鳥 ~ DB24-1954 ~
10,2014 23:54
彼が乗っていた車は
1954製 アストンマーチン DB24 Drophead Coupe MkI
今日のように快晴の日 あの人はオープンカーにして港町を駆った
フルオートの空調に防音抜群の日本車に慣れていた私には
オープンで走ることの楽しみはよくわからず
いつも 携帯プレーヤーにサングラスをかけて助手席に座った

無数のウミネコたちが飛び交う下を通り過ぎると
ラベンダー畑が広がる丘があった
あの人は kinkinに冷やしたボルビックをゴクリと一口飲むと
いつも大の字に横たわって 空を流れる雲を追っていた
そんな彼を見ても 私は相変わらず携帯プレーヤーを聴いていた
「君は ”僕達急行 A列車で行こう”の小町君みたいだね・・・」
彼が そんなことを言って笑った
あの人は 映画のこと以外 なんにも知らない
情報を遮断しているような人だった
小学生が 地球の裏側にある街の小道まで
実際に歩いたかのように 詳しく調べられる時代に
情報から逃げ廻っているかのように
そんな彼が心配だった私は 会うたびに
最近のはやりの情報を中心に いろんなことを教えた
目をつむりながら
そうか・・・ へぇーと
相槌を打って 彼は私の話を聴いた
私は・・・彼が熱心に聴くほど 不安になっていった・・・
ある夏の日 彼の会社が不当たりをおこして 倒産した・・・
心配して 彼の会社に向かうと
そこには 無数の債権者がつめかけていた
入社5年目の彼には 何の責任もなかったと思う
しかし 従業員の個人情報が漏れてしまい
債権者は 個々の社員の自宅まで押し寄せた
「ヒッチコックの 鳥という映画を知っているかい・・・」
彼からの突然の電話だった
「あの 鳥が人を襲う・・・」
「そう・・・
どうやら僕はミッチ・ブレナー(Rod Taylor)になってしまったようだ
取り立て屋が カラスの群れに見えるよ・・・
どうやら 僕はこの街にはいられないようだ 君ともお別れだ・・・」
その時私は 少しだけホッとしたような気がした
彼を助け続けることに 少し疲れていたのかもしれない
私は イヤとは言わなかった・・・
暫くして 松山ケンイチに似た彼の友人と
偶然街で出会った
彼は 私たちが別れたことを知っていたので
つい私は 愚痴ってしまった
「何も知らない人だったから 私も疲れていたの・・・」
すると 少し考えた後にケンイチ君が ポツリと言った
「君は勘違いをしているよ・
僕たちの仲間の中で アイツほどの博識は いなかった
そう言えば いつか言ってたよ
君の フワリと優しい声で いろんな情報を教えてもらう時間が
僕には至高の時間だって
だから カノジョ以外の情報網はできるだけ遠ざけてるんだって・・・」
「えっ・・・」
私の頭の中にある 思い出日記が開かれる・・・
そして彼と一緒に過ごした時間の記憶が 呼び戻された
~彼は いつもどこか遠くを見ながらも 私の話を しっかり聴いていた
右の口元をきゅっとあげた スマイルで・・・~
ゴールデンウィークが過ぎたころ
私は 彼が大切にしていたアストンマーチンと同じ
DB24 Drophead Coupe MkI を手に入れた
そして・・・オープンでドライブしている
携帯プレーヤーもサングラスもせずに
すると 彼が楽しみにしていたものを共有することができた
ウミネコたちのオペラや
海風による四重奏
そして 紫色のラベンダーたちが踊る コーラスライン
あの時 彼と同じ体験をしていなかった自分が・・・
涙がこぼれた
彼の住む街は ここから500キロ離れたところにある
50歳の自分には少し厳しい道のりになる
しかし カノジョが決心したらの・・・
トラブルなく走ってやろう Aston Martin DB2は そう思った
※5月10日から16日までは 愛鳥週間ですよ
