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ストラックアウト ~ Miura ~ Mr.インクレディブル

 22,2013 23:22
隣席の若者たちは
開放的な夏の陽気に煽られたのか かなり声量が大きい
 「うるさいねぇ お店では静かにしなくちゃ」
中学生の息子Kenが言うと
 「しっ! あんな人たちに絡まれたくないわ」
家内が慌ててKenの口をおさえた
 「僕らには 色々言うくせに ああいう人には何も言えないのかねぇ」
高校生の息子Junが 僕を見ながら 冷たく言い捨てた

おいおい 俺は仮にも父親だぞ そう思いながらも
何も言えない僕は 聴こえないふりをして
アイスカフェオレをストローで一口
Zu zu zu・・・
家内の冷たい視線が 僕の胸を突き刺した・・・

4年ぶりに 夏休みを取ることができた僕は
半ば強引に 家族旅行を決行した
バラバラになりかけた家族の絆を取り戻すため
選んだ場所は 栃木の観光牧場



朝一番から アルパカやポニーと触れ合うと
いつもは 愚痴ばかりの我が家のモンスターたちも 笑顔でいっぱい
旅の成功を確信した僕だったが 
正午を過ぎると パワーアップしたSunshineに
家内が早くも 白旗を掲げた 
美容に大敵な紫外線を避けるべく 
カノジョは 男性陣に『牧場特製MILKかき氷タイム』を提案した
もう少し 動物たちと無邪気に戯れたいと思ったが
子供たちは ”アルパカより かき氷” 
仕方なく 僕もカノジョの提案を受け入れた

そして今・・・
マナーの悪い隣席の若者たちのおかげで
和気あいあいの家族旅行に 暗雲が立ち込めた
 「休憩は終わりにして アーケードで体を動かそう」
君子危うきに近寄らず
相変わらず 視線の攻撃を仕掛けてくる家内に
気付かぬふりをして 
僕はそそくさと店を出た 

アーケードコーナーは 体感ゲーム場
普段携帯ゲームに明け暮れる 子供たちには新鮮だ
Junは フリスビーの的当てゲームに 2000円も投資した
目的は 初音ミクのフィギュアのようだが 
獲得できるとは思えなかった

一方 Kenは 射的に夢中 こちらはゲームで鍛えた腕で 
既にキャラメルを5つもgetしていた

子供たちが遊ぶ様子を見てニコニコしていた僕に
 「あなた ピッチャーだったんでしょ なんか取って!」
家内が指差したのはストラックアウト
軟式ボール11球で 9つのパネルを抜くゲーム
 「ダメダメ もう ボールなんて投げられないよ」
そう言って その場を逃げようとした時・・・

miura

!!
景品の棚を見て 僕の触手が反応した
 「あれは 幻の名車 ランボルギーニミウラ P400SV の
  ダイキャストモデルじゃないか!」
しかし・・・野球とは縁を切ったんだ・・・ 
高校野球地区予選で華々しくデビューした僕は
2回戦目の前日 ケンカの仲裁に入ったことが暴力行為と指摘され
野球部から除籍された 
灰色の思い出が僕の心にジワリとにじみ出てきた
 「大丈夫?」
蒼白の僕を見てカノジョが声をかけてきた

その時 先ほどの若者たちが僕をグイと押しのけた
 「やらないならどいて!
  俺 こういうの得意! 元大学野球のエースだし!」
そう言うと 長髪にアロハの男がゲームにチャレンジした
しかし結果は 5枚抜き 
男は 遊びじゃ燃えないなどと しきりに弁解している
 「どけっ! 野球なんて 高校野球だろうが プロ野球だろうが 所詮遊びだ 
  こんな遊びで失敗なんかするな!」
無口だった坊主頭の男が 長髪男に言って 自らがマウンドに立った

Dooon!
見事なオーバーハンドから繰り出される球は 素人とは思えない
男は あっさりと8枚を抜いた
 「Takashi-Kun かっこーいい!」
取り巻きの女性たちが ミンミンゼミのように 彼を褒め称える
あと一枚 右下9番を開ければ商品ゲット
男は にやりと笑う 余裕のようだ

