FC2ブログ

第17捕虜収容所 ~ Bighorn ~

 18,2014 23:12
男子寮は 第17捕虜収容所と呼ばれていた
梅林に囲まれ 春には甘い香りが立ち込める長閑なこの場所が
なぜ 捕虜収容所などという 名称で呼ばれるのかといえば
門限17時と女人禁制という2大看板をはじめとする
17の厳しい規律があったことに起因していた

『伝統こそ道なり』という玄関に掲げられた書を
こよなく愛する鬼軍曹のような寮長は ビックホーンと呼ばれていた 
禁忌事項を破った者に ホイッスルを吹いて警告するからという者
また 寮の前にある駐車場に停車された愛車 
Isuzu Big Hornに由来するという者
その説は二つに割れていたが 正解を確認する寮生はいなかった
できれば 寮長とは深く接したくない だれもがそう思っていたからだ

Bighorn

軍隊のように厳しい寮生活だったが 
高額な仕送りを期待できない僕にとっては
この寮を追い出されるわけにはいかない
毎日 寮則だけは 確実に順守していた

不思議なもので半年もすると
規則は 完全に生活リズムになっていた
愚痴をこぼしていた 僕のカノジョも 
僕の門限に合わせた結果 
成績も上がったようで 何も言わなくなった 

しかし 
突然の腹痛で 学校を休んだ僕を
介護するために 入寮を申し出た
もちろん 寮長は 例外を認めなかったが
カノジョは こっそり寮に忍び込み 僕を看病した
三日間 うなされ続けた僕が ようやく峠を越えたころ 
看病疲れのカノジョが 
僕の部屋で居眠りしているところを 寮長が発見した



 「本施設 始まって以来の出来事だ!」
怒髪天の寮長の横で カノジョが泣きそうな顔をしている
彼の頭に 大きな角が見えた
Big Hornの由来は どうやらこれが正解のようだ 

 「退寮も やむを得ないか・・・」
僕が そう思ったとき
寮長がカノジョをチラリとみると ぼそりと呟いた
 「どうせ 病気を口実に いちゃついていたんだろう 
  どうしょうもない女だ!」
カノジョへの侮辱に 我を忘れた僕の右拳は 
気が付けば 彼の左頬を捉えていた

 「きっ貴様! 退学を覚悟しろ!」

その時 焦点の合わない視線で外を見ていた
カノジョが 突然走り出した!
 「逃げるのか!」
後を追う寮長 それにフラフラしながら続く僕
すると カノジョは 厨房に入っていった!
焦げ臭い・・・

厨房は コンロの油が引火し火柱が天井を焦がし始めていた

 「あっ 火をつけっぱなしだった・・・」
寮長が叫んだ

カノジョは 厨房入ると同時に 
自分が着ていたコートに水を含ませ コンロに向かって被せた

Jyuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu

水蒸気と共に 獰猛なオレンジは姿を消した

 「よかった・・・」
よろけるカノジョを 僕はぐいと掴むが 
まだ病み上がり 
一緒に倒れそうになるところを 寮長が支えた

 「お前たちの騒動のおかげだ・・・礼は言わん」

そう言うと寮長は 厨房を後にした

その後 僕の腹痛の原因が寮の食事による 軽い食中毒だったこともあり
カノジョが寮の中にいたことは うやむやになった

後日カノジョのもとに 送り名のない贈り物が届いた
中身は あの日 黒こげになったコートより
数段上等な バーバリーのダッフルコートだった

 「ここは 父さんが4年間生活していた場所だ
  飯は旨いし 寮長も最高だぞ! お前もしっかり勉強できるだろう!」
そう言うと 息子の背中を押した

玄関には寮長が立っている 頭髪は真っ白になっていたが  
頑固な雰囲気はあの頃のままだ
駐車場には しっかり手入れされた あのビックホーンが駐車されている
僕は 敷地の外で家内を待たせ 寮に入ろうとした

Piiiiiiiiiiiiiiiiiiiii

懐かしいホイッスルが鳴り響いた 
 「奥さんも 連れてきなさい!」
玄関から 寮長が叫んだ
寒さがまだ 身に染みる時期だったが 
梅林のつぼみは 大きく膨らみ始めている
雲の合間から フワリと顔を出した太陽が 寮の玄関を照らす

 「伝統は育むものなり」

遠くから 吹奏楽部の演奏が聞こえた
~第17捕虜収容所 テーマ曲 ジョニーが凱旋するとき~







「STALAG17 第17捕虜収容所」2008年公演パンフレット 演出:鈴木裕美 三宅健・田中幸太朗・袴田吉彦

中古価格
¥1,000から
(2014/1/18 22:41時点)




Isuzu Bighorn 90-95 Owners Handbook

新品価格
¥4,057から
(2014/1/18 22:43時点)


スポンサーサイト



Latest Posts -

Designed by Akira.

Copyright © 映画と車が紡ぐ世界 All Rights Reserved.