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涙は潮の味 ~ Z3 ~ 眩暈 ~

 07,2013 23:10
休みの日は 
フードを開けたZ3で 灯台へ向かうのが 僕たちのデートコースだった
ボーレアスが冬の冷気を運ぶころになると
行き交う車もほとんどない 草原の中の一本道は
風と海鳥 そしてZ3のエンジンが奏でる三重奏が響き渡る
その音色に合わせて サイドノットで巻かれた僕のマフラーは 
カノジョの栗色のロングヘアとクイックステップを踏んだ

Z3

karaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan
遠くで教会の鐘がなる
ハンドルを握る僕は カノジョの純白のウェディングドレスをイメージした

その日のカノジョは いつもより 笑顔が輝いていた
嬉しいはずなのに なぜか打ち上げ花火の最後を見ているような
不安感がよぎった

灯台に上った僕たちは ここで二人の夢を語りあった
 「いつか この海の景色を独り占めするような家を建てよう」

しかし いつもなら すぐに「そうね・・・」と続くカノジョの声は無く
僕の 思いもよらない フレーズが帰ってきた
 「別れて・・・」

その日から 僕は
スコティ(ジェームススチュワート)のように
高所恐怖症になった・・・
高い場所に上ると めまいが僕を襲った



3年前のことだ

そして 今 僕はこの灯台に帰ってきた
ぐわりと 傾くようなめまいを 感じながらも 
ひたすら 遠くの海を見つめる

karaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan
遠くで鳴る教会の鐘の音が
頭の中で反響し 僕のめまいはさらに大きくなる
このままだと 天と地が逆さになりそうだ

どうして 高所恐怖症の君が この場所に戻ってきたんだい?・・・
僕にまとわりつく ボーレアスが尋ねてきた

 「3年前 突発性難聴になったカノジョは 
  今ではほとんど耳が聞こえない・・・
  君たちが奏でる 美しい音色も もう聴くことはできないんだよ
  あの日 僕を気遣って 突然別れを切り出したカノジョは 
  どれだけ淋しかっただろう・・・ どれだけ辛かっただろう・・・
  そんなカノジョの苦しみを 知らず僕は・・・ 
  そんな二人の再出発には この場所しかないんだよ」

KanCon KanCon KanCon KanCon ・・・

背後から 階段を上る音が聞こえる

頭の痛みをこらえながら フワリと振り向いた僕の前に
真っ白な天使が立っていた
トーマス・エジソンが蓄音機で初めて人の声を録音した12月6日 
『音の日』に僕たちは結婚した

僕は 拳骨をカノジョの目の前に出す
そして 親指と人差し指 小指の3本を立てた・・・(I LOVE YOU・・・手話)
顎鬚をつかむような仕草(幸せです・・・)で答えるカノジョ 

自然が奏でるオーケストラを肌で感じながら
僕はカノジョをしっかりと抱きしめた
いつの間にか 僕らの顔は濡れていた 
そして・・・思った

どうやら・・・ ホントに天地がひっくり返ったようだ・・・
海の水が降ってきて 僕らの顔は潮水でびっしょりだ・・・ 




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