植えた
桃の木は 大きく成長した そして娘も・・・
家内に先立たれ 事業に失敗した私は 娘を捨てた
妻の指輪を 娘のバッグに忍ばせて・・・
そして 私は死ぬために この地にやってきた
しかし・・・
何をやっても うまくいかない私には
死ぬことすらできなかった
その日・・・
私の時計は止まった
自分は 存在しているのだろうか・・・
時が止まり 思考することもなく 私を知る人もいない空間は
無ではないか・・・
生も死もなく 明日も昨日もない
時空のはざまに私はいた
しかし カノジョは 現れた
家内に瓜二つの姿で・・・
親とは 子供の記憶の中で 存在するものだ
クーパー(Matthew McConaughey)が娘に言っていた
その通りだ・・・
カノジョの記憶の中に
私の記憶が ほんのわずかに残っていた
私は 存在していたのだ・・・ そして最愛の家内も・・・
カノジョの左手には
真新しい結婚指輪と
少し傷ついた 指輪がはめられていた
それは 30年前に 私が家内の薬指にはめた 結婚指輪だった
「おめでとう」
桃の木に そう呟いたとき
時を刻むのを やめていた振り子時計が
ポロンと鳴った・・・
そう・・・それから あの銀杏の木を超えたらもう一度左・・・」
その先に 何があるのか わからない
でも そこに行かなければいけない気がする・・・
彼と結婚して一か月
ようやく落ち着いた日常が戻ってきた
私たちは ぽかり ぽかりと浮かぶ
春の雲に誘われながら
海岸線を南下した
ドライブには
彼が選曲したミュージック・・・
これは結婚前からの習慣
今日も 彼の暖かい想いが伝わる ナンバーが続いた
「あっ・・・ここ・・・」
岬の突端から
太平洋にせり出すような桃の木が
ピンク色に染まっているを見つけたとき
私の頭を フワリと暖かい手が触れたような気がした・・・
桃の木の向かいには
白壁の ”STAY”という名のcafe
吸い込まれるように中に入ると
真っ白な髪のマスターが一人・・・
サイフォンに火を灯しながら
ポツリと海を見ていた
マスターの 後ろにある振り子時計は・・・
止まっていた

「いい趣味してるね 」
駐車場に停まっている ダッジ・ラムを 眺めながら
マスターが声をかけてきた
バリトンの優しい響きは 私のイメージ通りの声だった
「僕も 昔ラムに乗っていたんです」
「モカの趣味なんです」
彼が言うと マスターの頭上に 疑問符が浮かんだ
「Moka?」
「桃の香りで”モカ”といいます」
私は言った
マスターは・・・キラキラした瞳を大きくさせて にこりと笑った
「それで 君たちはモカを注文したのかい・・・
実は 今日 モカを頼んだ人は サービスの日なんだ」
カップルが 店を出るとき
私は ピーチティの香りがする クマのぬいぐるみを プレゼントした
「ありがとう!
昔 これと同じぬいぐるみを持っていたの うれしい! 」
ダッジ・ラムの助手席から
ぬいぐるみを抱いた 女性は いつまでも手を振っていた
遠い昔 家族でこの場所へ やってきた
ピクニックで食べた桃の種を 幼稚園だった娘と一緒に植えた
桃の木は 大きく成長した そして娘も・・・
家内に先立たれ 事業に失敗した私は 娘を捨てた
妻の指輪を 娘のバッグに忍ばせて・・・
そして 私は死ぬために この地にやってきた
しかし・・・
何をやっても うまくいかない私には
死ぬことすらできなかった
その日・・・
私の時計は止まった
自分は 存在しているのだろうか・・・
時が止まり 思考することもなく 私を知る人もいない空間は
無ではないか・・・
生も死もなく 明日も昨日もない
時空のはざまに私はいた
しかし カノジョは 現れた
家内に瓜二つの姿で・・・
親とは 子供の記憶の中で 存在するものだ
クーパー(Matthew McConaughey)が娘に言っていた
その通りだ・・・
カノジョの記憶の中に
私の記憶が ほんのわずかに残っていた
私は 存在していたのだ・・・ そして最愛の家内も・・・
カノジョの左手には
真新しい結婚指輪と
少し傷ついた 指輪がはめられていた
それは 30年前に 私が家内の薬指にはめた 結婚指輪だった
「おめでとう」
桃の木に そう呟いたとき
時を刻むのを やめていた振り子時計が
ポロンと鳴った・・・
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