All you need is kill ~ RVR ~
26,2014 23:47
「ツギノシンゴウヲ ヒダリデス」
「また 遠回りを案内しているね」
カノジョが言った
RVRに搭載されたナビゲーションが
最短距離を示すことはなかった
前の車に設置してあったNaVIを 移植したため
もう7年も利用している
カノジョは 古いナビなんて意味がないと言うが
「この車は 賢いから 僕のハンドルさばきでも安全なルートを案内してくれるのさ」
僕は そう言って いつも弁護した
「何度経験しても 学習しなきゃ 先には進めないわよ・・・」
トムクルーズが好きなカノジョが言いたいのは
ケイジとリタの物語
付き合い始めて7年目を迎えても
一向に ゴールを目指そうとしていない僕に
カンパリオレンジのような 少しだけ苦みを加えたカノジョの一言
僕は ははは・・・と笑うしかなかった
いつものように 最短距離で通るより 5分遅れてカノジョの家に到着
玄関まで送ろうとしてエンジンOFFボタンを押す
RVRのメーターの ”SEE YOU”の文字が やけに浮かび上がって見えた
・・・いつもと・・・何か違う・・・
そう思い始めたとき 隣を歩いていたカノジョが言った
「やっぱり だめかなぁ 私たち・・・」
いつしかカノジョに頬には きらりと光る一筋の道ができていた
あれから 2週間
長かった梅雨も明けて 待ちゆく人々は 夏の訪れを喜んでいる
その中で 僕だけは 未だに梅雨前線真っ只中・・・
「私は時間を大切にしたいの・・・」
カノジョが僕に残した最後の言葉だった
確かに 僕の秒針は皆よりゆっくり回っている
どうして こんなに時間に追われて生きなくてはいけないのだろう
時間は 人間が生きやすくするための 単なるルールであり
何でも 早くできることが よいことだとは思わない
でも 僕は 時間を無駄にしているわけではない・・・
それだけは カノジョに伝えたかった
しかし そのチャンスは二度と来ないのだろう
「コノママチョクシンデス」
カノジョがいなくなって 一つだけ変わったのは
NAVIの案内が 最短距離を示すようになったことだ・・・
あと5分だけ 君と長く一緒にいたい
そう思って 僕は カノジョが乗っていないときに何度も 何度も
遠回りのルートをNAVIに学習させていた
そんな学習履歴を僕はリセットしたから
しかし・・・
Blueに点滅する もうランプ・・・
この記憶だけはリセットできない
ある夏の虫すら値を上げるような熱帯夜に
カノジョから連絡が入った
「ココアが・・・泡を吹いてるの・・・助けて・・・」
カノジョの愛犬ココア（バセットハウンド）の一大事・・・
僕は RVRを駆ってた
「夏バテだって・・・」
点滴で一気にで元気になった ココアを後部座席に乗せた帰り道
「今日はありがとう」
カノジョが言った
「でも 少し心配だったのよ このナビ古いでしょ
それに・・・遠回りするから・・・あらっ 今日は 遠回りしないのかしら・・・」
カノジョはNAVIのルート案内が いつもの場所で直進になっていることに気が付いた
「このNAVIは君と別れたとき 一度 死んだんだ・・・
だから もう遠回りはしない・・・
でも こいつの中には 少しだけ以前の記憶が残っている」
僕は NAVIのブルーボタンを押した
「京都・大徳寺 天橋立 鳥取砂丘・・・あらっこれは・・・」
「そう これは 僕と君が出会ってから これまでドライブした場所の履歴だ
こいつは 全てを記録している 僕と君の全てを・・・
だから 僕はこいつを手放せなかった・・・ でも・・・もういいんだ」
僕は ブルーのボタンを押そうとした
「待って・・・」
カノジョが僕の手を握った
「ココア・・・ RVRの中は気持ちいいわね！
だから 次の道を左折しましょう」
ワン！！
後部座席から 一言
NAVIが言った
「ドウロジョウキョウガ カワリマシタ ツギノシンゴウヲ ヒダリデス」
僕とカノジョの時間軸が 再び重なった
