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ベルリン・天使の詩 ~ ムルシエラゴ ~

 06,2014 23:56
勇気を出して カノジョに告白しよう
そう思いながら 3年がたった
今日 カノジョは東京の大学に進学するため
この街を出ていく

今日しかない・・・
この街で 父の自動車整備工場を継ぐ僕には
ラストチャンス

列車が発車する2時間前には 
駅でカノジョを待とうと思っていた
ところが・・・突然父が部屋にやってきて・・・
 
 「急きょ 磨かなきゃいけない車が入った
  手伝ってくれ!」
父からの 相変わらずの無茶ぶり・・・
今日だけは勘弁してくれと 言いたかったが 
一人で僕を育ててくれた父に 
そんなことは言えるはずもない
クリーニング程度なら 何とかなるだろう
仕方なく 工場に入ると そこには・・・
 「うわぁ!!!! ランボルギーニ ムルシエラゴ!!!」

カタログでしか見たことのない スーパーカー
威風堂々とした 猛牛からは すさまじいオーラが浮かんで見えた
感激の嵐が 胸の中で駆け巡る
そして その感激も疲れて立ち止まったころ・・・
冷や汗が・・・
こいつは2時間の仕事じゃない・・・

プカリと浮かんだ 妄想の中のカノジョ・・・
健康的な栗色のロングヘアーを 
フワリ サラリと躍らせながら走り去っていく
・・・そして 僕の現実視界は モノトーンになった

いつも こうだ・・・
天使は 憂鬱な人に元気を分け与えるために
我々の 後ろからそっと手を差し伸べる・・・
大きな奇跡とはいかないが ほんの少し心が暖かくなるような奇跡
だから 人は明日に期待し 生きていく
『ベルリンの天使』は そう言っていたではないか・・・
でも 僕の背後に 彼らがいた ためしがない
むしろ このムルシエラゴのように
真っ黒なデビルが 取りついているのだろう



 「何を ぼっとしているんだ さぁ 頼んだぞ!」
父の声に 否応なく頷いた僕は洗車を始めた
 「ランボルギーニムルシエラゴ 
  お前のおかげで 僕はカノジョと別れることになそうだ・・・」
僕はいつも 作業中 こんな風に車に話しかける

 「ランボルギーニムルシエラゴ 
  いや本当のところ 僕はカノジョと 付き合ってはいないんだ・・・」

磨くほどにどこまでも漆黒なボディが 僕の心を吸い込んでいく
 「ランボルギーニムルシエラゴ 
  実は彼女と 話したこともないんだ ずっと同じクラスにいたのに・・・」

作業の途中 どこから聞きつけたのか 
地元の常連5人(みんな父の飲み友達ばかり)が 
次々にムルシエラゴを見に来た
そして言った
 「なんでこんな田舎にスーパーカーがあるんだ?」

そのたびに 僕は父親から聞いた 顛末を話した
 
 「このランボルギーニ ムルシエラゴは 
  不動産会社の社長さんの車なんだ
  友達の結婚式に サプライズで用意されたんだけど
  昨日の雨の中 山道を通り抜けてたもんだから 泥だらけ!
  そこで 急きょ明日の結婚式までに 
  ピッカピカに仕上げてほしいと
  ホテルで 駄々をこねた
  その結果 こいつは今 この工場にいる訳!
  おかげで 僕のスケジュールは台無しさ!」

Murciélago

そう言うと 5人が5人共 僕にこう言った
 「坊主に スケジュールなんてあるの?」

失礼なおじさんたちだ! 
もう18歳になるんだ 坊主でもなけりゃ スケジュールもあるさ!
そう思いながらも 僕はムルシエラゴを磨き続けた

外が うっすらと暗くなり一番星が輝き始めたころ
作業は完了した
その時 真っ黒なロングコートを羽織った 
男が工場の入り口に立っているのに気付いた
悪魔か・・・??

 「作業は 終わったかね?」
どうやら コイツの 持ち主 不動産会社のシャチョウさんのようだ
 「えぇ たった今 終わったところです
  曇り一つない 漆黒の鏡面に仕上がっていますよ!」

男は 車をぐるりとひと廻り 
にっこり笑て 頷いている

『どんなことがあっても妥協はするな』
母さんが 死んだときも 父さんは仕事をしていた
そんな父のポリシーが いつの間にか僕の中にも流れていたのか・・・
カノジョのことも忘れて 仕事に没入していた僕・・・
しかし 依頼人の満足な顔を見て ホットしたとき
後悔の念が押し寄せてきた・・・
もう カノジョとは 一生逢えない・・・

 「見事な出来栄えだ ありがとう」
モノトーンの世界の僕は シャチョウさんに頭を下げた

 「このランボルギーニ ムルシエラゴ 大切に乗ってあげてください」
そう言って キーを渡そうとした瞬間
男がニコリと 微笑んだ
 「やったね!」

?!

僕には シャチョウさんの言葉の意味が分からなかった

 「んー 仕事の腕はいいんだけど 君 ノリが悪いね!
  ”めぬけのからしじょうゆあえ”って知らない?」
 「めぬけ・・・」
困惑する僕に シャチョウさんが言った

 「知らないの? あっそっ!」
そう言うと シャチョウさんは 
きりっと姿勢を直し 胸を張って言った
 「実は 私は天使なのです
  君は幸運の合言葉を10回唱えました
  だから 君の願いを一つ叶えてあげましょう」
 
何がなんだかわからない僕・・・途方に暮れていると
 「んーもうっ! 
  ノリだけでなく頭の回転もよくないね!
  君は ”ランボルギーニムルシエラゴ”を1日に10回唱えたでしょ
  これが幸運の合言葉だった訳!」

どうやら おめでたい人のようだ・・・
そう思った僕は シャチョウさんに 合わせて
早くこの状況から抜け出そうと思った

 「それなら 時間を今日の朝に戻してほしい」
僕は ついムキになって言った

するとシャチョウさんは言った
 「違う! 違う!
  それは 君のホントの願いじゃないでしょ!
  第一 そんなことをして 君が違う行動をとったら
  この車が 綺麗にならないじゃないか!」

そう言うと シャチョウさんは ムルシエラゴに乗った
 「君の本当の願いを叶えてあげよう」

Brorrrrrrrrrrrrrrrrr!

漆黒の車は 爆音と共に走り去った
やっと 行ったか・・・ ホッとした瞬間
工場の入口に 人影・・・

!!

カノジョが立っていた
 「ずっと 伝えたいことがあったの・・・
  でも 言えなくて・・・
  仕方ないかな・・・って思ったんだけど・・・
  昨日の雨で 電車が動かなくって・・・
  それで・・・
  ずっと ずっと 貴方がスキでした・・・」

僕の 肩をポンと誰かが押したような気がした
 「僕も・・・」

Brorrrrrrrrrrrrrrrrrr!
遠くで ムルシエラゴのエギゾースとが響く中
僕の視界が フルカラーになった

※「めぬけのからしじょうゆあえ」は 私の大好きな 半村良さんのお話です・・・





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