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稲穂の懺悔 ~ Sharan ~ パーフェクトワールド ~

 31,2013 23:56
 「見てごらん 世界は完璧だ」
夏の日差しを浴びて ぐんと伸びた稲穂たちが
風にあおられ大きく靡く グリーンの大海原
その真ん中で 
タオルを首に巻いた祖父が スワローズの野球帽をかぶった僕に言う
 「わかるか!」

祖父の有無を言わさぬ力強い言葉に 一瞬 首を縦に振りそうになるが・・・
どこまでも続く田園風景を 改めて見渡しても
なにが完璧なのか 僕にはわからなかった
僕は 恐る恐る・・・首を傾げた

それを見た祖父は 僕の頭を撫でながら よっしゃ よっしゃ と笑った
 「それじゃぁ!」
祖父が スッと左手を挙げる
すると 遠く山肌からグワリと とてつもなく大きな山犬が降りてくた
!!
僕は とっさに 祖父の背中に隠れた
 「hahahaha 大丈夫 大丈夫」
祖父の言葉に そっと顔を出す
それは強風に煽られた 稲穂の影だった・・・
Hyuuuuuuuuiiiiiiiiiiii
風の塊が 僕と祖父の体を通り過ぎていった
何とも言えない 爽快な気分!
その瞬間 祖父はこの世界を操っているようだった

sharan1

大杉選手や若松選手よりかっこいい 
土まみれの祖父が 僕のヒーローだった
 
そんな祖父は ある台風の晩に 田圃の様子を見に行ったきり 帰らなかった
体中の水分が涙になって 流れきったとき 
僕はヒーローを奪ったこの世界を呪った

世の中に 完璧なんかない・・・
その日から 僕の人生は目的のない ただレールを歩くだけの存在になった

そんな僕を救ったのは 幼馴染のカノジョと
二人の間に生まれた 子供たちだった
いつも笑顔が絶えない我が家が 僕に人生の目的を与えてくれた
家族の笑顔のために 少しでもお金持ちになろう
僕は心に誓った

その誓いが・・・誤りの始まりとも知らずに・・・

ある日 いつものように 終電で帰宅した僕を待っていたのは
時計の秒針が奏でる音と 机の上に置かれた 離婚届けだけだった

僕の脳裏に 再び虚無が押し寄せてきた
翌日 僕は初めて会社を欠勤した
部屋を真っ暗にした僕は 映画を見た 
パーフェクトワールド・・・そこに何かを求めて・・・



ブッチ・ヘインズ(Kevin Costner)が横たわるとき
僕は祖父を想いだした・・・
 「やはりパーフェクトワールドは 存在しない・・・」
僕は 凍り付くような家を飛び出した

家族のために買ったシャランは 
一人では淋しい
地球上で 一人ぼっちになったような気がした
あてどもなく 彷徨うようなドライブ 
ブッチと祖父が交互に現れた・・・

空には オリンポスの神々が闊歩する
その中を シャランは進んだ・・・
やがて 神々の宴に終わりを告げるかのように
東の空が 明るくなり始めた トワイライトタイム

そのとき 僕は 自分が向っている場所を ようやく理解した
祖父のいる場所・・・

今では 所有者は変わっているが 
あの時のように たわわに実った稲穂がどこまでも続いていた
大自然は 大きく両手を広げている
いつでも寛大に 僕を迎え入れようとしている

シャランを降りると 僕は黄金色の海の真ん中に立った

 「風の声を 聴いてごらん」
祖父の声が 聴こえた

僕は そっと目を瞑ると耳を澄ませた
!!

僕は そっと左手を挙げた
すると 山肌から フワリと黒い影が降りてくる
それは フワリとした天使のように思えた
hyuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu

天使が そっと僕にの頬を撫でたとき
世界との一体感を感じた

 「これがパーフェクトワールドなのだろうか・・・」

今でも 祖父やブッチが言うパーフェクトワールドが何なのka
僕にははっきりとは わからない

でも 少しだけ僕は この世界が好きになった

 「男になったな!」
祖父が 空の上から そう言っているような気がした

シャランに戻った僕は 
カノジョの携帯に電話をかけた 

カノジョにゴメンという度に
シャランの外では稲穂たちが 何度も 何度も 頭を下げていた

 
 




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