「また 遠回りを案内しているね」
カノジョが言った
RVRに搭載されたナビゲーションが
最短距離を示すことはなかった
前の車に設置してあったNaVIを 移植したため
もう7年も利用している
カノジョは 古いナビなんて意味がないと言うが
「この車は 賢いから 僕のハンドルさばきでも安全なルートを案内してくれるのさ」
僕は そう言って いつも弁護した
「何度経験しても 学習しなきゃ 先には進めないわよ・・・」
トムクルーズが好きなカノジョが言いたいのは
ケイジとリタの物語
付き合い始めて7年目を迎えても
一向に ゴールを目指そうとしていない僕に
カンパリオレンジのような 少しだけ苦みを加えたカノジョの一言
僕は ははは・・・と笑うしかなかった
いつものように 最短距離で通るより 5分遅れてカノジョの家に到着
玄関まで送ろうとしてエンジンOFFボタンを押す
RVRのメーターの ”SEE YOU”の文字が やけに浮かび上がって見えた
・・・いつもと・・・何か違う・・・
そう思い始めたとき 隣を歩いていたカノジョが言った
「やっぱり だめかなぁ 私たち・・・」
いつしかカノジョに頬には きらりと光る一筋の道ができていた
あれから 2週間
長かった梅雨も明けて 待ちゆく人々は 夏の訪れを喜んでいる
その中で 僕だけは 未だに梅雨前線真っ只中・・・
「私は時間を大切にしたいの・・・」
カノジョが僕に残した最後の言葉だった
確かに 僕の秒針は皆よりゆっくり回っている
どうして こんなに時間に追われて生きなくてはいけないのだろう
時間は 人間が生きやすくするための 単なるルールであり
何でも 早くできることが よいことだとは思わない
でも 僕は 時間を無駄にしているわけではない・・・
それだけは カノジョに伝えたかった
しかし そのチャンスは二度と来ないのだろう
「コノママチョクシンデス」
カノジョがいなくなって 一つだけ変わったのは
NAVIの案内が 最短距離を示すようになったことだ・・・
あと5分だけ 君と長く一緒にいたい
そう思って 僕は カノジョが乗っていないときに何度も 何度も
遠回りのルートをNAVIに学習させていた
そんな学習履歴を僕はリセットしたから
しかし・・・
Blueに点滅する もうランプ・・・
この記憶だけはリセットできない
ある夏の虫すら値を上げるような熱帯夜に
カノジョから連絡が入った
「ココアが・・・泡を吹いてるの・・・助けて・・・」
カノジョの愛犬ココア（バセットハウンド）の一大事・・・
僕は RVRを駆ってた
「夏バテだって・・・」
点滴で一気にで元気になった ココアを後部座席に乗せた帰り道
「今日はありがとう」
カノジョが言った
「でも 少し心配だったのよ このナビ古いでしょ
それに・・・遠回りするから・・・あらっ 今日は 遠回りしないのかしら・・・」
カノジョはNAVIのルート案内が いつもの場所で直進になっていることに気が付いた
「このNAVIは君と別れたとき 一度 死んだんだ・・・
だから もう遠回りはしない・・・
でも こいつの中には 少しだけ以前の記憶が残っている」
僕は NAVIのブルーボタンを押した
「京都・大徳寺 天橋立 鳥取砂丘・・・あらっこれは・・・」
「そう これは 僕と君が出会ってから これまでドライブした場所の履歴だ
こいつは 全てを記録している 僕と君の全てを・・・
だから 僕はこいつを手放せなかった・・・ でも・・・もういいんだ」
僕は ブルーのボタンを押そうとした
「待って・・・」
カノジョが僕の手を握った
「ココア・・・ RVRの中は気持ちいいわね！
だから 次の道を左折しましょう」
ワン！！
後部座席から 一言
NAVIが言った
「ドウロジョウキョウガ カワリマシタ ツギノシンゴウヲ ヒダリデス」
僕とカノジョの時間軸が 再び重なった
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