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ストレイトストーリー ~ Demio ~

 29,2014 23:20
 「この仕事は 僕が行くしかないんだ・・・ごめん・・・」

 「今年の開花宣言の日には 千鳥ヶ淵でデートするって約束だったのに
  私との約束が 日に日に軽くなっているみたい・・・」

カノジョの返事は どこかフワフワしていた

 「今度 埋め合わせするから・・・」
そう言う僕に

 「去年の誕生日も クリスマスも そう言ってたよね・・・」

彼女が 最後にポツリと呟いた一言は
僕のハートに
音もなく Shuuuuuuuuuuと 突き刺さった・・・


 「仕方ないじゃないか・・・」
神様もひどいもんだ 
一年中忙しいわけではないのに
カノジョとの約束の日ばかり アクシデントが起きる・・・

 「仕方ないじゃないか・・・」
もう一度 独り言を囁きながら 僕は取引先の 扉を開いた・・・

カノジョとの約束を反故にして挑んだ商談は
結局不発に終わった 
カノジョが あんなことを言うから・・・
気になって 商談どころじゃなかった
そんな言い訳が 頭をよぎったとき



夜空が 星屑で一杯なことに気付いた・・・

ストレイトストーリーで見た夜空と同じだ・・・
仲たがいをしていた兄弟が 兄の病気をきっかけに
数十年ぶりに再会する・・・
兄弟で見るあの星空に

 「この空を カノジョにも見せてやりたかったな・・・」

そう思ったとき やはり今日東京にもどろうと思った
しかし もう終電はない

!!
ふと目の前に レンタカー店があることに気付いた
駐車場に止められた デミオは Shinagawaナンバーだった

神様は どこまでも気まぐれ
レンタカーの店員は 乗捨てられた車を東京まで利用するなら
正規の利用だけでOKという
僕は デミオを借りることにした

富山インターに入ろうとしたとき・・・
一人のヒッチハイカーが目についた
手にしているプラカードには
 「高崎 以外のどこか」
と書かれている
デミオは 彼を受け入れた

青年は家業を継ぐのが嫌で 放浪の旅をしているらしい

 「自分は 古臭い職人にはなりたくないんです」
彼は言った

僕にも そんな時があった
親に押し付けられるような 感触が懐かしく思えた

 「それに この時代に 結婚相手も親が決めようとするんです
 そんなこと ナンセンスでしょ!」

確かに・・・

 「ただ 相手の子は とてもいい子で 僕も好きになり始めていました
  しかし 親の意見に染まっていくようで・・・怖くなった 僕は家を飛び出しました」

僕は 青年に語った
 「今の行動のほうが よっぽど ご両親の影響を受けているね」
僕が言うと 青年はむきになっていった
 「何がです! 僕は自由になった!」

 「君の放浪は ご両親から逃れるためであり 主語がご両親だ
  許嫁の女性を振ったのも ご両親が進めるから ほら主語がご両親
  つまり 君の今の行動は 全て ご両親を基準に動いている
  このままじゃ 君は いつまでたっても 自立できない」
 「・・・」
青年は暫く黙り込んでいた やがて振り絞るように一言
 「それじゃ どうすればいいんですか・・・」

 「そんなことは はじめから わかっているじゃないか」
 「えっ・・・」
僕は 青年のプラカードを指さした
 「高崎以外のどこか・・・この書き方は
  その場所が 君にとって大切な場所だといっているようなもんさ
  今までだって 高崎の話を ずっとしてきたんだろう
  ご両親や 彼女のことを・・・ 
  つまり君は 潜在的に 高崎に戻りたかったということだ
  だから 僕は 君を高崎でおろそうと思っている」
青年は驚いてこちらを向く
 「ご両親は 自分の息子を苦しめようとは思っていない
  話し合えばきっとわかるはずだ 心を割って話してごらん
  そして 彼女には 謝るんだ 君も彼女も両思いなのだから」

青年は 助手席で泣いていた・・・
先を急ぐ旅だったが 僕は 彼を実家に送り届けた
いつまでも手を振る彼に ハザード挨拶しながら
僕は再び 東京へ向かった
 「彼にあんなことを 言える資格があったのだろうか・・・」

そんな疑問符を浮かべながら デミオは東京に向かった

demio

23:55・・・
玄関チャイムが鳴った
 「こんな夜遅くに・・・誰・・・」
そっと インターフォンモニターを覗いた

!!

モニターには 画面いっぱいに 
ピンク色のチューリップと
そして星空のように白くちりばめられたカスミソウが映っていた

もうしばらく このまま見つめていよう・・・
これだけ待ったのだから






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