1954製 アストンマーチン DB24 Drophead Coupe MkI
今日のように快晴の日 あの人はオープンカーにして港町を駆った
フルオートの空調に防音抜群の日本車に慣れていた私には
オープンで走ることの楽しみはよくわからず
いつも 携帯プレーヤーにサングラスをかけて助手席に座った

無数のウミネコたちが飛び交う下を通り過ぎると
ラベンダー畑が広がる丘があった
あの人は kinkinに冷やしたボルビックをゴクリと一口飲むと
いつも大の字に横たわって 空を流れる雲を追っていた
そんな彼を見ても 私は相変わらず携帯プレーヤーを聴いていた
「君は ”僕達急行 A列車で行こう”の小町君みたいだね・・・」
彼が そんなことを言って笑った
あの人は 映画のこと以外 なんにも知らない
情報を遮断しているような人だった
小学生が 地球の裏側にある街の小道まで
実際に歩いたかのように 詳しく調べられる時代に
情報から逃げ廻っているかのように
そんな彼が心配だった私は 会うたびに
最近のはやりの情報を中心に いろんなことを教えた
目をつむりながら
そうか・・・ へぇーと
相槌を打って 彼は私の話を聴いた
私は・・・彼が熱心に聴くほど 不安になっていった・・・
ある夏の日 彼の会社が不当たりをおこして 倒産した・・・
心配して 彼の会社に向かうと
そこには 無数の債権者がつめかけていた
入社5年目の彼には 何の責任もなかったと思う
しかし 従業員の個人情報が漏れてしまい
債権者は 個々の社員の自宅まで押し寄せた
「ヒッチコックの 鳥という映画を知っているかい・・・」
彼からの突然の電話だった
「あの 鳥が人を襲う・・・」
「そう・・・
どうやら僕はミッチ・ブレナー(Rod Taylor)になってしまったようだ
取り立て屋が カラスの群れに見えるよ・・・
どうやら 僕はこの街にはいられないようだ 君ともお別れだ・・・」
その時私は 少しだけホッとしたような気がした
彼を助け続けることに 少し疲れていたのかもしれない
私は イヤとは言わなかった・・・
暫くして 松山ケンイチに似た彼の友人と
偶然街で出会った
彼は 私たちが別れたことを知っていたので
つい私は 愚痴ってしまった
「何も知らない人だったから 私も疲れていたの・・・」
すると 少し考えた後にケンイチ君が ポツリと言った
「君は勘違いをしているよ・
僕たちの仲間の中で アイツほどの博識は いなかった
そう言えば いつか言ってたよ
君の フワリと優しい声で いろんな情報を教えてもらう時間が
僕には至高の時間だって
だから カノジョ以外の情報網はできるだけ遠ざけてるんだって・・・」
「えっ・・・」
私の頭の中にある 思い出日記が開かれる・・・
そして彼と一緒に過ごした時間の記憶が 呼び戻された
~彼は いつもどこか遠くを見ながらも 私の話を しっかり聴いていた
右の口元をきゅっとあげた スマイルで・・・~
ゴールデンウィークが過ぎたころ
私は 彼が大切にしていたアストンマーチンと同じ
DB24 Drophead Coupe MkI を手に入れた
そして・・・オープンでドライブしている
携帯プレーヤーもサングラスもせずに
すると 彼が楽しみにしていたものを共有することができた
ウミネコたちのオペラや
海風による四重奏
そして 紫色のラベンダーたちが踊る コーラスライン
あの時 彼と同じ体験をしていなかった自分が・・・
涙がこぼれた
彼の住む街は ここから500キロ離れたところにある
50歳の自分には少し厳しい道のりになる
しかし カノジョが決心したらの・・・
トラブルなく走ってやろう Aston Martin DB2は そう思った
※5月10日から16日までは 愛鳥週間ですよ
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