しかし 農作業が似合いそうな70代位の
係員(オヤジ)のスマイルが気になった 
シュッ!
ボールは 一直線に9番に向かう 
Baaaan!
ボールは見事に枠に入ったが パネルは倒れなかった
 「はいザンネーン! 
  ここは ボール1.5個分のポイントに当たらないと倒れませーん」
オヤジが言った

 「ふざけるな! 詐欺じゃないか!」
若者たちが オヤジに詰め寄る
 「まあまあ 熱くなるなよ
  まだ2球あるぞい 頑張ってみろ 野球なんぞ大したことないんだろ! 
  因みに 青森ベアーズの”北のガーディアン”山本投手は 成功したよ
  11球目だったけどね! 君らには 野球なんて遊びなんだろう?
  負けるわけないよな! Hahaha」
そう言われた男は オヤジを睨みつけて チャレンジを続行した
しかし 結果は見えていた
若者たちは くだらない!と唾を吐きながら 帰ろうとした

 「オヤジさん 俺やろうかな・・・」
僕がポツリと言った 
家族の視線が冷たい・・・
そんな中 若者たちが笑いながら言った
 「おっさん! 恥かくから やめときなっ!」



しかし ドラッグレースのエンジンは点火されたら止められない
僕は オヤジに訪ねた
 「これ完成させれば あのミウラは俺の物?」
 「もちろんさ! しかし Mr.インクレディブルのような お腹じゃ無理でしょ!」
憎々しい顔でオヤジが言う
 「やってみなきゃ わからないさ」

マウンドに立つと 鼻の奥がツンとした
本物のグラウンドではないけど・・・
30年ぶりに帰ってきた・・・そう思った

僕は お腹を思い切りへこませ 大きく振りかぶった
あごの下近くまで 右足をあげた瞬間
上半身をを ぐわりと地面へ倒す
ボールを握った左手だけは 未だ高々と天空を向いている

 「おぉー サブマリン それもサウスポーか!」
オヤジが叫ぶ!

右脚が パネルに向かって グイッと突き出されると 
地面すれすれに 弧を描く左手
 Byuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu
腕が風を切る 刹那

ZubaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaN

白球は 見事にど真ん中をゲットした
 「すごい・・・」
子供たちが息をのむ その横で若者たちも息をのんだ
そんな中 誰かが ポツリと言った
 「球・・・見えなかったよ・・・」

次々に投げ込まれた球はどれもミスなくパネルを撃ち抜いた
7球目が終了した時 オヤジが汗を拭きながら言った
 「言い忘れてたけど あの車はパーフェクト用の賞品なんだ」
!!
また一つハードルが上がった
11球までチャンスがあるのではなかったか?!
子供たちだけじゃなく 若者からもブーイングがおきた

しかし 僕には何の問題もなかった 
初めから 予備玉なんてあてにしていない
何もなかったかのように8球目を投げた

あっ!!
周りのみんなが叫んだ 
誰もが8番パネルを見ていたが 白球の行先は9番パネルだった
それも さっきまでの速度は無く 
球は 明らかにパネルの左に向かっていた

誰もが失敗を想像し オヤジがニンマリした瞬間!
ボールが Suuuと曲がった

Baaaaaaaaaaaaan!
ピンホールの9番が倒れた
 「なんて 曲がり方のスライダーだ!」
そう 僕は伝家の宝刀 スライダーで締めくくった

 「あんた 何もんだ!」
オヤジは ぐったりしながら言った 若者たちも寄ってくる
 「見た通り Mr.インクレディブル似の しがないオヤジです」
 
そういうと 僕は9球目を投げた
誰もが パーフェクトを信じていたが ボールは枠の外へ大きく外れた
その後10球目で見事に8番をゲットして僕は言った

 「残念 残念 ミウラは無理だったけど あれがもらえるね」
僕が指したのは 初音ミクのフィギュアだった

僕が描いた家族旅行にはならなかったが 
その日僕は 自然体の父親になれた




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