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人間の証明 ~ Porsche924 ~

 22,2014 21:45
次の路地を曲がると そこには駄菓子屋があった
ビー玉をポケットに詰め込みながら
銀玉鉄砲を片手に 麩菓子を買った
そんな 僕らの社交場も 
今では 大きなトタン板が打ち付けられている 
昭和を封印したような 巨大な壊れたブリキのおもちゃのように

それから50m進んだところには 今年廃校になった母校の中学校がある

男友達の冷やかしに 思わず”いらない”と断った
バレンタインのチョコレート
初めて 女の子を泣かせてしまった あの校門も
北風が通り抜けることさえ 許さなないように
頑丈な鎖がかけられていた

Porsche924

フロントエンジンにFRという構成から 
ポルシェとは言えないと揶揄された924
しかし ドロケーで走り回った路地裏も
全幅1685mmのボディなら 苦にならない
レスポンスのいい回頭性は 確かに跳ね馬の血筋が息づいていた

そんな924の狭い視界から 飛び込んでくる 
街の景色には 思い出がいっぱい詰まっていた・・・

僕は 刑事役になって 探し続けた・・・
どこまでも どこまでも
やがて 空が ゆっくりと オレンジ色に変わるころ
924は 街が一望できる 山の頂に到着した

下界に広がる 猫の額ほどの空間・・・
これが僕の子供のころの世界
そして 母にとっては 生涯この広さが全宇宙だった

この街ほどいいものはない 
そう言って 外の世界を遮断してきた母・・・
そんな母の言葉を無視して 街を出た僕だったが
そこに理想郷はなかった

この街は間もなく 沈む・・・
中断されていた ダムの建設が再び始まる
思い出が詰まった この街は
永遠に水の中に封印されてしまう

母と来た この峠の景色も・・・

 「 母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
  ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
  谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。」

そっと あのフレーズを口にする・・・
その答えは 帰ってこない
母は この街が消える前に 人生を全うした

母は 幸せだ
この街と共に生きられたのだから・・・

子供のころ憧れていた ポルシェを中古で買った僕は
僕の中の 麦わら帽子を探しに ここへ来た 



しかし・・・

僕は 924のエンジンに火を灯した 
もう 戻ることはないだろう
都会へ続く一本道にハンドルを切ろうとしたとき

♪・・・・(携帯電話の着信音・・・)

 「Ken・・・chan・・・」
それは 校門で泣かしてしまった カノジョだった
街を彷徨っていた時 どこかですれ違ったらしい
地元に残っていた男友達を経由して 
カノジョは 僕の携帯を鳴した・・・

 「お帰り・・・」

それは 母のように暖かい一言だった

 「ただいま・・・」
僕が失くした麦わら帽子は 
カノジョがしっかり 持っていてくれた

924のリトラクタブルヘッドライトが開いたとき
光の線は もう一度 峠の街を向いていた





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